自分が子どもだった頃を思い出すと、机に向かって覚えたことよりも、お喋りの延長のように楽しみながら取り組んだことのほうが後々役に立った、なんてことありませんか?
では、遊びながら“学び”になるものって何があるでしょうか?
その1つが、シナリオです。
「シナリオをイチから自分で考えて書くの?難しくない?」と思われた方。いえいえ、まずはお馴染みの昔話を使って、シナリオを書いてみるのです。すると、楽しみながら「物語の作り方」を学ぶことができます。
その模様を広報の齋藤がリポートいたします。
=今回の概要==================
・サービス名:「シナリオプロジェクト」(今回で実施8回目)
・目的: シナリオ作り
・対象:NPO法人 放課後NPOアフタースクールさま
台東区立 谷中小学校 放課後子供教室(3~5年生)
・時間:約1時間
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
========================
楽しく学ぶ物語の作り方①
昔話の主人公の気持ちを考えてみよう!
今回は、いつも使わせていただいている教室ではなく、「和室」での実施。畳の香りに癒されながら、まったりモードになっている担当の新井。
いつもご協力いただいている胡麻尻亜紀さん(シナリオ・センター在籍生/映画『15歳の総理大臣』監督・脚本ご担当)も「新鮮ですね!」とワクワク。
「今日はココなんだ!」と生徒さんも続々入ってきました。
〇新井:今日は『かぐや姫』をやります。まずは、このお話をみんなで読みます。
【芝刈りに出掛けたおじいさんが竹藪で光る竹を発見。その竹を切ると、中に可愛らしい女の子がいました。「かぐや姫」と名付け、おばあさんとともに大切に育てていきました。美しく成長したかぐや姫は、5人の男性から結婚を申し込まれます。5人はかぐや姫を我が物にするべく奮闘するものの、誰も達成できず、結局、誰もかぐや姫と結婚することはできませんでした。かぐや姫は帝からの求愛さえも断り、誰とも結婚しようとしません。そして十五夜が近づいたある8月の満月の夜に、月の使者たちが迎えに来て、かぐや姫は月へと帰ってしまうのでした】
――新井が読んでいる最中、生徒さんたちから絶妙なタイミングでツッコミが入ります。
「竹を切っちゃうって一歩間違えたら大変だよね、中に人がいるのに」
「いいところで切ったよね」
「おじいさんがしたことって誘拐だよね」
「勝手に育ててるけど出生証明書とかどうするんだろう?」
〇新井:(笑)。ほんとにそうだね。ということで、いまみんながツッコミを入れてくれた竹を切るこのシーンについて考えてもらいます!
このおじいさんになったつもりで考えてほしいんだ。おじいさんがね、ひとりっぼっちで竹藪に入るのよ、怖いじゃん!でさ、竹が光ってるんだよ!冷静に考えてみると、この話さ、怖いよね。
〇生徒さん:(笑)。言われてみれば。
〇生徒さん:私なら、その光っている竹を切ってランプにする!
〇新井:えー?そんな余裕ある?一人でいてさ、竹が光ってんだよ。例えばさ、この部屋のあの柱が光ってたらどうするよ。
〇生徒さん:(笑)。怖いかも。
〇新井:でしょ?
ということで、このプリントを見てください。
【たけやぶのなか、ひとりでいるときに、ひかる竹をみつけたおじいさん。おじいさんはどう思った?】
このときのおじいさんの気持ちになって考えみよう!
――皆さん、一斉に手を動かします。イラストも一緒に書いてくれている生徒さんもいます。
それでは発表。皆さんが考えてくれた「おじいさんの気持ち」がこちら。
・やばいな、こわい。おばけが出た。早く家に帰ろう。逃げよう。こんな竹ある?仲間に知らせよう、何これ!?
・こんな竹ある?何か中に入ってる?金類かな?ひとりじめできるかも。
・ヤバヤバ。火じゃない?火以外、光はなくね?マジ!ノーベル賞いけんじゃね?婆さん連れてさ!
・こわー。中に何がいるの?おばけ?こわー、早く帰りたいー。怪奇現象。テレビの取材が来るかも!
・なんで1本だけ光っているんだろう?怖いな。気になるな。
・そのままボーとして、間違って竹を切ってしまった。
――皆さん、誰一人かぶることなく、さまざまな「おじいさんの気持ち」が出ました!
