決算説明会資料もシナリオの技術でより魅力的に!
今回は、理研ビタミンさんで実施したビジネスシナリオ研修の模様をご紹介。シナリオ・センターの新井が「投資家の方々に向けた“決算説明会資料”も、シナリオの技術を使うとより魅力的に作れます!」というお話をさせていただきました。
==今回のビジネスシナリオ研修の概要==
・サービス名:「ずれない」決算資料
・目的:魅力的な中期経営計画資料の作成
・研修対象:理研ビタミンさま
・研修時間:約90分
ビジネスシナリオの詳細 https://sites.google.com/view/biz-scenariocenter/home
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いつも事前に、現在の状況や課題をヒアリングいたします。
同社 経営企画部 広報・IR室長の井上さんと主務の清水さんにお聞きしたところ、「近々、中期経営計画の発表を控えており、そこで使う資料を作ります。それにあたって、どうすれば当社に魅力を感じ、期待をもっていただける構成にできるか、知りたいです」とのことでした。
なお、中期経営計画とは、企業が中期的に目指す在り方と現在置かれている状況とのギャップを埋めるための計画のことで、長期的な経営ビジョンを実現するために、3~5年の間にやっておくべきことを示したもの。
この堅い内容を読んだだけでも、「これは読んで面白い!」となる資料に、そう簡単にはならないような気がしますよね。
でも新井は、
〇新井:決算報告の多くは読んだ後の“余韻”がありません。だから、「ああ、そうなんだ」で終わってしまうことが多いんです。「なるほどなぁ」「応援したい!」と感じてもらえるような資料にするために、まずは「構成=起承転結」を押さえましょう!
―――とすごい前向きです。
決算説明会資料の起承転結を考えるとは、一体どういうことなのでしょうか?
当日の模様を広報の齋藤がレポートいたします。広報・IR担当者のかたや、資料作りでお悩みのかたも、ぜひ参考にしてください。
資料を書き出す前に「構成(起承転結)」を考える
*
〇新井:昨年、ログミーさん主催でオンライン配信した、広報・IR担当者向けセミナー「シナリオライターの養成スクール講師がリライトする『投資家がときめく決算説明会資料』」(※)でお話しさせていただきまして、そこに井上さんが参加してくださったんですよね。
このときは、「決算説明会資料ってあまり魅力的に語られていないのでは?」という話や、「実際の決算説明会資料をシナリオ制作の視点で再構成するとどうなるか」を解説させていただきました。
〇井上さん:そうなんです。これに参加して、「この話を同じ部署のメンバーと一緒にもっとお聞きしたい」と思いました。
というのは、会社規模に対して事業領域が広いので、きめ細かく網羅しようとすると説明文が多く冗長な資料になってしまい、簡潔にすると正しい当社の姿を理解いただけているのかという疑問が残ってしまうんです。
例えば、当社は「ノンオイル 青じその会社」「ふえるわかめちゃんの会社」など家庭用食品のイメージが強いのですが、他にも乳化剤やビタミン、天然色素など、いろいろな事業をやっています。この、ある意味“ウラの8割”を分かっていただき、「いい企業だね」と思っていただくには、どんなふうに資料を作ればいいのか、お聞きしたいと思いました。
〇清水さん:また、「中期経営計画で、何のためにこういうことをやって、どう社会に役立つのか」をきちんと言わないと、投資家の方々から「この事業は本当に必要なのでしょうか?」と指摘されてしまう場合もあるので、どの事業もきちんと役割を果たしているということをお伝えしたいです。
〇新井:分かりました!
「何のために、どこにむかっているのか」がきちんと伝わる資料にするためには、いきなりアタマから書き出してしまうのは危険です。まずは「構成(起承転結)」を考えます。
構成については、井上さんにご参加いただいたこの前のセミナーでも少しやりましたね。では、問題です。
一番先に考えるのは起・承・転・結のどれでしょうか?まずは、この前のセミナーを受けていない清水さんから。
〇清水さん:「起」でしょうか?最初の部分で「これはダメだ」と思われてしまったら、もう読んでもらえなくなるので。
〇井上さん:前回お聞きしましたよね……読み終わった後の余韻が大切なので「結」でしょうか……。
〇新井:正解は―――「転」です。
井上さん、ショックでのけぞっております。
〇新井:いやいや、お二人の考え方は決して間違ってないですよ。勿論、最初も最後も肝心なんです。ですが、どこを先に考えたほうが、より人に伝わる資料になるかというと「転」なんです。
それでは、起・承・転・結それぞれの機能とともに、考えていく順番も解説します。
①転:テーマ
=資料で伝えたいこと。
②結:テーマの定着と余韻
=資料を読んだ後に、投資家の方々にどう思ってほしいか。
③起:
・アンチテーゼ
=テーマとは逆のこと。投資家の方々が感じている、「〇〇なの?」という疑問や「本当に〇〇になるの?」という期待
・天・地・人
=「いつ・どこ・だれ」の話をしているのかが分かるように。
④承:問題(障害)→解決
=こういう問題をうちの会社はこう乗り越えていきます、ということを伝える。
〇新井:考えていく順番としては、できれば「転→結→起→承」がいいかなと思います。それではまず、「転=テーマ」を考えていきましょう!
