子どもたちに自由に想像してもらう時間
シナリオ・センターの新井です。
シナリオ・センターでは、子どもたちにシナリオを書く楽しさと、そもそも書くことへの苦手意識をなくしてもらう取組みとして、キッズシナリオを2010年から実施しています。
千代田区立番町小学校は、新井一、新井巌、小林幸恵、そしてわたくし新井一樹と、一族郎党がOBとして通った地元の小学校です。だいたい、いつも以下のようにキャラクターを自由に考えて、シナリオを書いてもらうという流れを実施しています。
キッズシナリオ で実感!キャラクターを強めるなら口グセを考えてみる
https://www.scenario.co.jp/online/26600/
▼2017年は、こんな感じ▼
2021年は、田中君と唐下さんにメイン講師をしてもらいました。
書いてもらったシナリオにコメントをつけて返却
子どもたちには、20分くらいの時間でシナリオを書いてもらいます。
キャラクターをしっかりと考えてもらってから書き始めるので、すごい勢いでシナリオを書きます。
たぶん、大人なんかよりも筆が早い!
どんどん枚数が増えていきます。
キッズシナリオをやっていると、「書けない子はいないんですか?」と聞かれることがよくあります。
答えはずばり、『いません!』です。
作文がふだん得意ではないというお子さんも、書けちゃうのがシナリオです。文章力がいらないし、なにより、思わず書きたくなる仕掛けもいくつかしてありますしね!
ということで、一生懸命子どもたちが書いてくれたシナリオには、コメントをつけて返却しています。
良いところをを見つけるのが大切
子どもたちが書いてくれたシナリオへのコメントも、大人向けのシナリオ作家養成講座やシナリオ8週間講座、シナリオ通信講座でのシナリオの添削も、基本は変わりません。
良いところをみつけて、ほめる!です。
シナリオには、正解も不正解もありません。なので、何を書くかは作家の自由です。ですが、どう書くかには、書きたいことが相手におもしろく伝わるかどうかという基準があります。
その視点で見た時に、うまくかけているところを探します。
たとえば、
・セリフに登場人物らしさ(キャラクター)が出ている箇所
・らしさが出ているので、おもしろいセリフになっている箇所
・ト書に、登場人物らしさが出ている箇所
・らしさがでているので、意外なト書になっている箇所
・小道具をうまく使っている箇所
・意外な構成になっている箇所
・どんでん返しの展開になっている箇所 などなど……
どの子のシナリオにも、いいところは必ずあります。
そこを見つけて、きちんとどこがいいのか、なぜいいのかを伝えます。
大切にしているのは「単にここがいいですよ」ではなく、「ここがいいですよ、なぜならね」と理由も伝えるところです。そうすることで、感覚的なだけではなく、理論的にどう書けばいいのかが子どもたちにも伝わります。
ちょっと気になる先生の視点
子どもたちのシナリオにコメントをつけて返却すると、先生が必ず目を通してくれます。
そして、だいたい「こんなにコメントを頂いて……」という言葉とともに、ちょっとだけ気になる言葉がついてきます。
『続きが気になるものもありましたが、ほとんどが見ていただくのも申し訳ないようなものばかりで・・・』
というような、恐縮した言葉です。
でも、見るのが申し訳ないような作品は、一つもありません。子どもたちの作品は、完成されてはいないものばかりです。それで全然かまわないと思います。大切なのは、シナリオを書く時に、頭のなかでさまざまな登場人物の立場や性格を想像して、セリフやト書を書いていくというプロセスです。そして、そのプロセスを経てできたシナリオには、必ずいいところがあります。
シナリオは、テストのように100点からの減点方式ではありません。100点もなければ、0点もない。点数化できないものに、価値を見つけるのは大人の役目です。
子どもたちの創作したものをどう見るかは、大人こそ試されます。シナリオの場合は、「伝わるか伝わらないか」さらに「相手にとっておもしろいかどうか」という基準があります。キッズシナリオを実施する際に、シナリオを書けない子がいないのは、この基準を楽しくつかんでもらって、楽しみながら書けるからだと思っています。
子どもたちの想像力に“点数をつける”のではなく、“火をつける”形で応援できたらな、といつも思っています!