「子どもの発想力を鍛えるにはどうしたらいいんだろう?」
こうお悩みの親御さんや先生方。シナリオを書くことをオススメします。でも、シナリオを書くだけ、ではなく、その前にブレストをすることもセットでオススメです!
シナリオ・センターの出前授業 キッズシナリオでは書く前に、発想を広げるための「ブレスト」をします。ブレインストーミングの略称で、キッズシナリオでは「創作にむけた頭の準備体操」という位置付けです。
正解も不正解も意識せず、さまざまなアイデアをどんどん出してもらうので、「自分の考えたことに自分で爆笑して喋れなくなっちゃう」という生徒さんが出るほど盛り上がります。
こういったブレストをしてから、発想を深めるための実習としてシナリオを書いていくのですが、ブレストで発想の“エンジン”かかっているので、物凄いスピードでシナリオを書く子どもたちが続出します!
今回はそんなブレストの模様を主に、広報の齋藤がリポートいたします。
=今回の概要==================
・サービス名:「シナリオプロジェクト」
・目的: シナリオ作り
・対象:NPO法人 放課後NPOアフタースクールさま
台東区立 谷中小学校 放課後子供教室(2~4年生)
・時間:約1時間
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
========================
“学年を超えた交流”をしながらブレスト
昨年から実施させていただき、今回で7回目。“リピーター”の生徒さんもいれば、初めての生徒さんもいます。いつもあだ名を決めてからスタートします。担当の新井、今回のあだ名は本名を短縮した「あらいか」。「あらいか」で少し場が温まったところでさて本題。
〇新井:今日やるのは『ウサギとカメ』。この話、知ってる?
〇生徒さん:知ってる!まさかのカメ勝利の話。
〇新井:そうそれ(笑)。じゃあ、なんでカメは、ウサギと勝負しようとしたのか考えたことある?
〇生徒さん:ある!
〇新井:おぉ!あるの?いいね!今日はみんなにそれを考えてもらおうかなと。カメはなぜウサギと勝負しようと思ったのか。だってさ、カメは歩くのが遅いのに、足の速いウサギと勝負するなんて考えてみればヘンだよね。
〇皆さん:ヘン!
〇新井:じゃあなんでカメは勝負する気になったのか、「カメの目的」を考えてみよう!「○○だから」というふうに考えていくとアイデアが出やすくなると思います!
――皆さん、一斉にプリントに書き始め、すぐに「書けた!」という声が聞こえてきます。
そして発表!いろいろなアイデアがどんどん出てきます。それがこちら↓
・すぐ寝るウサギだと思ったから
・ウサギのエネルギーは少ないと思ったから
(ウサギは足が速くてエネルギーを沢山使うから、最後まで走りきるのにエネルギーが足りなくなると思ったから)
・ウサギにバカにされて悔しかったから
・駆けっこが好きだから
・お散歩代わりにやってもいいと思ったから
・いい運動になると思ったから
・暇だったから暇つぶしで
・カメは明日コンテストがあってその準備運動になると思ったから
・眠いから目を覚ますために参加した
・山の上から転がりたかったから
・おいしいご飯をいっぱい食べたくて、走ったらお腹がすくと思ったから
・ボーとしていて気づいたら勝負することになってた
・実は落とし穴を掘っていたから
〇新井:いいですね いいですね!「まだアイデアあるよ!」っていう人いますか?
〇4年生の生徒さん:はい。カメは優しいので忖度して勝たせてあげようと思ったから。
〇新井:おぉ!
〇2年生の生徒さん:あのぉ、「そんたく」って何?
〇新井:えーと、忖度というのはですね……説明をお願いします。
〇4年生の生徒さん:忖度というのは簡単に言うと、相手の気持ちを考えて、やってあげること。この場合で言えば、カメが「ウサギは勝ちたいんだろうな」と思って、敢えて負けて、勝たせてあげようとすることです。
〇新井:そういうことです!
