==今回は、動画作成初心者の先生、特に必見です。「生徒みんなで思い出に残る動画を作りたい。でもどうすれば……」とお悩みでしたら、このやり方を試してみてください==
三鷹中央学園 三鷹市立第四中学校 E組では、今まで利用されていなかった校庭のかりんの商品化に挑戦。苦労の末、おいしいかりんジャム&シロップが出来上がり、この活動を応援してくれた地域の方々に届けることができました。
そこで、「かりんジャム&シロップができるまでを伝える動画を作って、報告会で流したいです!」とのことで、新井が講師として、E組にお邪魔しました。
今回、新井は「動画でいかに面白く伝えるか」についてのポイントを、授業2回にわたってご紹介。
そのポイントは、
・動画は出だしと終わりが特に大事
・動画に入れたいエピソードを整理する
・もう撮れない動画なら、再現VTRとして撮ってみる
――の大きく3つ。このポイントを抑えて作ると、伝えたいことをただ伝えるだけの動画ではなく、「へえ!そうなんだ!」と興味を持って最後まで観てもらえる動画になります。
では、E組のみなさんとどんなふうに動画を構成していったか、リポートいたします。
■授業1回目(2/16実施)~「出だしと終わりが大事」を念頭に置いて~
*
――新井が最初にお伝えしたポイントは、動画は「出だし」と「終わり」が大事だということ。
〇新井
みんなもテレビドラマやYouTube動画、「面白そうだな」と思わないと最後まで観ないでしょ?
だから、動画の初めが肝心。
そして、観終わったときに「○○だなぁ」と余韻を感じるような「終わり」にすることも大事。
この2つが特に大事だということをまずは覚えてください。
〇みなさん:はい!
〇新井
では次に、「これは動画に入れたいな」というエピソードは何か考えてみよう。
2色の付箋を配ります。ピンクの付箋には「楽しかったこと」「よくできたこと」、ミドリの付箋には「大変だったこと」「失敗したこと」を書き出してみてください。
――皆さんに書き出してもらったものがコチラ。
・ピンクの付箋
「カリンの収穫が楽しかった」
「収穫するとき、野球部だからボールを投げて実を落とした」
「瓶のラベルづくり。ラベルのデザインをするとき、絵を描くのが楽しかった」
「新聞作り。カリンのことをすごく調べた」
・ミドリの付箋
「最初の試作はすごく渋かった」
「レシピ作りが難しかった」
「アンケート作りに時間がかかった」
〇新井
お、いいエピソードが出ましたね。中でも、皆さん、カリン収穫が面白かったみたいですね。
では、このことを動画で伝えるエピソードの1つにしたらどうでしょう?
〇Aさん
でも、カリンを収穫しているところ、動画で撮ってないです……。
〇主任教諭のK先生
他のエピソードも、写真はありますが、動画は撮ってないです……。
〇新井
大丈夫ですよ!動画で伝えたいエピソードの再現VTR を撮って、そこに「こういうふうに実を獲りました」と解説してあげればOK。
〇Bさん
おお!ロケですね!
――ということで皆さんには、2/17・19の2日間の授業内で、この付箋に書き出したエピソードの再現VTRをiPadで撮影していただき、そのデータを2/24に実施する新井の2回目の授業までに送っていただく流れになりました。
■授業2回目(2/24)~再現VTRの順番を決める~
――K先生から新井のもとに、E組の皆さんが撮影してくれた再現VTRが送られてきました。その数20本弱、時間にすると合わせて40分くらいの動画です。
――そして迎えた2回目の授業。新井はひとつ、皆さんに提案したいことがありました。
〇新井
みなさん、再現VTRの撮影、お疲れさまでした。たった2日間でしっかり “素材”が準備できましたね。全て観させていただきました。で、その中にBさんが作ってくれた1分ほどの“予告動画”がありましたよね?
――Bさんが作ってくれた動画は、色々な再現VTRをランダムに繋げ、各シーンの合間合間に、「渋みあり」→「自分たちで」→「自分たちの腕前のみ」→「しかも失敗は許されない」→「成功させるお店」→「失敗するな」→「かりんジャム、シロップ」といったワードが挿入されています。期待感を高めるようなBGMも流れます。
〇新井
映画の予告編みたいで凄かった!それで、ちょっと思いついたことがあります。
この前の授業で皆さんにお話しした、面白い動画を作るポイントを覚えていますか?
