シナリオを書くときどこから始めるのか、悩みますよね。新井一は「ひとつ原則がある」と言います。
今回はその“原則”をご紹介。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
人物のどの部分を描くか
お客さんは、テレビでも映画でもお芝居でも、出だしは、どういう話になるのかな?という期待をしています。いま時そんな純情な人はいませんが、昔は映画やお芝居の幕が開く前には、胸をドキドキさせたものです。
お客さんの期待は裏切ってはいけませんから、創作のやり方について書かれている本には、出だしの技術はこうするんだと、親切に解説してあります。
しかし「どうすると面白くなる」とは書いてありますが、「どこから始める」ということは書いてありません。どこから出るのかは作者の自由であって、どこからでも始めることができるからでしょう。
しかしひとつ原則があります。テーマを表すのに、どこが一番適当かということです。人物のどの部分を描くのかということです。
大半の物語は、人生の途中から始まっている
どんな英雄でも美女でも、オギャアと生まれた瞬間から、物語として取り上げている訳ではありません。早くても年頃からだとか、大抵は成年になってからです。
『次郎物語』ですと小学生から始まりますし、『野菊の如き君なりき』だと少年少女の頃です。『夫婦善哉』ですと中年ですし、『恍惚の人』は老年です。ひどいのになると、『市民ケーン』は主人公が死ぬところから始まります。つまり早かろうが遅かろうが、人生の途中から始まっているということなのです。
ということは、お客さんは、この人の過去はどうなっていたのか、今なぜこんなことをしているのか、今まで人との付き合い方はどうなっていたのか、まったく知らないのです。
ドラマは1時間とか、長くても2時間とか短いですから、今までこの人は「こんな境遇にあって苦労したのだよ」とか「幸せの日々を送っていた」というように、しかもこれを手っ取り早く、しかも面白く、魅力まで添えて紹介しなければならないのですから、大変です。
そのためには以前もお話しましたが、登場人物の履歴書を、あらかじめ作っておく必要があるのです。それが出来ていないと、どうしていいのかわかりませんし、お客さんはそれこそ「わからない」ことになるのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1993年9月号「新井一 十則集」/2015年2月号「新井一.com」
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。
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