有終の美
シナリオ・センター代表の小林です。今日はちょっと暑いけれど秋っぽい感じがします。
中秋の名月もきれいだったけれど、昨日の十六夜も、秋風とともに風情がありました。
金曜日に、加山雄三さんの「THE LAST SHOW」に行ってきました。
今年でライブ公演は引退される加山雄三さん、見納めです。
9月9日のラストショーは、ライブビューイングで全国の映画館でも見ることができるようにもなっていて、一体どのくらいの人たちが加山雄三に酔いしれたのでしょう。
私は、長年のファンである友達が必死にチケットを取ってくれたので、国際フォーラムの生ライブに行くことができました。
いやあ、会場は、私のようなジジババ、ジジババで溢れかえり、トイレ満員。(笑)
とはいえ、案外若い方が多く、いつも先取りをする若い心を持つ雄三さんはさすがと思いました。
2時間半、ひとりで歌いまくる加山雄三さんは御年85歳。2年前の8月に小脳出血を起こし口もうまく回らなくなったというのに、懸命なリハビリとトレーニングで完全復活を遂げました。
歌唱力のすごいこと、若い時よりずーっとうまいし、味があって素晴らしい。
これで終わるのはもったいないとは思いましたが、引き際も大切ですから。
ファンには85歳になっても颯爽と歌い続ける姿を目に焼き付けておいて欲しいだろうし、長いファンのジジババたちは、きっと彼を目標に頑張ろうと思いながら帰ったと思います。私も、まだ終われないと思いましたもの。(笑)
時代は、移り変わっていきます。
古きよきものは大切ですが、古いだけの悪しき伝統や繋がりはサッサと絶たないといけません。
終わりよし
加山雄三さんの引き際の見事さは、拍手喝采ものですが、終わりって大事ですよね。
7月期は最終回を迎えたドラマが増えています。どんな風に感じられたでしょうか。
ドラマ、映画の終わり方について、新井一はこんな十則を作っています。
「結末の十則」
・事件はここではもう起きない
・余韻のある終わり方が望ましい
・連続物の場合は期待させるものが欲しい
・最後まで葛藤を持たせる
・最もふさわしい場所を選べ
・不愉快な気持ちになるものは出さない
・映画の帰りにゆっくりお茶でも飲みたくなるもの
・象徴的なもので締めるのもいい
・映画はロング、テレビはアップで
・音、音楽を効果的に
「ああ、また見たいな」という気持ちを視聴者、観客に持ってもらわなければなりません。
ドラマや映画で、余韻を持たせるにはどうしたらいいかというと、終わりさえうまく締めくくればいいというものではありません。
余韻の元は登場人物への共感です。主人公にどれだけ共感するかがポイントになってきます。
それには、最初にキャラクターがしっかりとできていること、そして、ドラマの中で貫通行動ができているかです。
キャラクターがぶれると「え~、こんな人だったの?」「こんなことしちゃうの?」と白けてしまいます。そんな話題のドラマもありますね。
いい人に描く必要もハッピーエンドにする必要もありませんが、主人公に共感できなくて何に魅力に感じるのでしょうか。
終わりよければすべてよしという諺がありますが、ドラマに必要なのは、一番最初のしっかりとしたキャラクターづくりです。
「ラストシーンをこんな風にしたいなぁ」と思ったら、ストーリーではなく、キャラクターを考えてください。