「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師 柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
小説初心者の多くが最初にぶつかる壁。それは途中で止まってしまうこと。「アイデアは浮かぶのにエンドマークまで書けない…」という方、今回ご紹介する方法で“書き出し挫折”を回避しましょう!
「本気になれば書けそう」というイメージはあるけれど
「小説を(いつか)書きたい」と、潜在的に思っている人がそれなりにいるように思います。「何か機会があれば……」とか、「自分の経験を小説に」「筆一本で生きる作家に憧れるけど、自分も……」みたいな。
美術家とか音楽家だと、ある程度の専門的かつ基礎的な知識や技術を身につけないとなれなさそうですが、何しろ文章(日本語、作文)とかなら、小学校時代から習っているし、日常的にも書いていたりする。その発展型な小説とかなら、ちょっと本気になればできそうだ、というイメージがある。
ただ、あくまでも潜在的であって、実際に小説とかを書き始める人は、10人に一人、いえ、100人に一人かもしれません。
ただ、いきなり小説ではなく、ブログやSNSとかで自分の日常とか体験談を書く人ならば、飛躍的に増えています。そこからエッセイだったり、その人が有している専門性とか趣味に特化する内容、加えて映像をプラスすることとかで、ブロガーやユーチューバー、さらには「作家」になれたりもする。
シナリオ・センターは脚本の書き方を教えるスクールですが、近年はこうしたメディアの拡がりもあって、さまざまな形態のクリエイター誕生に結びついたりしています。
脚本(シナリオ)もそれなりの基礎的技術や専門性が必要なので、まずはそれを身につけてもらう。ただプロの(つまり報酬が得られる)脚本家になるには、その書き手のオリジナリティと、要求(ニーズ)に応じられる対応性もいります。
小説家になるための大きなステップ
さて、小説です。誰にでも書けそうですが、そんなはずはない。通用する(読者を獲得する)小説を書くには、それなりの文章力、技術だ、物語の構築力が必要です。
で、100人に一人の小説を書き始めた初心者が、まずぶち当たるのが、途中で止まってしまう。エンドマークまで書けないということのようです。これは脚本も同じで、いきなりペラ200枚のシナリオを書こうとしても、頭のシーンだけでストップしてしまったりする。
シナリオ・センターのカリキュラムは、その障壁を越えるために、まずは数枚からスタートして、ゼミとかでは短い20枚シナリオをたくさん書く。これによって書き癖をつけ、長編にも対応できるように持っていく、非常に合理的かつ実践的なレッスン法なわけです。
さて、脚本版と小説版『隣りの女』の比較の続きのはずですが、前置きが長くなってしまいました。
作者の向田邦子さんは、シナリオとして書いた400字100枚前後(2時間のスペシャルドラマ用)を、ほぼ同じ枚数の小説にして商業誌に発表しました。小説版の方は描写などが増えたために、文字数は多くなっていますが。
このコラムでは20枚シナリオのレッスンを応用して、まずはショートショートからスタートして、もう少し多い30〜50枚ほどの短編小説へと発展させることを推奨していました。さらに『隣りの女』を教科書として、シナリオから小説にしてみる。例えば、皆さんがレッスンとして書いた(ペラ)20枚シナリオを、(400字詰め)10枚前後の小説としてみるのです。
シナリオで立てた柱(シーン)や簡潔なト書を、小説の文章として表現する。その前に主人公の視点を定めて、一人称か三人称かという選択もあります。ただし、ショートショートとして完結させるようにはします。
これならば、小説初心者の多くが陥る「書き出し挫折」は回避できます。100人の一人の書き始める人から、さらに一歩先の一篇の小説を書き上げるというステップへと昇ることができます。これはとてもとても大きな「作家(小説家)」へ近づく階段を上ったことになるはずです。
出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2020年10月号)より
★次回は7月3日に更新予定です★
※『隣りの女』を“教科書”としているこちらの記事も併せてご覧ください。
・「脚本と小説でトップシーンが違う『隣りの女』」
・シナリオと小説 場面と描写 どう書き分けるか
※要ブックマーク!これまでの“おさらい”はこちらで↓
小説家・脚本家 柏田道夫の「シナリオ技法で小説を書こう」ブログ記事一覧はこちらからご覧ください。比喩表現のほか、小説の人称や視点や描写などについても学んでいきましょう。
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