シナリオ・センター創設者の新井一は<シーンの始まりと最後が同じでは、説明に過ぎず、「ドラマがないわ」となります。「ドラマとは変化である」と覚えてください>と言っていました。変化を描く。そして今回こちらのページでご紹介する登場人物の関係性の描き方をおさえると、視聴者・読者を引き込む物語が書けるようになりますよ。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
感情の波長がドラマを作る
人物を追求するとなると、私たちは登場人物個人について、力を入れて、あれやこれやと考えます。
でもそれだけでなく、もうひとつ先のことを考えてみましょう。それは人物と人物の関係です。人物同士の関係というか、感情の波長がドラマを作っていくのです。
例えばメロドラマなら、今まで嫌な奴だと互いに思っていたのに、何かあって、「あんなにいい人なんだ」と思って、それからお互いに近づきます。ところが、またあることがあって、やっぱり嫌な人だったと、二人の間の関係は遠のきます。
こんなふうにメロドラマに限らず、すべてのドラマというのは、親しくなったり嫌になったりしながら、進行していくものです。ですから、この二人の関係にずっと注目していかなければなりません。
不安定な関係の方がドラマは出来やすい
初心者の人にホームドラマを書いてもらうと、夫婦仲は良く、親は子どもを可愛がり、子どもはお父さんとお母さんのことが大好きで、という設定にしますが、それではドラマは起こりません。ホームドラマでも、横っ面張り倒してやりたいほど憎い時もあるでしょうし、抱きしめてやりたい時もあるわけです。
しかし円満でなく、何か不安定な関係の方がドラマは出来やすいですね。親子の生活はしているけれども、実は本当の親子ではない設定のほうが、ドラマは進行しやすいのです。
例えば三浦綾子先生の名作、『氷点』などは、自分たち夫婦が可愛がっていた娘が誘拐されて殺され、娘の代わりに同い年の犯人の娘を引き取って、我が子のように育てます。こうした関係にした方が、何かが起こるかな?という予感がしますし、実際にうまくドラマは進展していきます。
『ひらり』(内館牧子作)は、姉妹が同じ一人の男性を愛するようになります。大変複雑な感情の波長が出来ます。三角関係は感情の波長が充分に発揮できる要素があるので、いろいろなドラマで使われるわけです。
しかもこれに義理人情のカセがからむと、余計にドラマが濃くなります。
出典:『月刊シナリオ教室』1993年5月号「新井一 十則集」/2014年11月号「新井一.com」
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「シナリオは、だれでもうまくなれます」
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