立春
シナリオ・センター代表の小林です。立春大吉。
これから暖かい春がやってきます。芽吹きの年を充実させましょう。
暦の上では春になりましたが、私事で恐縮ですが、今日、立春に我が家の愛犬16歳のハルが旅立ちました。
朝は元気にご飯をペロリと食べていたのですが。
獣医さんからは、心臓を病んでいたので、常に覚悟を迫られていて「いつなんどきどうなってもおかしくないからね」とくぎを刺されていました。
私自身この数年ずーっと自分に言い聞かせていて覚悟はしていましたが、だからといって覚悟ができていないかも。
でも、16歳、柴犬のハルは人間でいえば90歳近いのですから大往生だとは思います。
悲しいけれど、それだけで十分、16年間、楽しませてくれたことだけで、幸せにしてくれただけでありがたいと思います。
立教女子学園の小学校では、学校犬が何匹か生徒とともに過ごしているそうです。
飼育放棄をする人も多い中、こうして愛情のかけ方、命ある生き物とのかかわりをきちんと持つことを子供の頃から体感することはとても良いことだと思います。
限りある命を、最後まで面倒を見るのは人間とも変わらない介護が必要で、その覚悟がないと生き物は飼えません。
子どもたちが、命と向き合う経験を積んでくれることは、すてきなことだと思います。
シナリオ・センターの隣には、トイプードルを売っているお店があります。
小さくてとてもかわいいけれど、それだけで飼わないで欲しい、覚悟をもって飼ってほしいと願わずにはいられません。
命は誰の命も大事です。いらない命はありません。
命優先で、すべての物事が考えられたら、社会も生き方も変わるのだと思います。
監督業
3月4日から、出身ライターの上田慎一郎さん脚本、同じく出身の曽根剛監督の映画「永遠の1分。」が上映されます。
3・11を題材にしたドキュメンタリ―を撮ってくるように命じられたコメディ専門の監督スティーブが、被災地に入り、復興半ばの現状を目の当たりにして、部外者がこの題材を取り上げるのは許されるのかと葛藤しながら、笑いがもたらす癒しの力で困難や葛藤を乗り越えていく姿を描いています。
試写を拝見して、難しいことに挑戦されたなあと思いました。
スティーブの姿は、まさに上田慎一郎であり曽根剛なのではないかと思いました。
震災を扱うことはとても難しいことです。
立場も想いもみんな違いますから、悲しみも苦しみもそれぞれです。
そのそれぞれを、息子を失ってアメリカへ逃げた歌手と被災地の中で被災者の人々との出会いとを重ねて、映画を完成させるまでを描きます。
2011年3月、震災が起こった後、シナリオ・センターでもエンタテイメントに何ができるか悩みました。
でも、その時被災者の女の子が一番したいことは「恋バナ」だといっているのを聞いて、どんな時にも日常が大事なのだと思いました。
被災者や被害者はずーっと悲しんだり、苦しんだりしていないとおかしいようなことをいう馬鹿な方もいますが、日常というものがどんなに大切でそれがどんなに慰められるか。
立ち上がる力になるのは淡々とした日常の繰り返し、女子高生が友達と「恋バナ」で盛り上がれることなのだと思います。
そんな想いと通じる全面やさしさが漂っている映画となっていました。
曽根剛監督の本が出ました。
「映画監督になる方法~13の実践的アイデア~」(言視舎刊)
この本は13人の監督に、曽根さんがインタビュー形式でどうやったら映画監督になれるかを中心に資金の調達法や、監督になったきっかけを訊いています。
「ロックンロール・ストリップ」の木下半太監督、「メランコリック」の田中征爾監督、「おんなのこきらい」の加藤綾監督、「エターナル・マリア」の阪本武仁監督、「ひねくれ女のポッチご飯」「eggs選ばれたい私たち」の川崎僚監督、「裏アカ」の加藤卓哉監督、「ケンとカズ」の小路紘史監督、「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督、「ミセス・ノイズィ」の天野千尋監督、「うまれる」の豪田トモ監督、「君がまた走り出すとき」の中泉裕矢監督、「新聞記者」の藤井道人監督の13人。
阪本監督、川崎監督、上田監督は、シナリオ・センター出身で、阪本監督は20枚シナリオのお話もしていらっしゃいます。
13人の監督のデビュー方法も監督の仕方もそれぞれ違うのですが、監督への道は、何度失敗しても諦めないことの一言に尽きるのではと、読みながら思いました。
13人の監督が全員熱い想いを持ち続けていることが、伝わってくるからです。
監督志望の方だけではなく、創作に携わる方、必読の書かと思います。
熱い想いが生まれます。