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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

共感させるということ

あの演説はなぜ人を動かしたのか(PHP研究所刊)

区切り

シナリオ・センター代表の小林です。小学校、中学校の卒業式が今日は多いようです。
我が家の近くの千代田区立番町小学校も卒業式のようで、人数制限で式に参列できなかったご家族の方々が校門前に溢れるようにいらっしゃいました。
子どもの区切りというのは、親にとってはとても大きなことです。
ここまで、無事に育ってくれたという感慨はひとしおだと思います。
コロナ禍で、家族そろって卒業式に参列することもままならない、晴れ姿を画面越しに見ることしか叶わない時代でもありますが、どんな形にせよ、成長していくことを喜び合えるのは幸せなことだと思います。
教師でもありませんが、シナリオ教室や、出前授業で教えた子どもの成長した姿にやはり喜びを感じます。
無事に生まれるのも育つのも当たり前だと思われがちですが、人の命は授かるのも育つのも簡単なことではなく、だからこそどの命も尊いのです。
子どもたちの成長を楽しめる平和な世界であってほしいと願うばかりです。

ストーリーの黄金律

ロシアのウクライナ侵攻から早1カ月。戦いはますます泥沼化しています。
23日にウクライナのゼレンスキー大統領の日本向けオンライン演説に感動された方はたくさんいらっしゃるかと思います。
出身ライターの川上徹也さんは、コピーライターとして人の心をどう動かすかというノウハウ本をたくさん出されていますが、「あの演説はなぜ人を動かしたのか」(PHP研究所刊)の著者として、ゼレンスキー大統領の演説について各メディアから取材を受けられていました。

そのお話をお聞きして、さすが、川上さんだなあと思いました。
抜粋させていただくと、
「話している内容が簡潔でとてもシンプル」と評した上で、「ゼレンスキー大統領は、映画やドラマのような『ストーリーの黄金律』の主人公であるからです」と。
ストーリーブランディングを考案した川上さんは、「ストーリーの黄金律」という法則をよく話されます。
「(1)何かが欠落した欠落させられた主人公が、(2)ちょっと無理なのではという高く険しい目標に向けて、(3)色々な障害や葛藤、敵対するもの、自分自身の弱さを乗り越えていく」という3つの条件を満たしたときに成立するというもの。
その「ストーリーの黄金律」に当てはめると「(1)軍事大国ロシアに一方的に侵略されたウクライナの大統領が、(2)最後まで祖国ウクナイナのために戦い抜きロシアを撤退させるという目標に向かい、(3)押し寄せて来るロシア軍・空襲・参戦してくれないNATO、アメリカ・いつ暗殺されるかという恐怖と戦いながら、健気に頑張っている」
そうなんです。ドラマなんです。主人公なんです。だから、感動するのです。しかも事実ですから。

「 注目は日本向けに何を語るかということでした。
これまでの各国議会での演説では、聞き手に 自分ごとに思わせるような巧みな例を出してきていたからです。
日本のことに直接触れて想像させるのではなくウクライナ国内で起こっていることから間接的に想像させることに終始しました。
 たとえば、チェルノブイリ原発やザポロジエ原発にロシア兵が進入してきていること。
サリンなどを使った化学兵器をロシアが準備していること。
多くのウクライナ国民が住み慣れた家を出て避難していること・‥などです。
日本国民であれば、チェルノブイリから福島第一原発を。
サリンからは地下鉄サリン事件を。住み慣れた家を避難からは東日本大震災などの自然災害を。 
それぞれ自然に連想して共感します。
ロシア軍の津波のような侵略というフレーズもありました。 しかし、直接的には言ってないので、「比較するな」という声は出てきません。
ほぼ「感動した」という声ばかりです。 そういう意味では日本向けとしては非常に巧みなスピーチだったと言えるでしょう。」
 直接言わない、間接的だが自分事と合わせて考えられることで、共感はより大きくなります。
ドラマの最上級テクニックです。
ドラマを作る上で、大事なことがこの演説でよくわかります。
他人を感動させる、共感させるためにはどうすればいいか、とてもいい参考になったのではと思います。
日本の国会議員の感想は、恐ろしいほど前時代的で怖い思想が垣間見えて、あまりにもお粗末で、怒りを通り越して涙ものですけれどね。
あなたらなら、ドラマでどのように心に訴えますか。 

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