シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
映像シナリオを視覚障害の方が書く・・・できるんです。書けるんです。
昨日は39度を越すところもあったとか。体温が39度あったら寝込みますよね。みんなで寝込んでもおかしくない。(笑)
いやあ、ホントに暑い。お日様の元気さといったら尋常じゃない。少しはお休みくださいませ。
そんな中、朝から亀有へシナリオの講義に出かけました。前にも何回かこの日記にも登場されている視覚障害者の田村さんのご依頼で、視覚障害の方々に、映像のシナリオを書いてもらおうというもの。
悩みました。映像をどうイメージしてもらえばいいのか、頭の中だけで、確認や整理はできるものだろうか・・・など等。
ちょっとドキドキしながらお伺いしました。
視覚障害の方だけでなく健常者の方も含めて、12人ほどの方々がいらっしゃいました。
20分ほどで書いていただくシナリオワークショップと同じ形でやることにしたので、ちょっとシナリオのイロハをお話して始めました。
そのあと、文字ではなく口立てで、主な登場人物ふたりの設定、簡単な関係をお話しました。元恋人だった二人が、それぞれの新たな状況を抱えて表参道交差点でばったり出会う・・・さて、どういうシーンを創るかです。
お話しただけで、皆さんに書いていただきました。
シナリオ・センターにおいでくださる方と違って、ドラマや映画はお好きなようですが「田村さんが面白いというから」「本当は義理で来た」と言うくらいの方々です。(笑)
でも、でもです。私の心配はまったく杞憂に終りました。
見えないはずの方々のシナリオは、なんと鮮明にシーンが浮かび上がるんです。むしろ、見える方々より。
想像力というのは、すごいものだと改めて実感しました。
みえる、見えないではないのです。どれだけ視聴者にイメージを膨らますことができるシナリオなのかなんですね。とても勉強になりました。
視覚障害者の方が「音声ガイドでテレビをみているけれど、ガイドというよりは音声解説という感じで、うるさいし、ドラマのイメージを半減させられる」とおっしゃっていました。
「例えば、嘘か本当かわからない表情を役者さんがすることがありますよね。見える人は「おや?」と思いながら見るわけだけれども、音声ガイドは、そこを語っちゃうので、「おや?」ではなく「こういう気持ちなんだ」とわかってしまう。つまらないでしょ。推理小説の謎を話されちゃうみたいなもんですから」と。(笑)
山田洋次監督が映画「幸せの黄色いハンカチ」を例にとって、「目の不自由な方でも、音声ガイドで、黄色いハンカチが軒に所狭しとはためいているといわなくても、黄色いハンカチがたくさんはためいている音だけで、きちんとあのシーンを想像できる。余計なガイドはドラマを壊すだけだ」とおっしゃったというお話もきかせてくださいました。
音声ガイドは親切なつもりで、色々解説しているのですが、見えない方の立場に立って、どこまで語ればいいのか、見える者には想像できていないのですね。
なるほどを思いました。でも、そのどこまでをガイドすればいいかという線引きを見つけるのは、見える者にとってはとても難しい。
とすれば、視覚障害者の方にシナリオをお教えすることで、その線引きを見つけることができるのではないかと思いました。
映像を、見える方も見えない方も同じように楽しむことができるように、頑張ってみようと思います。
新たな挑戦を見つけました。どこまでできるかわかりませんが、積み重ねていけたら嬉しいです。
私は、「世の中にひとりも健常者はいない、誰もがどこかに障害を持っている」と思っているのですが、まだまだ何もわかっていない自分を知り、深く反省しています。