〇みなさん
出だしと終わりが大事
〇新井
そう!なので、このインパクトのある予告動画を「出だし」にしませんか?
――「賛成!」というように頷くみなさん。
〇新井
よし、「出だし」は決定。
では、この後、再現VTRをどういう順番で並べていくか、考えていきましょう。
それから、この再現VTRだけだと「何をやっているのか」が少し分かりづらいですよね。
再現VTRの解説動画をこれから撮りませんか?
で、その解説動画と再現VTRを1つのシーンに合わせてから、1本の動画としてつなげるのはどうでしょうか?
――みなさん、うんうん。
ということでK先生が、「どの再現VTRをどの順番で流すか」「どの再現VTRを誰が解説するか」をボードで整理してくれました。
――結果、このように決定↓
①新聞作りのシーン
そもそも、カリンについて調べ、新聞でまとめるところから始まったので、その経緯をCさんが解説
②カリンの収穫シーン
木をガサガサしたり、ボールを使って獲ったことをDさんが解説
③瓶のラベルに採用するカリンの絵を描いているシーン
みんなで水彩画を描いたことをFさんが解説
④1回目の試食シーン
最初に作ったときは渋かったことをAさんが解説
⑤レシピの再検討シーン
どうしたら美味しくなるか、もう一度レシピを検討したことをBさんが解説
⑥2回目の試食シーン
今度は美味しくできたことをAさんが解説
⑦瓶のラベルのプレゼンシーン
商品の魅力の伝え方の授業を受け、各自考えたラベル案のプレゼンを実施したことをAさんが解説
⑧ラベル貼りのシーン
「⑦」で決定したラベルを瓶に貼った模様をGさんが解説
⑨ラッピングのシーン
瓶に詰めたカリンジャムとシロップを袋詰めしたことをIさんが解説
⑩看板とお店作りのシーン
カリンジャムとシロップを販売するにあたっての準備の模様をJさんが解説
⑪実際、お店で販売しているシーン
どうやってお客様に販売したかをLさんが解説
――徐々にカタチになってきました。残すは再現VTRの解説動画撮影です!
■授業2回目(2/24)~再現VTRの解説動画を撮る~
〇新井
解説動画を撮るにあたって、どんなことを喋るか、考えてみましょう。10~15秒くらいの、ひとことでいいですよ。自分が解説を担当する再現VTRの、「説明+感想」みたいな感じでコメントを考えてください。
――みなさん各自、コメントを考えてから実際に読み上げ、時間を図り、解説文をブラッシュアップ。
例えば、
〇Aさん(④の解説文)
1回目の試食は、炭酸みたいに口の中でシュワシュワとする味で渋かったです。
〇Lさん(⑪の解説文)
お客様が沢山来てくださいました。カリンの木のところまでご案内しました。
――解説文が出来たらいよいよ、一人ずつ解説動画を撮影。雑音が入らないように隣の教室で撮ります。
――そして、「出だし」の次に大切な「終わり」のシーンは、この動画を観てくれた人やかりんジャム&シロップを買ってくれる人に向けて、みなさんでメッセージを!
――これで無事に全ての撮影が終わりました。あとは「iMovie」で編集すれば完成です。
かりんジャム&シロップいただきました!
*
--最後に、K先生からご感想をいただきましたのでご紹介。
〇K先生
ちょうど1人1台タブレットが導入になったタイミングでした。iMovieの使い方を教えてもらい、動画編集がこんなに手軽に出来るものなのだと驚きでした。生徒はどんどん使いこなして、楽しんでいました。撮りためた動画がなかったのですが、後から再現VTRを撮るのも面白かったです。1年間かけて取り組んできたプロジェクトのまとめができて大満足です。コロナ禍で学校公開もなかったので、保護者の皆様にもよろこんでもらえました。ありがとうございました。
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最近特に、学校の先生方から「生徒の活動記録として動画を作りたいけどどうしたらいいか」というお問い合わせをいただきます。今回ご紹介したように進めていけば、クラスのみなさんで楽しみながら作ることができますよ。是非参考にしてください。
※新井が編著の書籍『いきなり効果があがる PR動画の作り方』を読めば、基本的な動画の作り方が分かります。これを読めば大学生だって、伝わる動画がつくれますよ!詳細はこちらからご覧ください。