応募総数1323本
「1323本」ものご応募をいただいた『トップシーン脚本大賞』。
「応募数は300本くらいかな~」という予想のもと、締切と発表会の日時を同時に設定してしまった同企画の担当 新井と柏田講師は、嬉しい悲鳴をあげながらも当日は大慌て。
審査委員長でもある柏田講師は発表会開始ギリギリまで応募作を読み込み、第一次選考通過作品を決定。その中から、特に印象的だった68作品を発表会で読み上げ、そこから最優秀賞作品1本、柏田道夫賞作品2本を選びました。
☆最優秀賞
『さよならコスモス』寺沢恵 さん
☆柏田道夫賞
『風鈴の内側』ADぺろしき さん
『いつだって、私たちは』宇藤百合香 さん
最優秀作品には図書券5,000円(メッセージカード付)を、柏田道夫賞の作品には著書『改訂版 小説・シナリオ二刀流奥義』(サイン入り)を進呈。
当日の発表会の模様はYouTubeでライブ配信。
そのダイジェスト版として、こちらのブログでは、
・応募作で多かったもの
・受賞の決め手
・注意してほしいこと
・書けなくなったときの対処法としても使える「トップシーン発想」
――といった4点に関する柏田講師のコメントをご紹介。
脚本や小説を書きたい方にとって、為になることが沢山あると思います。また、今回多くの反響をいただきましたので第2回トップシーン脚本大賞も実施するかもしれません。その時のためにも、ぜひ参考にしてください。
応募作で多かったもの/『張り手型』と『撫ぜ型』それぞれの良さ
〇柏田講師:トップシーン脚本大賞は、小説の書き出し1行で競う『書き出し小説大賞』の“まねっこ”で始めたわけですが、とはいえ、このコンクールで書いてもらうのは「場面」。皆さんには、シーンとしての面白さを考えて、「これからどうなるんだろう?」と思わせるトップシーンを書いてほしかった。
その意味では今回、タイトルって大事なんだなと改めて思いました。タイトルがそのまま“中身”になっているものが多くて、ネタバレしちゃってるんですよ。それではちょっとつまらない。「こんな話なのかな?」と思いつつ、読んでみたら「そういう話か!」というのがいいんですよね。
あと、内容でいうと、
・飛び降りる
・体が浮いている
・死体が転がっている
・火葬場
――といったファンタジー要素、サスペンス要素が強い『張り手型』の作品が多かった。
シナリオ・センターの基礎講座(作家養成講座/8週間講座/通信講座基礎科)を受講していただいたかたはご存じだと思いますが、トップシーンは「構成(起承転結)」でいうところの「起」になり、この「起」の入り方は2種類あります。
1つは『張り手型』。「え?何が始まったの?」と見ている人を驚かして、疑問をもたせてグイと観客を引き込むやり方です。
もう1つは『撫ぜ型』。いきなり驚かすのではなくて、順序良く入っていくやり方です。
今回はトップシーンだけを書いてもらったということもあり、インパクトがあって「何が起きるのかな」と思わせる『張り手型』の作品が多かった。
ただ、最初から最後まで1つの作品を書くとき、そればかり狙っていると、後が続かなくなりますので、『撫ぜ型』で始まって徐々に観客を引き込んでいく、ジワリと感じさせる作品も書いてみてください。奇をてらえばいい、ということではないのでね。
※『張り手型』と『撫ぜ型』についてはこちらの動画でもご紹介しています。
▼シナリオはじめの一手。『張り手で出すインパクト』23話
▼シナリオはじめの一手。『味わいある出だしは撫ぜ型で』26話
▼受け手の心をどっちでつかむ?ファーストシーンの書き方/ヒント
▼上手い導入部の書き方
3作品の受賞の決め手
・最優秀作品『さよならコスモス』(寺沢恵さん)
〇柏田講師:タイトルがキレイ。シナリオも映像的に描けているし、奇をてらっていない。トップシーンだけで主人公の瞳が何かを抱えているということが分かるし、胸に迫るものがありました。「愛してる、愛しているわ」というセリフもいいなぁ。
・柏田道夫賞『風鈴の内側』(ADぺろしきさん)
〇柏田講師:柱の「仕舞屋(しもたや)」というのは、店仕舞いをした家とか、あるいは、京都の町に行くと軒があって昔何か商売をやっていた家がそのまま残っている、それを仕舞屋っていうんですけど。この言葉を久しぶりに聞いたなぁと思って、なんかすごく懐かしくて。それから、風鈴が鳴っていて、その中に何か文字が書いてある。なんて書いてあるんだろう?って気になる。この作者の方は他にも沢山応募してくれたんですけど、どの作品も独特な感覚があって、好きでした。
・柏田道夫賞『いつだって、私たちは』(宇藤百合香さん)
〇柏田講師:タイトルもいい。おばあちゃんが自分の日記を読んでいて、サンドイッチ回想法(最初と最後が「現在」で、途中の話が「過去」)で構成するのかな、とか、ここからどういう物語が始まっていくのかな、と考えたくなる作品でした。
注意してほしいこと/読書シーンの描写
〇柏田講師:ト書に、「文庫本を読みだす」とか、「ハードカバーの本を読んでいる」と書いていた作品があったのですが、その文庫本なりハードカバーの本が何なのかっていうのを書いてほしいんです。
例えば主人公が15歳の女の子だとしたら、J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んでいるのと、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を読んでいるのとでは、この女の子のキャラクターやイメージが全然違う。ガラッと変わるわけですよ。だから、何を読んでいるのか、というところまで書いてください。
書けなくなったときの対処法としても使える「トップシーン発想」
〇柏田講師:今回、こんなに沢山応募してもらえたのはやっぱり「トップシーンだけ書けばいいから」だと思うんですよね。書きやすかったんだと思う。だから、もし「書けない……」となったときは、とりあえずトップシーンだけ書いてみるというのもいいんじゃないかな。
以前、『月刊シナリオ教室』(2018年5月号)の「シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!」(※)でも述べましたが、作家の村上春樹さんがエッセイで、「その女から電話がかかってきたとき、僕は台所に立ってスパゲティーをゆでているところだった」という1行から書き始めて、それが『ねじまき鳥と火曜日の女たち』という80枚ほどの短編になり、さらにここから長編への構想に発展して『ねじまき鳥クロニクル』という長編小説になった、と書いていました。
何のアイデアもなかったけど、思いついた一行のイメージ(映像シーン)から、「誰からの電話だろう?」「彼は茹でかけのスパゲッティーをどうするのだろう?」といった疑問を招集してひとつの物語に換えていったそうです。
ただ、皆さんに気をつけてほしいのが、思いついたトップシーンからそのまま書き進めてしまうと、途中で破綻するケースが多い、ということ。あくまでも取っ掛かりとして「どんなシーンから始まるのか」から考えて、その後、「テーマはどうするのか」「キャラクターはどうするのか」「どんな設定で、何枚ぐらいで書くのか」といった全体の構成を考えていくと面白いものが書けるかもしれません。
また、途中で変わってもいいから、まずはタイトルを考えて、そこからトップシーンを考えたり、発想を広げていくというのも一つの方法だと思います。
「書けない……」というときは是非、こういった方法を試してみてくださいね。
※ブログでも掲載しています↓
「短編小説を書く最初の1行を書き出してみる」
※『トップシーン脚本大賞』 発表会の模様はこちらからご覧いただけます↓
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