シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
今回ご紹介するのは新井一がシナリオ通信講座の生徒さんに向けて書いたコラムですが、通学の生徒さんも、シナリオ以外で何かを学んでいる方にも当てはまる内容になっています。特に、習い事などが「いつも続かない……」という方、参考にしてください。
急にうまくなるものではありません
通信生の皆さんは、最初は誰もが中断しないで書こうと思って始めるのですが、だんだん辛くなってくると「まあいいや、来週は必ず」なんて思って、それがいつの間にかご無沙汰の要因となります。
潜在意識の中に「うまく書いてやろう」という気持ちがあるからです。そりゃ誰でもがそう思うのですが、習ったからって急にうまくなるものではありません。始めから名作を作ろうというのは無いものねだりです。
「ドラマになっていない」と言われても、最初は誰もがそうなんですから、威張ることはありませんが、そんなことに一喜一憂することはないのです。毎回毎回出して、それがすぐに傑作になったら気味が悪いです。
切羽詰ると出来る
シナリオの技術は頭にマスターするのではなく、手に覚えてもらうのです。それが技術というものです。手に覚えるということは、何回も何回も同じことをやって、それこそ手に入れるものです。
誰かの本に書いてありましたが、床屋さんが髭を剃るのに、最初から人間の顔に剃刀をあてては危ないので、その前にホウロク(※焙烙=素焼きの土鍋の一種)の裏をお客さんの顔に見立てて、ホウロクの底が抜けるまで剃る仕草をするそうです。それが三ヵ月経ったら、今度は自分の膝小僧をお客さんの顔に見立てて、本物の剃刀で剃るのだそうです。
何回もやっているうちに、いくら膝小僧さんでも、お風呂に入ってもヒリヒリして入れないそうです。それほど何回も同じことをやって、覚える(進歩する)ものなのです。それを、2ヵ月や3ヵ月やっただけで、「進歩がないのは私には才能がないから」なんて、そんなに甘いものではありません。
それから「話が考えつかない」と口をとんがらかす人がいます。それはあなたが締切の期日を最初から守ろうとしないからです。「何月何日までに出さなければならない」となると、その締切日に出来ちゃうものです。不思議なことに発想は切羽詰ると出てきます。プロの作家もそうです。「先生、月末までお願いします」「今週の末にはどうでしょう」と編集者が来るから書けるのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1994年12月号「頑張れ!通信生」より/2018年12月号「新井一.com」
★次回4月12日に更新予定です★
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。
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