伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞
シナリオ・センター代表の小林です。今日はクアッドのせいか、ヘリコプターがうるさい表参道付近です。
日本は、アメリカのご追従ばっかりなので、それこそ戦争へ一歩踏み出してしまうのではないかと心配になります。
どんなに武器を増やそうと抑止力でも安全でもないことが何故わからないのでしょう。
ウクライナを見ればわかるように、戦っているのはウクライナもロシアも国民です。お上はのうのうと安全な部屋で、たきつけているだけです。それが、戦争というものです。
戦わさせられるのは、矢面に立たされるのは、私たち下々だということを常に忘れないでいたいと思います。
伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞が、ちょっと形を変えて復活しました。
今まで毎年行われてきた伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞ですが、ゆっくりと映画制作してほしいと隔年開催となりました。
そして、シナリオ募集は、短編、中編の募集をしますが、映画化は大賞のどちらか1本になり、映画製作の補助金として150万円を贈呈してくれることになりました。
受賞者には副賞として賞金が授与されます。応募締め切りは7月1日20:00まで。
新たな形で復活した伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞、映画化目指して応募してくださいね。
猫弁と幽霊屋敷
あのベストセラー小説「猫弁」の第2シリーズ3作目「猫弁と幽霊屋敷」(講談社)ができました。
作者は言わずと知れた出身小説家大山淳子さん。
第1シリーズ、第2シリーズと合わせると8作目の「猫弁」です。
8作目ですが、「猫弁」こと百瀬太郎は相変わらずです。天才的頭脳の持ち主ですが、やっと一緒に暮らし始めた亜子さんともなかなか距離感をうまくつかめません。
でも、人の幸せを第一に考える稀代のお人好しは、むしろ拍車がかかっているような・・・。
今回は、事故物件、幽霊屋敷といわれている放置屋敷を何とかしてほしいと男性恐怖症でひきこもりの千住澄世からの依頼で始まります。
百瀬法律事務所での猫たちは、獣医のまことに連れられて「人と猫のお見合いパーティー」に強制参加させられます。
そこにペットホテル立てこもり事件が起こり、事務所の猫も巻き込まれてしまうのですが、なぜか、幽霊屋敷と立てこもり事件がつながって、「猫弁」の百瀬だからこその、百瀬らしい解決を見せてくれます。
ほっこりとした気持ちに満たされ、相変わらずの百瀬ににんまりしてしまいます。
これほど読後感が爽やかで、穏やかなやさしい気持ちになれる小説は類を見ません。
これは作者の大山淳子さんのちょっと百瀬的(?)な性格のなせる業でしょうか。(笑)
大山さんのキャラ見せのうまいところは、同じものに対するそれぞれの表現方法。
例えば、事務員の七重はストレートに思ったことを、秘書の野呂は相手を慮って、どちらも出し方は違うけれど、愛が深くてやさしいのです。
登場人物一人一人のキャラクターがやさしいのです。
そういうと「いい人ばかりじゃ面白くないじゃん、話が盛り上がんないじゃん」と思われるかもしれませんが、さにあらず。
みんないい人だからこそ、話はややこしくなり、だからこそ素敵な解決方法が生まれ、猫弁百瀬に接する人々が変化していくのです。
ストレートな七重は、相変わらず事件に追われて家をほったらかしの百瀬をけなげに待つ亜子にいいます。
「しつけははじめが肝心です。夫はちゃんとしつけないといけません。
これとこれはやってください。あれとあれはやらないでください。きっちり伝えないと、男のペースに巻き込まれますよ。
男のペースはろくなもんじゃありません。戦争をおっぱじめるのは男ですからね。結婚は女のしきりで明暗が分かれます」
まさに!!その通り!!世界を変えるのは女だ!!
百瀬はこういう素敵な人々に囲まれて成長していくのです。
この小説の惹句に「どんな家も、誰かの思い出。そして、誰かの帰る場所」とあります。
この想いがこの小説の根底となっています。やさしいという言葉を表面的に受け止めてはいけません。色々な想いが含まれているのです。
事故物件といわれる家にもなにかしらの人の想いがある・・・。
事故物件つながりです。
出身小説家原田ひ香さんの小説「東京ロンダリング」が文庫化されました。
「事故物件いかがですか 東京ロンダリング」(集英社文庫刊)こちらも、また違ったやさしさに溢れています。