「せっかく書くなら、面白いストーリーを作りたい!どう書けばいいだろう?」って思いますよね。でも今回は、「どう書くか」を考える前にまず、視聴者・観客の気持ちを考えてみましょう。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
「謎」を考えよう
謎というと、面白がらせるためのあざとい技術のように思われがちですが、実はどのジャンルでも謎は必要なのです。小説でも映画やドラマでも、謎に釣られて興味をもって、どうなるのだろうかとストーリーを追ってゆきます。つまりストーリーを進展させる要素なのです。
例えば朝、東京駅からサラリーマンが羊の群れのように歩いていきます。その群れの真ん中で立ち止まって、ジーッと丸ビルの20階辺りの窓を見ていたらどうでしょう。違和感を感じますね。違和感を感じて「何だろう!」ということが謎なのです。
こうした気持ちになると、その先を見たくなるのが人情というものです。このことを“先行思考”といいます。そして、例えば野球とかサッカーでどっちが勝つのかとドキドキしながら先を考えます。これは“観客参加”ということなのです。チームや選手にひいきがなければ、別にドキドキはしません。
それと同じように、観客に早くひいきを作ってもらう必要があります。早くひいきになってもらうには、人物に魅力がなければなりません。ところが、違和感を感じるには、別に魅力や好意を持たなくてもいいのです。この場合は、何か不思議なことがあればいいのです。
観客が「この先どうなるのだろう」とズーッと考えるように
もう少し突っ込んでみましょう。「何だろう」と不思議を感じる違和感は「現在」です。ところが「何だろう」の次に「どうなるだろう」という未来形に発展するのです。先ほどお話した先行思考はこのことなのです。
つまりストーリーは過去、現在、未来があって進行するものです。進行するためにはエネルギーが要ります。登場人物には「何かしたい」という目的や欲望があります。これが「貫通行動」です。『君の名は』の春樹と真知子の目的はやがて結婚したいということですし、秀吉は天下を取りたい野望があります。
そのストーリーは千変万化でどうなるのか予断を許しません。ですから観客は、「これから先、一体どうなるのだろう」とズーッと考えているのです。それが観客参加ということです。登場人物の気持ちになって、常にどうなるかと思うから面白いのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1994年5月号「新井一 十則集」/2015年11月号「新井一.com」
※「この先どうなるんだろう?」と思わせることは、トップシーンを書くときから大切。そのことが書いてあるこちらの記事も併せてご覧ください↓
▼「トップシーン脚本大賞 結果・講評」
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
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