物語作りや書くことが好きな子の居場所は?
運動が得意な子たちには、部活に打ち込むことができます。
勉強が得意な子たちは、塾でその力を伸ばすことができます。
でも、自分で漫画を描いてみたり、小説を書いてみたり、iPadを使って動画を撮ってみたりしている子どもたちの居場所って、ありません。あっても夏休みの単発ワークショップくらいでしょうか。
そこで、そんな子どもたちの居場所として、『考える部屋』というオンライン講座を作りました。なぜ、『考える部屋』を始めようと思ったのか。を、シナリオ・センターの新井なりにまとめてみます。
一言でいうと、「あいつらなら、大丈夫(The Kids are alright)」と、見守っていきたいからです!
詳細・お申込:https://www.scenario.co.jp/project/kids_course/index.html
講座タイトル『考える部屋』にした理由
講座のタイトルとして『考える部屋』というのは、どうなのか……
もっと分かりやすい講座名もありそうです。
『考える部屋』は、オンラインでの創作講座です。講座なので、子どもたちは、創作に必要な表現技術を学びます。そして、身につくようにしていきます。なので、
たとえば、
・子どもシナリオ教室
・シナリオジュニアクラス
・子ども創作クラブ
みたいな感じの方が、ストレートで、何を学ぶのか分かりやすいかもしれません。シナリオ・センターの基幹講座は『シナリオ作家養成講座』『シナリオ8週間講座』『シナリオ通信講座 基礎科』ですし。
ですが、あえて『考える部屋』にしました。
なぜなら、なにを学ぶか以上に、『考える部屋』での時間に、何をして、どんな状態になるのかの方が大切だと思ったからです。
『考える部屋』にこめた想い
個人的なことかもしれませんが、わたしは『考える』という言葉がとても好きです。
Oxford Languagesの定義では、
かんが‐える かんがへる 【考える】
あれやこれやと思いをめぐらす。その事について、心を知的に使って判断する。「よく―・えて物を言え」
新たなものをくふうする。考案する。「もっとうまい手段を―・えよう」
となります。
考えることは、誰にでもできます。手ぶらでできます。規制もなければ、強制されることもありません。至極、自由な営みです。しかも、タダです!
さまざまなことに興味を持ち、対象についてなぜ?と疑問を持って考えることで、自分の可能性をどんどん広げることができます。
一方で考えることは、誰でもできることだからこそ、どっぷりとその楽しさに浸れる人と、そうでない人がいます。睡眠がうまく取れる人と、そうでない人がいるのと同じように。
きっと、考えるためには、それなりにコツがいるのだと思います。そしてそのコツを、早いうちに掴んじゃった方が、人生を豊かに過ごすことができると思います。(豊かといっても、物質的な豊かさ、金銭的な豊かさだけを言っているのはありませんよ)
だから、『考える部屋』。なのです。
一体『考える部屋』で、なにを考えるのか?
『考える部屋』では、創作に必要は表現技術を伝えていきます。対象が小中学生なので、彼らに分かりやすくではありますが、シナリオの技術自体に、これは小学生向け、これは中学生向け、これは大人向け、というのはありません。
なので、伝える技術は、シナリオ・センターがこれまで700名以上のプロの脚本家や小説家を輩出してきた『シナリオの基礎技術』をもとにしています。
で、その技術を身につける過程で、いろんなことを『考える』、これが『考える部屋』の醍醐味です。
たとえば、
・キャラクターについての回では、
すっごい気の弱い桃太郎だったら、鬼退治を頼まれてどんなリアクションをするのか、を考えてもらうとします。
試しに30秒くらいで、どんどんアイデアを出してみてください。
いろんなアイデアが浮かんだと思います。
この時に考えているのは、登場人物のキャラクターらしいセリフやト書(動作)です。創作をする上では……
でも、この時、きっかけはあくまで気の弱い桃太郎ですが、抽象度を上げると気の弱い人って、どんなことをするんだろう、言うんだろう、どんなことを感じているんだろう……と、頭のなかで人間について考えています。
続いて、
親子のケンカの理由を考えてみるとします。
・お母さんがすっごい怒っています。なぜでしょうか?
こちらも30秒くらいで、どんどんアイデアを出してみてください。
・お子さんがすっごい怒っています。なぜでしょうか?