――「あぁそうなのか!」と頷く2年生の生徒さん。2年生と4年生。普段の授業ではあまりできない“学年を超えた交流”ができるのも、この時間のステキなところです。
そんなことを思っていると、以前参加してくれた6年生の生徒さんが飛び入り参加。新井の隣に座り、新井が進行しやすいようにサポートしてくれたり、“後輩”が発表するアイデアに反応して場を盛り上げてくれます。
こんな心強い“先輩”も加わり、学年を超えた交流&ブレストが続いていきます。
“自分で笑っちゃう現象”は発想力が高まっている証
*
ブレスト中、2年生の生徒さんが「はーい!」と元気よく挙手。でも、全然声が聞こえてきません。
〇新井:はいどうぞ。あれ?自分のアイデアで笑っちゃってる(笑)。
――この“自分で笑っちゃう現象”はキッズシナリオでよく起こります。それにつられて周りも笑い出し、より一層、和気藹々な雰囲気になっていきます。
“笑い”が落ち着いたところでいざ発表。
〇2年生の生徒さん:その日はウサギのコンテストもあったから、カメはそのコンテストに遅刻させるために引き受けた。
〇生徒さん:悪いカメだー!(笑)
〇生徒さん:でもカメってアタマいいっていうから考えそうだねー。
――そしてまた他の2年生の生徒さんが手を挙げますが、すでに笑っています。
〇新井:笑ってる笑ってる。いいよいいよ(笑)。何を思いついたのか教えてよ。
〇2年生の生徒さん:睡眠薬を飲ませようと思ったから。
〇生徒さん:黒すぎる!(笑)
〇生徒さん:怖すぎる!(笑)
――いつもご協力いただいている胡麻尻亜紀さん(シナリオ・センター在籍生/映画『15歳の総理大臣』監督・脚本ご担当)も「すごい発想!」とびっくり。こんな感じでブレストは大盛り上がり。
アイデアがたくさん出たところで、次に進みます。
〇新井:いま考えてもらったみたいに「主人公の目的」があると、観客・視聴者・読者は「この後どうなるの?」と先が気になります。
で、主人公がその目的を達成しようとして行動する。でも、すぐ達成しちゃったら面白くないよね?
――皆さん、うんうんと頷いてくれています。
〇新井:なので、主人公の目的を“邪魔”していきます。これが次にみんなに考えてもらうことです。カメが困るシーンを考えよう!実はこのカメ、名前があります。カメ吉と言います。キャラクターも考えてみました。
・名前:かめ吉
・性格:まじめ
・クセ:計画をすぐ立てる。口癖は「計画通りにいけば……」。
・憧れ性:なんでもコツコツがんばる。
・共通性:ハプニングによわい。熱いのが苦手。
〇新井:憧れ性っていうのは観客・視聴者・読者が「いいなぁ、自分もあぁなりたいなぁ」と思う部分。共通性は「あ、わかるなぁ~。自分と似てるなぁ」と思う部分。
では、こんなキャラクターのかめ吉を困らせてみよう。そのために、この3つを考えてもらいます。
・場所はどこ?
・かめ吉に何が起きる?
・かめ吉はどうする?
〇新井:考えるときに、さっきみんなに発表してもらった「目的」あるでしょ。どれか1つ選んで、「その目的を、かめ吉が達成しようとするけど……」っていうふうに考えてみるといいですよ!
――さきほどの「ブレスト」でエンジンがかかっているので皆さんすぐさま取り掛かります。2年生と4年生の生徒さん2人は、早くも「できた!発表したい!」と手を挙げています。
みんなが書けたところで、まずはこの2人から発表。
〇2年生の生徒さん:
・場所はどこ?→山の真ん中
・かめ吉に何が起きる?→ウサギに睡眠薬を飲ませたかったけどもう寝てた
・かめ吉はどうする?→逃げて頂上に行った
〇新井:おぉ!特に「逃げて頂上に行った」の「逃げて」っていうのがいいですね。かめ吉はハプニングに弱いから、ウサギが寝てるって知って、ちょっと慌てちゃったんだね。かめ吉のキャラクターがよく出てますね!
