「物語を書いて発表できる場所」が「サードプレイス」になれば
昨年、足立区東和地域学習センターさんで実施させていただいた「シナリオを書こう!~面白い物語の作り方~」。
>>その模様はこちらから
「苦手な国語を克服!小学生にもお薦めな勉強法はシナリオ@足立区東和地域学習センター」
大変うれしいことに、あれから度々「シナリオの講座、次回はいつやりますか?」といったお問い合わせをいただいたとのことで、今年も実施することに!
=今回の概要==============
・サービス名:「シナリオを書こう!~面白い物語の作り方~」
・目的:物語を書いてみる
・対象:足立区地域の小学生
・時間:1~3年生向け60分、4~6年生向け90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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対象は足立区地域の小学生。ですので、参加者の皆さんが“同じ学校”とは限りません。いろいろな学校の生徒さんが参加してくれました。
同じ学校の子が沢山いると、クラスで定着している“いつものイメージ”があるので「そんなこと言っちゃって」と笑われたり、からかわれたりすることもなくはありません。
でも違う学校の“初めまして”の関係であれば、のびのびと自分の書きたいものを書いて発表できます。
足立区東和地域学習センター所長の加藤さんは、「ここが “のびのびと自分を表現できる場所”になればいいなと思っているんです。そういうことをできるのが、公民館ならではの良さだと思いますので」と仰っていました。
現に、終了後に書いてもらったアンケートには「思ったことを発言できて良かった」という感想がありました。
少し前に、「サードプレイス(=第3の居場所)」という言葉が注目されましたよね。これはアメリカの都市社会学者 レイ・オルデンバーグの著書で提唱された言葉。その概念には様々な条件が含まれているようなのですが、日本では「家庭や学校・職場以外の、居心地のよい場所」という意味で使われています。
今回参加してくださった皆さんは、楽しそうにシナリオを書いて発表してくれました。その様子を見ていて “物語を書いて発表できる場所”が、子どもたちにとっての“サードプレイス”になればいいな、と感じました。そんな広報の齋藤が、当日の模様をリポートいたします!
小学1~3年生の部
イラストをもとにキャラクターを作ってシナリオの中で動かしてみよう!
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今回担当するのは講師の唐下です。
〇唐下:今日は「こうすれば面白くなる!」という方法をお伝えします!どうすればいいのかというと、まずは登場人物の「キャラクター」をつくります。
〇唐下:このイラストにあるヒーローを見てください。このヒーローの名前・年齢・特技・苦手なもの・くちぐせ・性格、を考えてもらいます!
――皆さん、黙々とキャラクターをプリントに書き込んでいきます。
――出来上がったら発表。続々とアイデアが出ます↓
――そして、こちらのイラスト(ヒーローの相棒)のキャラクターも、先ほどと同じように設定。
――この2人が登場するシナリオを書きます。
〇唐下:この2人をシナリオの中で動かしてみよう!どんな場面かというと、緊急事態が発生して本部からヒーローに「街の人を助けに行ってくれ!」と指令が出ます。そのとき、このヒーローはどう乗り越えていくのか。ポイントは、さっき設定してもらったキャラクター。このキャラクターなら何て言うかなと、「キャラクターらしいセリフ」を書いてくださいね。ヒーローの相棒も同じように考えてみてください。
――コツコツと鉛筆の音が教室に響きます。
――完成したら発表。
発表してもらったこちらの女の子のシナリオでは、早く出動したい“ヒーローブラック”に、相棒の“ミスターD”は「朝ごはんを食べてないんだ。たっぷり6000グラム食べるぞ!」と答えます。
〇唐下:おお!ちょっとせっかちなキャラクターのヒーローブラックと、食いしん坊キャラのミスターDとのセリフのやり取りがすっごく面白いね。「こういうキャラクターです」と前もって聞いていなくても、セリフだけで2人がどんな人物なのかがよく分かります!
――周りの皆さんからもパチパチパチと拍手です!