こちらも30秒くらいで、どんどんアイデアを出してみてください。
おそらく身近なケンカの理由を最初は考えると思います。ですが、身近なものだけだと、アイデアはすぐになくなります。
そうすると、仮に○○な親子だったらと考えみます。
たとえば、とてもおしゃれに気を使っているお母さんが怒っているとしたら?
サッカーが好きなお子さんが怒っているとしたら?
と、自分の日常とヅラしてアイデアを出してみます。
そうすると、物語に使えそうなアイデアが浮かんできます。と、同時に、自分とは全く異なる親子に想像を巡らせることになります。
シナリオの技術をきっかけに考えが広がり、深まる
『考える部屋』では、創作をより面白くするための技術を伝えながら、そこを起点に、子どもたちは自分のことや自分とは違う他者のことを考えます。
もっと深まってくると、登場人物が置かれる環境や社会について考えたりします。そうやって、視点が広く、深く、そして高くなります。
考える醍醐味を、シナリオの技術を通して味わってほしいのです。なぜそんなことができるかというと、ドラマや物語を作るというのは、人間を描く事だからです。別に『考える部屋』が素晴らしいからではありません。物語を作るという行為そのものに、考える楽しさが詰まっているのです。
人間を描こうとすれば、そこには必ず、表現技術と作家の眼が必要になります。表現技術は教えることができます。でも、モノをどう考えるかを教えることはできません。むしろ、してはいけないことだと思います。
だから、きっかけでいいのです。『考える部屋』は考えるきっかけを、楽しく提供できる場所でありたいのです。
『考える部屋』に参加すると結局どうなるのか?
『考える部屋』はオンラインで参加する創作講座です。
一つ目は、『シナリオの基礎技術』をもとに、シナリオ・センターが持っている物語をおもしろく作るための方法が身につきます。
今まで、「どう書けばいいのかな?」と思っていたことが「こうすればいいんだ!」となります。
霧が晴れるような感覚になってもらえらたいいなぁと思います。「うちの子の才能が開花しますか?」とおっしゃる親御さんがたまにいらっしゃいます。もしかすると、開花するかもしれません。ですが、才能があるか、ないかは、正直誰にもわかりません。むしろ、才能は誰にでもあります。ないのは、その才能を発揮するための、表現技術です。
音楽の才能があっても、表現する術を持たなかったら、才能を示すことができないのと同じです。参加する子どもたちには、『シナリオの基礎技術』をもとに表現技術を身につけることで、表現の幅と質を上げてもらいたいなと思います。
二つ目は、物事をさまざまな視点から見れるようになります。シナリオ・センターでは、作家の眼と呼んでいます。
三つ目は、自分の頭で考えることの楽しさが身につきます。「新聞を逆さに読め」とはシナリオ・センターの創設者の新井一の言葉ですが、誰かが言っていたから、とか、多くの人がそういう考えだから、ではなくて、自分はどう考えるのかに向き合うことができるようになります。
しかも、それは自分さえ良ければいいというようなものにはなりません。なぜなら、作家の眼があるからです。作家の眼があれば、自分だけではなく、さまざまな立場で考えることができます。独りよがりな考え方は起こり得ません。
人生の節目に、自分の足でふみ出せるように……
The Kids are alright!
『考える部屋』で、これらのことが身についてくれれば、もしかしたら、その中から作家として活躍する子も出てくるかもしれません。
でも、それが一番の目的ではないんです。
『考える部屋』に参加してくれた子どもたちが、5年後、10年後、さまざまな人生の節目において、自分の道を自分で踏み出せるようになってほしいのです。
だって、人生は楽ではないもの。誰にとっても、大変なことが起きるもの。
そんなときに、葛藤を抱えながらも、誰かから与えられた道ではなく、自分で考えた道に進んでもらえたらと思うのです。そして私たちは、そんな子たちの判断の全てを、
「あいつらなら、きっと大丈夫(The Kids are alright)」
と陰ながら見守っていきたいと思うのです。
暑苦しいかもしれませんが、これが現時点での『考える部屋』を立ち上げた新井の動機です。
考えろ!的なことを、偉そうに言っているように読めちゃうかもしれませんが、わたし自身は浅はかな人間ですから、考える楽しさをみんなと一緒に味わっていきたいと思うのです!
▼新渡戸文化小学校で実施中のキッズシナリオの様子▼
https://www.scenario.co.jp/online/27964/