2008年、『私の結婚に関する予言38』で第3回日本ラブストーリー大賞 エンタテインメント特別賞を受賞し、作家デビューされた吉川英梨さん(元作家集団)。
テレビドラマ化された『アゲハ 女性秘匿捜査官・原麻希』を始めとするハラマキシリーズ、『新東京水上警察』シリーズ、『十三階の女』シリーズ、『警視庁53教場』シリーズ、『ブラッド・ロンダリング』『海蝶』等々、エンタテインメント性の高い警察小説を次々と発表されています。
今回は、警察小説を書くキッカケや、どんな風に書かれているのか等々、お聞きしました。警察小説を書きたいかたや小説家志望者は参考にしてください。
『月刊シナリオ教室2021年5月号』(4月末発行)には吉川さんのインタビューを掲載予定。小説を書くとき・脚本を書くときに役立つことを沢山お話ししていただきましたので、是非ご覧ください。
小説を書くときも使える、シナリオの構成表やプロット
――警察小説を書こうと思ったキッカケは何ですか?
〇吉川さん:刑事ドラマのボツプロットが大量に手元にあった状態で、出版社から「女性刑事モノが流行っている」と聞き、没ネタを投下してできたのがハラマキシリーズ第1作目『アゲハ』です。
出来上がったものを改めて見て、「自分の得意分野だった」と気がつきました。なにより、出版社や読者から「おもしろかった!」と大きな反響があり、重版やドラマ化につながったこと、警察小説の依頼が増えたことで、「ここが私の居場所なのか」と腰を据えるに至った、という感じです。
――いつも心掛けていることは何ですか?
〇吉川さん:体調が万全であること、よく寝ること。小説を書いているときは非常にリラックスしているので、このリラックス状態を保つため、いかに夜よく寝るか・・・ということに、小説を書く以上に苦心しています。
――小説を書くとき、シナリオの技術で役に立っていることはありますか?
〇吉川さん:構成表、プロットの形式などは、シナリオを書いていたころと全く変わっていません。
小説家の方にはプロットや構成表を作らない方もいますが、物語の【地図】【着地点】が頭に入っている状態で第一稿に入るので、迷いなく早く作品が仕上がりますし、安心して白紙に文字を書けるので、リラックスして書くことができます。
執筆中にリラックスしていると、追い込まれているときよりも、よいアイデアが次々と出てきます。
小説家に必須な “2つ”の資質
――今年はどんな1年にしたいですか?「いつもこれだけはブレないようにしたい」といったご自身のモットーがございましたら、併せて教えてください。
〇吉川さん:目の前にある仕事、作業に対し、誠実であることをモットーにしています。
取材だったら取材対象に対して誠実に。
プロットなら、物語に対して誠実に。
第一稿なら、登場人物に対して誠実に。
ゲラなら、言葉と文章に対して誠実に。
今年も変わらず、毎日目の前にある仕事に誠実さと感謝を忘れずにこなしていく、というスタイルです。
――小説家になりたい “後輩”にひとこと、メッセージをお願いします
〇吉川さん:私もまだまだ小説家として勉強が足りない身分です。ひとつ作品を仕上げるたびに、次の課題が見えて「もっと努力と勉強が必要だ」と反省する日々です。
私は流れでたまたま運良く小説家になれただけなので、「こうすればいい!」というのはないのですが、小説家になる「瞬発力」、小説家として生きていく「努力を継続する力」、の両方の資質が必須かと思っています。
そしてその2つの資質を支えるのが「物語を作るのが好きで好きでたまらない」という原点……子供が持つような純粋な心かと思います。
※シナリオ・センター出身の脚本家・小説家・映画監督の方々のコメントを掲載『脚本家・小説家コメント記事一覧/脚本や小説を書くとは』はこちらからご覧ください。