〇唐下:今日やったみたいに物語を作るときは、登場人物の「キャラクター」考えて、そのキャラクターらしさが出るセリフを考えてみてくださいね。そうすると、「この後、どんなことを言うんだろう?するんだろう?」って引き込まれるような面白い物語ができますよ!
終了後、ご見学いただいていたお母さまより「うちの子は表情にあまり出ていなかったかもしれませんが、とっても楽しかったそうです(笑)。私が子どものときもこういう機会があればよかったのに、と思いました!」とお声掛けいただきました。
また、参加してくれた皆さんからもこのような感想をいただきました↓
・シナリオを書けて良かった。
・文章を書けたことが良かった。
・やさしく教えてもらえて良かった。
・物語の作り方をちゃんと教えてもらえて良かった。
・登場人物のキャラクターを自由に設定できて楽しかった。「シナリオを書こう2」をやるなら参加してみたい。
・登場人物のキャラクターを考えるのが楽しかった。
――皆さんに思いっきり楽しんでもらえて何よりです。そしてお次は、小学4~6年生の皆さんをお迎えします!
後半:小学4~6年生の部
発表中にはアドリブも!最後の最後まで面白いシナリオを追求
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〇唐下:今日やるのは「もしも桃太郎」。元の『桃太郎』には描かれていないことをみんなに考えてもらいます。それは、鬼はなぜ村を襲ったのか。元のお話には襲った理由が描かれていないよね?
――うんうん、と皆さん。
〇唐下:正解も不正解もないので、鬼が村を襲った理由を自由に発想してください。今から順々にあてていくので、思いついたアイデアを発表してね。これをブレスト(ブレインストーミングの略)といいます。何周もするから、どんどんいくよ!
――ここから怒涛のブレストがスタート。1周目、2周目、そして3周目も、皆さん頑張ってアイデアを出してくれました。出たアイデアの数はなんと「27」。アイデアの一部がこちら↓
・宝物があると聞いて探しに来た
・食料が尽きたので盗みに来た
・住んでいるところが狭かったから土地を分けてほしかった
・鬼が嫌いな「節分」をなくすため
・昔、人間にイヤなことをされたので仕返しするため
・人間と友達になろうとしたのに襲ってしまった
・人間の世界を研究したかった
〇唐下:面白いアイデアが沢山出ましたね!では、シナリオを書いてもらう前に、物語を作る上でのポイントを1つ。それは、「面白い物語を作るために大切なのは、人間を描くこと」。どういうことかというと、登場人物の「キャラクター(性格)」と「気持ち」を描くということです。
〇唐下:このポイントを踏まえて書いてもらうのが、鬼が村を襲う前日に開いた「鬼会議」のシーン。登場人物は「赤鬼・青鬼・黄鬼」。それぞれのキャラクターは、赤鬼は怒りっぽい性格。村を襲う気満々です。青鬼は気が弱い。なので村を襲いに行きたくありません。黄鬼は面倒くさがり。だから村を襲うか襲わないかどっちでもいいと思っています。ブレストで出してもらった「村を襲う理由」を使って、どんな鬼会議が繰り広げられたのか書いてください。
――シナリオ作成に入る前に、基本的な書き方をご紹介。
〇唐下:シナリオは、「柱(=場所・時間帯)」「ト書(=動作・表情)」「セリフ」で構成されています。今日、主に書いてもらうのが「セリフ」。「この鬼のキャラクターだったらこんなこと言うな」と考えてみてくださいね。
〇唐下:で、もし余裕があれば、「ト書」も書こう。「この鬼のキャラクターだったらこんなことするだろうな」というのを考えてみてね。
――書き終わったら全員発表。例えば、こちらの女の子はこんなふうに書いてくれました。
赤鬼「おう!とにかくやっちまおう」
黄鬼「ZZZ」
座布団を枕代わりにして寝ている黄鬼。
青鬼「……別にやんなくてもよくね?だって何にもされてねーし」
少し気まずくなる赤鬼。
赤鬼「う゛っ……で、でも!黄鬼は寝てるからやるってことで、いいってことだよなっ!」
青鬼「えー!寝てるってことは、やんないってことかもしれないじゃん?なぁー黄鬼?」
全員、気まずくなる。
黄鬼「ZZZ」
ぐっすり寝ている黄鬼。
赤鬼「じゃあ、人間からもらう宝の分け前、青鬼の分はナシってことでいいの~?」
青鬼「う゛っ……」
しぶしぶ頷く青鬼。
赤鬼「んじゃ、明日やるからなっ」
黄鬼、寝ながら“OK”と指サイン。
――皆さん、「おー!」と拍手。「セリフだけじゃなくて、ト書からも鬼のキャラクターが伝わってきた!」「黄鬼が最後は結局OKするというところや、それを寝ながらやるというのが黄鬼らしくて面白かった!」など大絶賛。
〇唐下:みんなも言ってくれたように、セリフやト書きから鬼のキャラクターがよく出てたよね。あと、黄鬼が「OK」ってセリフで言うんじゃなくて、手のアクションで表現しているところもよかったです!