〇新井:いいねいいね!なんとなく、みんなの中で“こんな感じのおじいさん”というキャラクター(性格)のイメージがあるんじゃないかと思います。だから今みんなが考えてくれたおじいさんの気持ちに、おじいさんのキャラクターが出てるね。
楽しく学ぶ物語の作り方②
登場人物の気持ちを考えていくとキャラクターも出来上がっていく
〇新井:じゃあ、次に行くよ。この物語は、おじいさんとかぐや姫が出会わないと始まらないよね。おじいさんが竹を切って、かぐや姫が出てくるわけだから。
では、おじいさんとかぐや姫の「一番最初の会話」ってどんなだろう?それをシナリオ形式で書いてみよう!シナリオを書くときは、「柱(=場所のこと。例:〇山の中(夜)」「ト書(=状況・人物の動作)」「セリフ」を書いてね。
――皆さん執筆中。さて、どんなシナリオが出来上がるのか、新井は待ちきれず少しウロウロ。ある生徒さんの作品が目に留まりました。
この生徒さんが執筆中のシナリオがこちら。
おじいさん「おまえは何者なの?」
かぐや姫「あなたこそ誰ですか?」
おじいさん「まあ、こわいけどとりあえず家くる?」
かぐや姫「とりあえず、住むとこ、ないので行きます」
おじいさん「きていいよ」
〇新井:面白いね!このかぐや姫ってどんな人なんだろう。おじいさんに「きていいよ」と言われたら、次になんて言うかな?何か聞くかな?
――すると、この生徒さんは、こう書き足していきました。
かぐや姫「家の中はきれいなんですか?」
おじいさん「あんまりきれいではないよ」
かぐや姫「じゃあ、わたしが家をきれいにします」
おじいさん「いいのか?」
かぐや姫「いいですよ」
おじいさん「ありがとう」
――このセリフを見た新井は、
〇新井:おお!セリフから、かぐや姫のキャラクターが分かるね!
〇生徒さん:どんな家なのか、あと、きれいかどうかも気になると思う(笑)。それと、おじいさんは芝刈りをしたり竹を切ったりしているから、そんなにお金持ちではないのかも。だから家もそんなにすごくはないかな。それから、かぐや姫は性格が悪かったら、男の人5人も会いに来ないと思う。魅力的な人のはず。
〇新井:すごい!いいねいいね!「わたしが家をきれいにします」っていうセリフでかぐや姫の魅力みたいなものも伝わるね。
――この作品を皆さんの前で発表してもらった際、他の生徒さんから「面白い!」「たしかに、きたない家はやだ」「私が書いたおじいさんは悪い人なんだけど、このおじいさんはイイ人だねー!」といった感想がたくさん出ました!
他の生徒さんの作品も面白いものばかり。例えば「このかぐや姫は赤ちゃんなのでテレパシーで喋っています」という設定で書いてくれたり、「かぐや姫は魔法も使えるし自由自在なので1時間で5歳くらい成長するんです」という設定で書いてくれた生徒さんもいました。
〇新井:いやー、みんなそれぞれの『かぐや姫』オリジナルストーリーが出来上がりましたね。それから、おじいさんやかぐや姫の「気持ち」も考えながら書いてもらったので、おじいさんやかぐや姫の「キャラクター」がセリフやト書に出ていましたね。
こうやって、お馴染みの昔話を使って考えていくと、「物語ってこうやって作ればいいんだ!」ということが分かったんじゃないかなと思います!
――皆さん、うんうんと頷いてくれています。
初めての和室で、なんだかみんなでまったりと盛り上がり、あっという間に終了の時間が来てしまいました。すると「次いこう!」「シナリオと絵、もっと描きたい!」というノリノリの声が。
「今日はもう時間なので終わりなんだけど、じゃあ次回は何をやろうか?」と新井。次回7月の内容をみんなで相談。それが終わると「もう帰るの?」とまたもや嬉しい反応をいただいた新井でした。
帰り際には「今度、オリジナルのシナリオを持ってきます!」と言ってくれた生徒さんもいました。この空間や、物語を書くことを、皆さんに楽しんでいただけて、とっても嬉しいです。
また次回の模様もご紹介しますのでお楽しみに!
※シナリオ・センターのブログで掲載している、これまで谷中小学校 放課後子供教室で実施した模様です。是非ご覧ください。
・「短時間でも映像は作れる!/子どもがのびのびと自己表現できる場」
・「小学校低学年の子どもたち、書くことがもっと好きに!@谷中小学校」
★「谷中小学校放課後子供教室ブログ」でも紹介していただいております。併せてご覧ください。
・高学年ビッグプロジェクト始動開始!!『シナリオプロジェクト』プログラム
* * *