――2年生の生徒さん、「そうそう」と笑っています。次は4年生の生徒さんです。
〇4年生の生徒さん:
・場所はどこ?→“あらいか”の頭の上
・かめ吉に何が起きる?→ちっちゃくなる
・かめ吉はどうする?→寝てしまう
〇新井:“あらいか”って僕のことだよね?
〇4年生の生徒さん:そう(笑)。小さくなったかめ吉が何万匹もいっぱい、頭の上にいるの。
〇新井:イヤだよ、頭からカメが落ちてくるなんて恐怖だよ(笑)。
――この会話を聞いて、笑い崩れている生徒さんもいます。
〇新井:でも、「ちっちゃくなる」という突然のハプニングに「寝てしまう」っていうのが面白いね。
〇4年生の生徒さん:びっくりしすぎて寝ちゃったの(笑)。
――斬新な発想ですが、かめ吉のキャラクターをちゃんと考えたうえで、かめ吉を困らせています。他の生徒さんも、いろいろな「困るシーン」を考えてくれました。
全員の発表後、「また思いついた!」となんと2回目の発表をしてくれた生徒さんもいました!
〇新井:今回もみんな発想力フル回転だったね。面白いアイデアやシーンがいっぱい出ました!
今日やったみたいに、「主人公の目的」を作って、それを邪魔するような「困るシーン」を考えていくと、面白くなるでしょ?物語を作るとき、この方法を使ってみてね。で、次回もこんな感じでまた面白いシーンを考えていきましょう!
――「はーい!」という元気いっぱいの返事で無事終了となりました。
* * *
次回は6/8の実施を予定しています。新井が「今日は『ウサギとカメ』だったけど、次回やりたいもの何かある?」と聞いたところ、次々に「浦島太郎」「一寸法師」「ドリトル先生」「おやゆびひめ」という声が。
その中には「竹から生まれた竹太郎姫」という桃太郎とかぐや姫をミックスしたアイデアや、「あらいか法師」という新井(あだ名)と一寸法師をミックスしたアイデアも飛び出しました。「すごい発想力!」と感心する新井。最後の最後まで、みんなの発想力はフル回転でした。
さぁ、次回はなにをやるのでしょうか?またリポートいたしますのでお楽しみに!
※シナリオ・センターのブログで掲載している、これまで谷中小学校 放課後子供教室で実施した模様です。是非ご覧ください。
・「短時間でも映像は作れる!/子どもがのびのびと自己表現できる場」
・「小学校低学年の子どもたち、書くことがもっと好きに!@谷中小学校」
※その他、シナリオ研修の模様は「コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ」をご覧ください。
★「谷中小学校放課後子供教室ブログ」でも紹介していただいております。併せてご覧ください。
・高学年ビッグプロジェクト始動開始!!『シナリオプロジェクト』プログラム
キッズシナリオについて
シナリオ・センターは、1970年創立。優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に創設以来、700名以上の脚本家や小説家が誕生しています。
2010年から「日本中の人にシナリオを書いてもらいたい」という思いから、小中学校への出前授業として『キッズシナリオ』プロジェクトを開始。創作を楽しみながら、想像力と表現力が身つくカリキュラムを提供しています。
※キッズシナリオの活動をアシストくださる方、随時募集中です!
シナリオ・センターが小学校・中学校で実施しているキッズシナリオの活動を後押ししてくれるアシストの方々(個人・法人)を募集中しています。手弁当で実施しているので、アシストしてもらえるととても助かります!
ご興味のある方は、こちらをご覧ください。
>>https://www.scenario.co.jp/project/kids_assist/index.html