menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

ついでに

ついでにジェントルマン(文藝春秋刊)

魂入れず

シナリオ・センター代表の小林です。今日は夏日だそうです。さすがに衣替えまではしていないので、着るものに困ります。
衣替えは6月といわれてきましたが、ずいぶん気候は変わってきました。私の子供の頃は、最高気温って30度くらいでしたが、今は体温近く37度くらいまで上がるし、桜は早く、紅葉は遅く…温暖化ってこういうことなのでしょうか。
夏の衣替えでいつも思うのは、中高生の制服。
暑いのに、冬の学生服を着て汗かいている子どもたちの姿。暑くなるのが早くなっている上に子供は体温が高いのにです。
学校というのはなぜ臨機応変に対応をしないのだろうと思います。
子供の身体にも、成長にも悪いのではないでしょうか。
学校とか役所とかって、規則だらけで、前例が好きで、変化を好みません。ドラマは変化が大事なのに、人生だって同じです。
新しいことができないのか、嫌いなのかよくわかりませんが、もう少し柔軟な頭と心を持てないものでしょうか。
デジタル庁も、子ども家庭庁も掛け声ばかりで動いていないですしね。
これまた箱もの好きで、形は作るけど、中身がない。
「仏作って魂入れず」をこれほど実践しているのも、反省がないのも、日本人の特性なのでしょうか。

子どものことを第一に考えるといっても、学校でも役所でもお上でも、自分の体験からわりだした考え方なのですよね、それも悪しき例を。
こうすると悪い子になっちゃうという発想から始まる、性悪説から考える。
自分が悪いことを考えるから他人も悪いことしか考えないと思っている。だから、規則、規則で縛る。
私が一番おかしいと思ったのは、衣替えもそうですが、頭髪の色。
私も子どもも、生来の茶髪なのですが、姉弟2人とも受験時に地毛証明が必要だといわれたこと。
「そんなバカな証明書を出さなきゃいけない学校なら結構!」と蹴りましたけど。(笑)
30年近く前のことですが、今もなおやっている学校があると知って、これまたびっくり。
こうしたつまらないことばかりにとらわれているから、本質を見誤るのだと思います。

ついでにジェントルマン

出身作家の柚木麻子さんの新刊が出ました。7つの短編で構成されている著者初の独立短編集。
「ついでにジェントルマン」(文藝春秋刊)
「ルールなんてものがあったとしても、壊せばいいのだ」と帯に書いてあります。
その通りの痛快な7編です。
どれも共通するのは、こう見るのかという視点のすごさ、こう斬るのかという切り口の鋭さ。
本質を見極める力の広さ大きさに、ああ、柚木さんみたいな人が、日本を引っ張っていってくれたら・・・と真剣に思いながら読みました

「ComeComeKan!」文春のサロンでオール読物新人賞を受賞した覚子が編集者に面白くないといわれ、一からやりなおそうかなとぼやくと、なんと菊池寛の銅像が「そんなの意味ないよ!」と。
最後の7編目「アパート一階はカフェ!」は、1931年、当時では画期的な女性専用の大塚女子アパートメントで始めたカフェが舞台で、頑張る女性たち。ラストもろくでもない男を蹴散らして、菊池寛が締めてくれます。
菊池寛がすごいってこと柚木さんに教えていただきました。
著名な小説家でもあり文春の生みの親でもあるのに、とっても女子の気持ちがよくわかる自由でリベラルな素敵なおじさんなんですね。
もう一度「父帰る」を読み返してみよっと。(笑)

ベストセラー作家が自分の小説の舞台のホテルに久々に出向く「渚ホテルで会いましょう」
昔のテレビゲーム「勇者タケルの伝説」に取り込まれる男「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」
会員制の鮨屋に乳児を抱いた女性が入って来て、カッコつけの男たちは「エルゴと不倫鮨」
クズ夫から逃げ出して実家に戻ると義父が追いかけくるので、こき使ってみると「立っている者は舅でも使え」
整形クリニックで読んだ児童文学書の数々に人生を変えるヒントがあった「あしみじかおじさん」
どれもこれも、このろくでもない社会の定義をさりげなくぶっ飛ばしてくれて、爽快感この上ない小説です。

思わずニヤニヤしながら読んでしまったのが「あしみじかおじさん」。
コロナ禍で高校を卒業してどうしていいかわからない主人公亜子が読んだ児童文学書「世界名作全集あおぞら」のことなんです。
全集には「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」「あしながおじさん」「少女ポリアンナ」「小公女セーラ」「若草物語」「家なき娘」が入っていました。
すごい勢いで全部読んだ亜子は気が付きます。この気づきがすごい。
「どのお話も貧乏な女の子が金を持っている側からサポートを受けている。(略)ヒロインたちはあきらかに愛や勇気じゃなくて、お金持ちの手助けによって道を開いている。
直接的な融資を受ける場合と形にはならない価値観のようなおすそわけされる場合の2パターンがあるけれど、それがきっかけで人生が好転するのはみんな一緒だ」
子供の頃、境遇と健気に戦う主人公に魅了されて読んだ本の数々、涙をこぼしたことはあっても、こんな風に考えたことはなかった。
でも、確かに。なるほどです。(笑)
ね、すごいでしょ。柚木麻子さんの視点。こう考えた亜子がどう変わっていくのか。

すべての小説に「お!」と思わせる、「そうだ!」といわせる柚木風に、酔いしれて、力をもらいます。
つまんないルールなんて、ぶち壊せ!!

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