「セリフがうまくなりたい!」という方、すぐに実践してみてください。新井一は「セリフに感情を乗せてください」と言っています!
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
なるべく“描写のセリフ”を
描写は人の心を打ちますが、説明はわからせることが目的なので、人の気持ちは動きません。セリフは人間が発しているので、いかにも描写のように思えます。でも実際は、声でもって説明をしているに過ぎません。
シーンというのは、その場を描写しますが、そこへ来るまでは誰も知りませんので、作者は説明してやる必要があります。連続テレビドラマでは毎回、回が変わるたびにナレーションを挿入します。朝ドラが終われば他の出しものが入るわけですから、前日の場面を思い出すように説明をするのです。
ナレーションは説明のためにあるのですから、説明に終始しなければなりませんが、セリフの場合、人物が発するのですから、なるべく描写のセリフがほしいですね。
セリフは用件を話すセリフと、感情を表わすセリフとがあります。しかし、セリフは感情を持った生身の人間が発するのですから、感情の乗らないセリフはないわけです。
セリフは感情を乗せると面白くなる
故・長瀬喜伴氏の作品で、デパートに買物に行った妻君が、昇りエスカレーターに乗って、何気なく下のフロアの貴金属売り場を見ると、自分の亭主が若い女にネックレスを買って、悦に入っています。
妻君カーッとしますが、エスカレーターで身動きがとれません。ともかく階上に上がって、慌てて階段を駆け足で降りて貴金属売り場に来ると、亭主と女は影も形もありません。
そこで店員をつかまえて、
妻君「ちょっと、うちの人知らない」
店員「はァ?」
普通われわれが書くと、
妻君「ちょっと、ここに中年のおやじと、女の人がネックレスを見ていたの。どこに行ったか知らない?」
と、すでに観客が知っていることに説明を重ねることになります。
そこへ行くと、理屈や脈絡はありませんが、知らない店員に「うちの人」と聞くことで、いかに周章狼狽して、カースケになっているかがわかります。
セリフでも、感情に乗せなければつまらないのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1990年10月号「新井一 十則集」/2018年11月号「新井一.com」
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