――これらの感想を受けて、本人は「最初、黄鬼のセリフが少なかったので、村を襲いに行くのか行かないのか、伝わりづらいかなと思って、最後の最後に黄鬼のト書を足しました。みんなにイイ!と言ってもらえて良かったです」とコメント。
なんと、最後のト書「黄鬼、寝ながら“OK”と指サイン」は発表中にアドリブで考えた文章とのことでした。即興で考えられるなんてすごいですよね。
こちらの女の子だけでなく、発表の最中にこういったアドリブでト書を足してくれていた子も何人かいて、最後の最後まで「面白いシナリオにしたい!」という熱い想いが皆さんから伝わってきました!
そんな皆さんに、最後に唐下がこうメッセージ。
〇唐下:みんな本当に、ものすごい完成度でびっくりしました!面白い物語を書くコツをしっかりつかめたんじゃないかなと思います。最後にまとめです。
「登場人物の性格によってセリフは変わる。セリフや行動にはかならず登場人物なりの事情がある」。
ブレストのときは1人の鬼の事情(=村を襲う理由)を、シナリオを書いてもらったときは鬼全員の事情を考えたよね。こんなふうに、今度自分で物語を作るときも、キャラクターを作ってから、そのキャラクターならではの事情を考えてセリフやト書を書いてくださいね。
――帰っていく皆さんの後ろ姿からは達成感のようなものが感じられました。それくらい、熱量を感じた90分でした!皆さんからはこのような感想が↓
・ニックネームや名前で呼んでもらえたのが楽しかった。
・『ももたろう』という分かりやすい物語を題材にしてくれたのが良かった。
・物語の一部を自分で書けたところが面白かった。
・簡単で楽しかった。
・みんなが考えたシナリオをみんなで発表して、感想を言い合うところが良かった。またシナリオを書きたい。
・シナリオをどうやって書くか、どうやったら面白いかを知れて楽しかった。またシナリオの講座をやってほしい。
・みんな発表できたのが良かった。他の子の感想も聞けて面白かった。
・他の人の意見を聞けたところが良かった。
・他の子から感想をもらえたり、ヒロくん(=唐下)に良かったところを教えてもらえて嬉しかった。
・思ったことを発言できて良かった。
* * *
いかがでしたか?子どもたちがのびのびと表現していることがお分かりいただけたのではないかと思います。
シナリオ・センターではこういった、子どもたちが学校以外で楽しく学べる場を少しでも多く作れたらと思っています。今回のような“キッズシナリオ”の他にも、小学5.6年~中学生向けオンラインクラス「考える部屋」も実施しています。今後、3期生を募集予定ですので、ご興味ある方 はご検討いただければと思います!
※ご参考までにこちらの記事もご覧ください。
・小学5・6年生、中学生向けオンライン創作講座『考える部屋』まとめ
・観客・視聴者・読者が 「おもしろい!」と思うシーンを考える/『考える部屋Ep6』
・『考える部屋』EP12 中間発表会/「物語を書くのが好き!」な子どものチカラ