テーマは「枠をいかせ!」
新渡戸文化小学校のデジタルクリエーションクラブの生徒さんは、「ヒトもしくはモノ(造形物)を登場人物とする映像」を制作して、前期の最終日7/8に発表します。その映像を作るための “ヒント”を隔週で新井がお伝えしています。
1回目のテーマは「キャラクターの作り方」。
2回目は「気持ちや目的など見えないものを映す」で、実際にiPadで撮ってもらいました。当初は撮影後、発表してもらう予定でしたが、「いいものを作りたい!」という皆さんの想いが伝わり、翌週も制作してもらうことに。その映像を担当の山内先生から送っていただき、新井、拝見しました。
3回目となる今回は、その映像の感想から。
〇新井:皆さんの「こういう映像を作りたい!」という想いがすごく伝わってきました。
実写の人もいれば、アニメで作った人もいましたが、ひとつ共通点がありました。
それは、画面が固定されている、ということ。
皆さん、「画面が固定?」という反応……
〇新井:画面が固定というのは、撮影されているサイズがどのシーンも同じ、ということ。
皆さんの映像は、ヒキの状態でずっと“全景”が映っていました。
これを「ロング」といいます。このロングの他にも、アップやバスト、という撮り方もあるんですよ。
そこで、今回お伝えするテーマは「枠を活かせ!!」です。
皆さん、集中して聞いています。
〇新井:「枠」とはカメラのフレームのことです。この枠の種類として出てくるのが、僕が先ほどから言ってる「ロング」「バスト」「アップ」です。
〇新井:ロング・バスト・アップといった「3つの枠」が意識できると、皆さんが作る映像が相当変わると思います!ですので、今日やってもらうのはコチラ。
〇新井:まずは、 ロング、バスト、アップの違いを知ってもらいます。そのために、今日はシナリオだけでなく絵コンテも作って、その絵コンテをもとに撮影してもらいます!
「撮影」というワードに皆さんがざわつき始めました。早く撮影をしたいんですね。もう少しだけご辛抱。まずは、ロング・バスト・アップを新井がiPadで撮影してご説明いたします。
ロング・バスト・アップの違いを知る
〇新井:例えば、ト書に「〇〇さんの目から涙がポロリとこぼれる」とあったとします。
生徒さんにお手伝いしてもらいます。
分かりやすいように、フセンを“涙”にして貼ってもらいました。
まず「ロング」で撮ります。
新井が撮った「ロング」の画像がコチラ
〇新井:全体が写っているので、ここに誰が、何人いるかはよく分かりますよね。でも、肝心の“涙”が分かりません。
では次に、「バスト」で撮ります。
新井が撮った「バスト」の画像がコチラ
〇新井:さっきよりは、“涙”が見えますが、うーん……でもよく分からないですよね?
皆さん、うんうん。
それでは、次は「アップ」で撮ってみます。
新井が撮った「アップ」の画像がコチラ
〇新井:どうですか!アップだと、「目から涙がポロリとこぼれる」というのが分かりますよね。
皆さん、頷いております。
〇新井:こんなふうに、アップは拡大して見せることができるので、観客は自然に注目します。だから、観客に見てもらいたいものはアップで撮ってみてください。
ロング・バスト・アップがどういうことか分かったところで、次はこの「3つの枠」が使いこなせるようになるために練習してもらいます。
特に「アップ」を意識!
まずはこちらのシナリオを読んでもらいます。
机にフセンが貼られている。
フセンに気づく太郎。
太郎、フセンを手にとる。
フセンに『X・Y・Z』と書いてある。
このト書をどんな映像にするか、4つのコマに絵を描いていただきます。
つまり、「絵コンテ」を作ってもらいます。
絵コンテができたら、小道具の『X・Y・Z』のフセンを作り、いざ撮影です。
こちらの生徒さんは何をやっているのでしょうか?
『X・Y・Z』のフセンをゴミ箱の中に貼っています!すごいアイデアです!
アップを撮っているのですが、なかなか撮影のサイズが定まらない模様です。
〇新井:フセンに『X・Y・Z』と書いてあるのが分かるように、もっともっとアップでいいですよ!
生徒さん、少しずつ少しずつアップ。
山内先生も生徒さんと一緒に絵コンテを作成。
〇新井:先生、絵コンテ上手ですね!
〇山内先生:ここはもっとこういうふうにアップにしたいんですよね。
――と、山内先生と新井、話しているうちにあることに気づきました。
〇山内先生:自分も書いてみて、それから、みんなが撮影しているところを見ていて思ったんですが、私たちが普段 目で見ているのは“ひき”の絵なんですよね。 「ロング」で生活してる。
〇新井:そういわれてみれば!
〇山内先生:だから、よほど意識しないと「アップ」で映すという発想が出ないんですよね。
なるほど!新井、発見でした。
このことを意識しながら、撮影中の生徒さんに「もっとアップでいいんですよ!」と声掛けをする新井。
すると、皆さんだんだん、ためらわずにアップで撮影できるようになりました。
アップを意識すると迫力満点!
こんなこともありました。
自分でゲームを作っているという生徒さん。
クイズに正解して敵を倒すというゲーム。正解すると、敵がバサッと真っ二つになります。
〇新井:「アップ」を意識すると、もっと迫力がでるようになるよ。
〇生徒さん:そうなんですか?
最初は、このぐらいの大きさだった“敵”を――
「アップ」を意識して修正。
画面から飛び出さんばかりの迫力に!
「アップを意識すると変わる」ということを生徒さん、実感していました。
「15分 “も” ある!」
「3つの枠」を使い分けられるようになってきたので、今度は少し長めのシナリオで練習。
村を見つめる赤オニ、青オニ、黄オニ。
こっそり忍び込む3人のオニ。
タンスの中をあさる赤オニ。
地図を見つける赤オニ。
3人のオニが地図をのぞき込む。
――この続きを書いてもらい、絵コンテを作り、撮影してもらいます。
“コマ”もたくさん用意しました。
皆さん、集中。
シナリオと絵コンテが出来上がると撮影です。
〇山内先生:15分しかないですが、できるところまで撮影してください。
いない……
生徒さんの大半、この3階フロアにも、2階にも、1階にもいない!
どこに行ったのでしょうか?ウロウロしていると
〇山内先生:大人にとっての15分と、子どもにとっての15分は違うんですよね。僕たち大人だったら「15分しかない」となるんですが、子どもたちにとっては「15分もある」なんですよね。だから、自分たちが撮影したいところに行ったんだと思います。
なるほど。今日は特に発見が多い日です。
15分後、皆さん戻ってきました。
今日はここで終了。
〇新井:次回のレクチャーは7/8です。この日はいよいよ、皆さんの作品発表ですね。シナリオを書くときや撮影するとき、これまでお伝えした「キャラクター」「見えないものを映す」そして今日の「3つの枠」を意識してくださいね。どんな作品が出来上がるか、楽しみにしています!
※新渡戸文化小学校 デジタルクリエーションクラブ のこれまでの模様はこちらで
■@ 新渡戸文化小学校 デジタルクリエーションクラブ/①キャラクターの作り方