国葬
シナリオ・センター代表の小林です。またまた台風がこの三連休を目指してやってくるとか、困ったものです。
何しろ最近の台風はすぐに巨大化するので、本当に要注意です。皆さん気を付けてくださいね。
エリザベス女王の国葬参加には、世界中の首脳がこぞって弔問を即表明したのに、日本の国葬には、主要な人はわずかしかいらっしゃらないそうです。
それも最友好国のアメリカでは、バイデン大統領は、エリザベス女王が亡くなったその日に弔問表明されたけれど、安倍元首相の国葬には、ずいぶん前から外務省がお願いしていたにもかかわらず、やっと先週ハリス副大統領が弔問してくることになったとか。
思ったほど海外から人が来ないので、急に人集めのために元議員に速達で招待状を送ったとか、色々噂も飛び交って国を挙げて大恥をかくのではないかと心配の声も上がっています。
私は国葬に反対ですが、「本物の国葬」とかがSNSでトレンド入りするなど、品格が問われているようで、さすがにちょっと日本人として悲しいです。
エリザベス女王の国葬があって、世界の首脳の皆様はたいへんだから、こちらは遠慮して国葬は取りやめますっていうのはどうでしょうか。日本が大切にしてきたのは恥を知る文化ではなかったでしょうか。
エフィラは泳ぎだせない
本科にいらしていた五十嵐大さんが、ミステリー作家としてデビューしました。
「エフィラは泳ぎだせない」(東京創元社・ミステリフロンティア刊)
耳の聴こえない父親と母親。新興宗教に没頭するあまり、友達付き合いにまで介入してくる祖母。元「ヤクザ」の祖父――。
いわゆる「ふつうの家族」像とは、およそ程遠い家族に囲まれ生きてきたライター・五十嵐大さん。
2020年自身初のエッセイ本『しくじり家族』(CCCメディアハウス)を刊行し、次に「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』を書かれ、話題を呼びました。
五十嵐さんは、社会的マイノリティの人たちが抱える問題を掘り下げる取材姿勢で、幅広い共感を呼んでいますが、それはご自分自身の家族の在り方が原点のようです。
そんな彼がミステリデビューです。
宮城で暮らしている知的障害の兄聡が突然の死。
自殺として片づけられるが、弟で東京でフリーライターをしている衛は、その自殺に疑問を持つ。
母を亡くし、知的障害の兄が嫌で、高校を卒業すると兄から逃げるように東京にでてきた衛。
父と伯母妙子に兄を任せ7年も故郷に帰らなかった。
知的障害の兄を大事にしてくれていた幼馴染百合とその母皐月、聡を取り巻く人々の間で、兄の死の真実を知ろうとするのだが、兄の死の謎にたどり着いたとき、そこには・・・。
五十嵐さんは、ミステリですが、周囲の者達によって一人の人間として見做されず、いつまでも幼生のまま広い海に泳ぎだすことができなかった聡を海月の幼生エフィラに例えて、世間のむごさ、人間の弱さをも描き出しています。
障害者に向ける目は、本当はどうなのだろうと私たちに問いかけています。
そこには、五十嵐さんの生い立ちが強く関わっているのではないかと思うのですが、蛭田直美さんが描かれた数々の賞を受賞したドラマ「しずかちゃんとパパ」も生まれつきの聾唖の両親から生まれた健常者の娘の生き方を描いていました。
五十嵐さんと同じ状況の「しずかちゃんとパパ」の主人公と、ミステリの主人公の衛、根っこは一緒なのだと思いながら読ませていただきました。
この本は、上質なヒューマンミステリというのでしょうか。
謎解きだけでは終わらない、ふつうの人間の心の闇を描いています。