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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

作家の目

戦争がもたらすものを撮る(泉町書房刊)

踏み絵

シナリオ・センター代表の小林です。8月もわずかになりました。
コロナも頑張り続けているし、ウクライナ侵攻は終わりが見えないし、神国日本はどうも統一教会の神様だったらしいし、悪い目が一番際立っている夏のような気がします。
何が一番ひどいかといえば、どれもこれも改めようとか解決に向けて手をくだそうとしないことだと思うのです。
ひたすら、先生のお小言が頭の上を通り過ぎているのを待っている学生のように、世論の逆風を通り過ぎるのを待っているお上たちを神風で飛ばして欲しいくらいです。
岸田内閣のズブズブの人事と何もしなさに支持率は激減りです。
でも、誰かがダメになると、それまでろくでもないといわれていた人が、とてもいい人のように急浮上するから、世の中は面白い。
菅元首相が「選択的夫婦別姓の導入を進めるべき」と発言し、さすが菅元首相といわれているのだそうです。あれだけめちゃめちゃに言われていた人がです。
最も「反統一教会的」な政策の一つの「選択的夫婦別姓」を推進することで、自身のクリーンなイメージを作れるわけで、菅元総理の上手さが際立つという声もありますが、それでも、それで進められるならなによりかも。
「選択的夫婦別姓」は、統一教会と決別するかの踏み絵になりそうですね。(笑)

戦争がもたらすものを撮る(泉町書房刊)

「島守の塔」の映画監督、出身の五十嵐匠監督の本が出ました。
「戦争がもたらすものを撮る~沖縄戦映画『島守の塔』監督・五十嵐匠の軌跡~」(泉町書房刊)
この本には、五十嵐監督の出生から、シナリオ・センターで学んだ逸話、映画監督になるきっかけ、監督が一躍有名になった作品「SAWADA」「地雷を踏んだらサヨウナラ」、劇場映画デビューの室田日出男主演の「津軽」から降板した「天国までの百マイル」、「みすゞ」「HAZAN」「アダン」「十字架」「二宮金次郎」「島守の塔」を通して、五十嵐監督の作家の目が書かれています。
作品にかかわったプロデューサーやスタッフ、各作品で出会った方々のインタビューも掲載され、五十嵐監督を掘り下げています。
この本を読むと、様々な人々との出会いが今の五十嵐監督の作家性を作り上げていったのだということを感じました。

世界的に有名な戦場カメラマン沢田教一を振り返ったドキュメンタリ「SAWADA」で、沢田さんと最後まで一緒にいたAFPの女性記者ケイトの言葉「彼はイデオロギーに汚されない純粋で公平な目でファインダーを覗いていた」
コンビを組んでいたレオン記者の「サワダは戦争を撮ったのではなく、戦争がもたらしたものを撮ったんだ」
そして、取材が許されていないアンコールワットに単独潜入し消息を絶ったカメラマン一ノ瀬泰造を描いた「地雷を踏んだらサヨウナラ」。
「僕は戦争映画を撮りたかったんじゃないんですよ。
泰造はカメラで生きていた。じゃ、君は本当の人生を生きているか、生きるために何をしているのかと。
泰造がカメラを手に戦場を駆け抜けた日々を通じて、つまり、泰造の死を通じて生きることを問いかけたかった」と五十嵐監督は語ります。
五十嵐監督の作品は、どの映画も五十嵐監督の「生きる」ことへの問いかけ、「どう生きるか」と観客に、ご自分自身と問いかけていらっしゃるのではと思っていたのですが、前述の言葉にわかった気がしました。
今作の「島守の塔」は「命どぅ宝」。戦争を描きながら、命の大切さを訴えています。

創作をするものは、どんな形でも、自分の目(視座)を持っていなければならないと思います。
何を描くかは、ストーリーではありません。描きたいものはなにか、それを作者はどうみていて、どう考え、表現するのかです。
常に、作家はどう想い、どう考え、どう伝えたいかを持って、物事と対峙していかなくてはと思います。
ただ「黒白」「右左」「善悪」で割り切れるという単純なものは何一つありません。
だからこそ、自分の想い考えをしっかりと持つこと。
作家の目を、たくさんの人との出会いから、たくさんの文化芸術、書物や映画などから、育ていきましょう。

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