「起承転結」の できれば「転=テーマ」から考える
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〇新井:「転=テーマ」は、「〇〇だから(これを言いたい)」と考えてください。
――すると、発表前なので詳細はお見せできませんが、お二人からたくさん「テーマ候補」の事柄が出てきました。
〇新井:いっぱい出ましたね。でも、1つに絞らないと。そして、もっと具体的にしてみてください。資料の「目印」になりますからね。
例えば、ドラマのテーマで言うと作者の視点になりますので、「友情」だけじゃなくて、「友情の大切さ」「友情のもろさ」といった感じになります。
〇井上さん&清水さん:言いたいことがたくさんあるんですよね……。
〇新井:ここをひとつに絞るには、「誰に向けた資料なのか」を考えてみるといいですよ。新規の 個人投資家or機関投資家なのか、既存の 個人投資家or機関投資家 なのか。
〇井上さん:新規の個人投資家や機関投資家の方に理解いただける内容にしたいです。機関投資家の方の場合、国籍はさまざまで、比較的男性40~50代の方が多く、30代の場合は先輩や上司に報告するパターンもあるかと。
新規なので、まず当社がどんな会社なのかを知っていただき、魅力を感じていただく。そして「興味を持ったので少し詳しく調べてみよう」と思っていただけるとうれしいです。
〇新井:ではそれを踏まえて、「転=テーマ」を1つ決めましょう!
〇井上さん&清水さん:う~ん、難しいですね……。いろいろな事業があるので、そのことがパラパラと“箇条書き”になってしまいます……。
〇新井:分かりました!では、これは一旦置いておいて、先に「貫通行動」を考えてみましょう!
「転=テーマ」が1つに決められないときは「貫通行動(企業理念)」を
〇新井:ドラマにおける「貫通行動」とは、簡単に言うと「主人公があきらめない理由」です。今回の資料で言うと「なんのために頑張っているのか」。もっと言うと「企業理念」のことです。
〇井上さん:「貫通行動」は「テーマ」とは違うんですね!しかも企業理念にあたることなんですね。
〇新井:はい。例えば、うちの会社もいろいろな事業をやっています↓
・シナリオライター育成向け講座の運営
・プロデューサー・ディレクター育成向け講座の運営
・教育機関向け講座の運営
・企業向け講座の運営
・新規講座の企画・提案・運営
こんなふうに箇条書きにすると、パラパラといろいろな事業が散らばっているような感じですけど、どの事業も「日本中の人にシナリオを書いてもらいたい」という理念が“根幹”にあります。日本中の人にシナリオを書いてもらいたいから、シナリオ・センターは頑張っています。
〇井上さん&清水さん:なるほどなるほど。
〇新井:ですから、先ほどお二人に出していただいた「テーマ候補」はどれも“根幹”は同じ。「企業理念」から派生しているはずなんです。なので、“根幹”となる企業理念を1つ添えれば、テーマが考えやすくなると思います。
〇井上さん:例えばですけど、当社の企業理念のもとにあるのは「天然物の有効利用」ですね。
〇清水さん:でも、経営理念とは言い方が少しズレてしまうんですよね。「社会に対し、食を通じて健康と豊かな食生活を提供する」ですので……。
〇新井:ああ、そうなんですね。でも、大きくズレているわけではないのかなとも思いました。
というのは、例えばなんですけど、テーマを考えたときに出してくださった「テーマ候補」のいくつかは、資料の「承=問題→解決」の部分で使えるかなと。
「テーマ候補」の事柄は、バラバラのように見えて、“根幹”はさきほど仰っていただいた企業理念「天然物の有効利用」ですよね。天然物の有効利用のために、これらの事業を展開されているわけですから。
――井上さんも清水さんも頷いております。
〇新井:既に存在している企業理念のこともありますので、今回はこの場で「起承転結」が確定しませんでしたが、でも、こういった感じで考えていくと、自分たちの会社のどんなことを本当に伝えたいのかが見えてくると思います。
〇清水さん:そうですね!中期経営計画はいろいろな部署が連携して作成しているので、今日知ったことを資料に反映できるように、もう一度整理してみたいと思います。
〇井上さん:まずは「貫通行動(企業理念)」を考えて、それから「転=テーマ」が決まれば、構成はスルスルといくものでしょうか……?
〇新井:はい!「転=テーマ」が決まれば「起=アンチ」も決まりますからね。
〇井上さん:分かりました。参考にさせていただきます!
* * *
今回ご紹介した方法は、決算説明会資料だけでなく、どんな資料を作るときにも使えます。「こんなことを伝えたいな」などと考えながら書くのではなく、自分が伝えたいことを明確に整理してから書くので、時短にもなります。こんなふうにシナリオの技術をビジネスでも是非使ってください!
※井上さんに前回ご参加いただいた、「シナリオライターの養成スクール講師がリライトする『投資家がときめく決算説明会資料』」の動画はこちらからご覧いただけます↓
<今回のブログの関連記事>
■シナリオ・センター新井の「note」も併せて是非!
「決算説明会資料は、シナリオの技術でもっと魅力的にできる、っていうセミナーをした話」
■「起承転結」についてもっと知りたいかたは、こちらのブログもご覧ください。
「“文章が書けない”となる前にすべきたった1つのこと」
■今回の記事でも触れた「企業理念」。シナリオ発想でこんなふうに作ることが出来ますよ↓
・ワクワクワークさんでの事例
「シナリオ発想で 企業の核 となる理念フレーズを考える」
■その他、シナリオ研修の模様はこちらをご覧ください。
「コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ」