==ミステリーやサスペンスを書きたいかたで「視聴者を飽きさせない展開にするにはどうしたら……」とお悩みでしたら、今回ご紹介する先輩のコメントを参考にしてください==
今年4月に放送された2時間ドラマ、月曜プレミア8『脳科学弁護士 海堂梓 ダウト』(テレビ東京系)。
二転三転する展開に多くの視聴者がドキドキ。放送終了後、ネット上では「シリーズ化してほしい」という声が続出しました。
【あらすじ】
弁護士の海堂梓(松下奈緒)は、大学で脳科学を研究する特任准教授でもあり、「記憶は塗り替えられる」「裁判は勝った方が真実」が信条。そんな海堂に、夫殺しの罪に問われている冬川沙也加(中山美穂)から弁護の依頼が。過去にも2人の夫が不審な死を遂げている沙也加。不敵な笑みを浮かべ「私、殺したの。無罪にできる?」と海堂に問いかける――
脚本は出身ライターの本田隆朗さん。本作に込めた想いや、ミステリーを書く上で心掛けていることをお聞きしました。
また、脚色を担当されたサイコスリラー『リカ~リバース~』(今年3月に放送/フジテレビ系)のお話もしていただきました。
『リカ~リバース~』は初めてのメインライター&初めての全話担当作品。
『脳科学弁護士 海堂梓 ダウト』は初めての2時間ドラマ。
本田さんにとって“初めてづくし”の2作について、コメントをいただきましたのでご紹介。
観客を引き込むには、出来事で面白がらせるよりも「人間を描く」
Q 『リカ~リバース~』では、前作『リカ』の主人公・雨宮リカが、なぜ純愛モンスターになってしまったのかが明らかになります。脚色するにあたり、どんなことを意識されましたか?
〇本田さん:これまで作り上げていただいたリカの世界を壊さないように、というのを一番に考えていました。またこの『リバース』では、前作のような高岡早紀さん演じる主人公の「狂気」よりも、「悲哀」を描くという話が打ち合わせで出てきたので、そこが頑張りどころだなと感じていました。
Q 『リカ~リバース~』に続き、メインライター2作目となる『脳科学弁護士 海堂梓 ダウト』。
脚本を担当されていかがでしたか?
〇本田さん:全部一人で手掛けるプレッシャーはありましたが、それ以上に自分でキャラクターやストーリーを作り上げていく喜びの方が大きかったです。ミスリードやサスペンスを成立させつつ、各キャラの心情がきちんと通るように、パズルのように頭を働かせながら組み立てていきました。
Q 約2時間、視聴者を飽きさせず、引き込む展開にするために、特にどんなことを心掛けましたか?
〇本田さん:師匠の石原武龍先生によく言われたのが、「ゲストの人物(今回だと冬川沙也加)に気がいくようにする(※)」ということでした。
「この女はどんな人物なんだろう」「どんな生き方をしてきたんだろう」と興味を持たせていく。出来事で面白がらせるよりも、人間を描くのが観客を引き込むのだと思っています。
構成に関しては、「“Aを調べたらBが分かり、Bを調べたらCが分かり、Cを調べたらAが分かる(繋がってくる)”ようにしなさい」と教わりました。
※気がいく=共感する,応援したくなる,今後が気になる
Q メインライターの際、特に気をつけていることはありますか?
〇本田さん:岡田惠和さんに脚本監修をしていただいていますが、6/27(日)からNHK-BSで始まる『ライオンのおやつ』もメインで担当しました。自分の性格上、意見を飲んでしまうことが多かったので、このときはとにかく受け身にならないことを意識しました。みんなを引っ張っていくつもりで、前向きに取り組んでいくようにしていたら、現場が少しずつ仕事がしやすい環境に変わっていったような気がします。
Q 脚色をされるとき、脚本を書くとき、いつも大切にされていることはありますか?脚本家になりたい“後輩”へのアドバイスにもなるかと思いますので、ぜひ教えてください。
〇本田さん:シナリオ・センターで「共感が大事」と教わっても、中にはそこを重要視していないプロデューサーの方もいらっしゃいます。でも、だからと言って なくていいわけではなく、自分の中できちんと持ってなくてはいけないのだと思います。習得したことを無駄にしないよう、自分がシナリオ・センターで培ったことはブレずに持ち続けてほしいと思います。
本田隆朗さん情報
■『月刊シナリオ教室2021年7月号』(6月末発行)にインタビューと『脳科学弁護士 海堂梓 ダウト』のシナリオを掲載いたしますのでお楽しみに!
■脚色を担当されたドラマ『ライオンのおやつ』(全8回/NHK-BSプレミアム・BS4K)が6/27(日)からスタート。原作は小川糸さんの同名小説。とある島の「ライオンの家」というホスピスの物語。ぜひご覧ください。
■こちらの記事「勉強になるドラマ !/脚本家・本田隆朗さん」もご覧ください。
『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』の脚色を担当された際にいただいたコメントです。