守る
シナリオ・センター代表の小林です。今日は23度くらいになるというのでそのつもりで出てきたら、雨のせいか、肌寒く感じています。
日曜日は、142期シナリオ作家養成講座の説明会なのですが、今のコロナの状態を見るたびにため息が出てしまいます。
今は、通学&オンラインのハイブリッドスタイルで講座も行っていますので、講座そのものを中止にすることはないのですが、やはり人の動きは心配の種です。
「感染しない感染させない」をどこまで徹底できるか、ちょっと緩んでしまったタガをどこまで引き締められるか、私たちの気持ちひとつ、心がけ一つにかかっています。
マスクの着用、手洗い消毒、検温とよろしくお願いいたします。
東京591人、大阪1130人、「第4波だ」、「緊急事態宣言も」、兵庫もまた過去最高を更新、松山市は聖火マラソン中止、愛知はじめあちこちで「まん延防止重要措置」の声も上がる中、「感染、大きなうねりではない」という首相。
福島の汚染水の海への放出といい、日本国のトップは皆、過去も現在も真実を見極めようとしない、都合の良いように解釈することだけに終始している人ばかりです。
なんでこんなに楽天的に構えていられるのか、日本を滅ぼし、地球を壊滅させそうなノー天気さです。
私たちは、ひとりひとり多くの情報の中から、本当に信じられるものを見極めて、想像力を駆使して、踏ん張っていきましょう。
小さな神たちの祭り
人は亡くなった人を悼み、悲しみ、嘆きます。
2019年、東北放送60周年記念ドラマとして、内館牧子さんが書きおろした「小さな神たちの祭り」
東日本大震災で遺された若い男性とあの世へ行った家族を描いたお話しでしたが、他にはない切り口のすばらしさに日本民間放送連盟優秀賞、文化庁芸術祭優秀賞、アジアテレビジョンアワード最優秀賞、国際エミー賞最終ノミネートと軒並み受賞されました。
多くの人の感動読んだドラマは、東日本大震災10年目に、内館さんの手で小説として生まれ変わりました。
ノベライズではなく、内館さん自ら完全書下ろしで、ドラマでは描き尽くせなかった物語のエピソードをより鮮やかに描き切っています。
このお話の肝は、何と言っても死者が生者を慰めるために、神輿を担ぎ、灯篭を流すという、真逆なところです。
主人公の晃は、宮城県・亘理のイチゴ農家の長男。6人家族+愛犬と幸せに暮らしていた。
3月11日、一緒に行きたいといった弟をすげなく断って、大学入学準備のために上京する。
その間、家族全員が津波に吞まれてしまい、8年経っても誰一人見つかっていない。
「自分だけ幸せになれない」と苦しむ晃の前に1台のタクシーが現れる。
運転手は死んだはずの祖父。そして、連れて行かれた先は、津波前の昔のままの自宅、亘理の町。
「生きている人を慰めるために、死んだ人が流すんだよ」
「・・・灯篭を?」
「そう、灯篭を。生きている人のために流す」
「そう、こっちにきて、よくわかったよ。
あっちじゃ、「死んだ者」とされているみんなが、こっちでこんなに笑って生きてるだろ。
だけど、あっちの人間はそれを知らないんだよ。
だから、みんな嘆いて悲しんでいる。力が出るわけないよ」
「幸せに生きているなんて思いっこないもんな」
「うん、萌みたいな小さな子もみんな、笑って暮らしてるなんてな」
「それをあっちの人の知らせるための灯篭流しか」
「そう。心配いらないよってな。みんな元気だから、残された人たちも元気になれってな」
「兄貴、苦しんだだろ、8年間」
晃は黙った。
航も黙った。
やがて、航は小さく頭を下げた。
「ごめんね。俺たちだけ死んで」
謝られるとは思わなかった。
こっちにいる人たちは幸せなのだ。だから、残された人たちに悪がっている。
「航、よくわかったよ」
つい笑顔になっていた。
「よかった。こっちの人はみんな、残された人たちに幸せになってほしいんだよ」(小説より抜粋)
一人残された青年の心の復興を描いています。
3行ストーリーにしたら、「震災で死んだ人たちが生き残った青年を心配して、あの世とこの世の狭間に呼んで、心の復興を果すはなし」です。
小説の一部を読まれてお分かりになったかと思いますが、これがドラマなんです。
お話をどう描くかです。人の心に届くように、伝わるようにするにはどのように見せれば読ませればいいのか、ディテールを描くことこそが作者の腕です。