「独学でシナリオを勉強しているけどなかなか……」というかた必読!
「面白いシナリオを書けるようになりたい!」ということで、先日、早稲田大学映画研究会の皆さんに向けたシナリオ研修を実施しました。
=今回の概要==================
・サービス名:「面白いシナリオを書けるようになろう」(全2回)
・目的: シナリオ作り
・対象:早稲田大学映画研究会さま
・時間:各90分
※大学生向けカレッジシナリオ詳細
https://www.scenario.co.jp/project/college/
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終了後のアンケートでは、このような感想をいただきました。
・脚本には基本的な“組み立て方”があることを学べた。
・シナリオを考える上での自分の悩みの解決の仕方を知ることができたから。
・夏休み中にいくつかシナリオコンクールへ応募してはいるが、毎回面白い脚本が書けず悩んでいたので、今回の講義は非常に参考になった。
・自分の脚本を見直すことができた。
・新入生企画の脚本制作に苦戦していたが、今回シナリオの基本を学び、自分の課題や推敲の方法を会得できた。
・シナリオの基礎的なことについて学ぶことができて良かった。
・短い時間でしたが、学ぶことがとても多かった。例えも分かりやすかった。
この感想をご覧いただいて「あっ」と思われた方もいらっしゃるのでは?
例えば、「独学でシナリオを勉強していて、シナリオの書き方に関する本も読んでいるのに、面白いシナリオが書けない」という方。
感想で書いていただいているように、脚本には基本的な“組み立て方”があり、これを知っておけば、シナリオの悩みを自分で解決できるようになります。
では、例えばどんなことを押さえておけば、面白いシナリオが書けるようになるのか。早稲田大学映画研究会の皆さんに向けて実施した模様の一部を広報の齋藤がリポートいたします。
講義を通してシナリオのお悩みを解決
担当の新井は教室に入るなり後悔。
〇新井:あ!映画のTシャツ着てる人がいる!映画研究会だもんね、僕も着てくれば良かった……。
――そうです。ここにいる皆さんは映画が大好き。面白い映画を作るために、シナリオ作りでいろいろ悩んでいるんだとか。
〇新井:面白いシナリオを書けるようになるために、今日やる1回目は「構成(起承転結)とキャラクター」を、2回目は「柱・ト書・セリフ」についてお伝えします。
イメージとしては、“抽象的なこと”を今日やって、それをシーンにどう落とし込むかという“具体的なこと”を次回やる、という感じかな。
映画撮ったことあるよ、という方はどのくらいいる?あ、ここでは3人くらいか。聞いたところによると、今日参加してくれたのは1年生が多いみたいだから「まだ撮ったことがないけど不安なことがある」っていう方もいると思います。
例えばどんな悩みがありますか?
――すると、いろいろとシナリオに関するお悩みが出てきました。
――新井は「構成とキャラクター」の講義を通して、「さっき出たあの悩みは、ここの部分をこうすると解決できますよ」とお伝えしていきました。
こちらのブログでは、「あ、それ自分も分からない」と特に皆さんが大きく頷いていたこちらのお悩み、
「登場人物のキャラクターを設定するとき、どこまで掘り下げて考えればいいか分からない」
を解決した模様をご紹介します。
「キャラクターはどこまで掘り下げて考えればいいか」を解決
*
〇新井:登場人物のキャラクターを作るとき、何が必要だと思う?
〇生徒さん:観客が共感できるところ。人間味っていうんですかね。
〇新井:おー、いいとこ突きますね。これを「共通性」と言います。登場人物のキャラクターを作るときは「二面性」を持たせます。その2つの面というのが、「憧れ性」と「共通性」。
憧れ性:視聴者・観客に「自分もああなりたいなぁ」と思わせる部分
共通性:視聴者・観客に「自分と似ているなぁ」と思わせる部分
〇新井:具体的にどうやってキャラクターを作っていくのかと言うと、まずは登場人物の「性格」を決めます。考え方としては「〇〇すぎる性格」という風にするとやりやすいと思います。これはシンプルに作ってね。例えば「真面目すぎる性格」とか。この性格ならどんな共通性と憧れ性があるかを考えます。
ちょっと何か思いつくことありますか?
〇生徒さん:憧れ性は「何でも完璧にこなす」とか。
〇生徒さん:共通性は……「融通がきかない」とかですかね。
〇新井さん:いいですね!
この憧れ性と共通性が、キャラクターの“軸”だと思ってください。
で、「抽象的」から「具体的」にキャラクターを深めていきます。
こういう憧れ性があると、どんなことが起こるのか。
こういう共通性があると、どんなことが起こるのか。
こんなふうに、憧れ性と共通性に基づいたエピソードを考えます。これが、登場人物のキャラクターを深める方法です。
この方法を知らないと、さっき出た悩み「登場人物のキャラクターを設定するとき、どこまで掘り下げて考えればいいか分からない」という状態になっちゃう。
〇生徒さん:二面性ということなんですが、“二面”だけでいいんですか?
〇新井:はい!“多面”になると訳が分からなくなっちゃうんですよ。
〇生徒さん:たしかに、設定が多すぎると書いていて混乱してしまいますね。
〇新井:そうなんですよね。それから、“二面”だけとはいえ、憧れ性と共通性を軸に具体的に設定していくと、設定したことを全部伝えたくなっちゃうことがあるんですよ。でも、その物語に必要なことだけを書いてください。
そもそもキャラクターを設定するのは、「こういう性格だからこういうこと言うよね、こういうことするよね。だからこういうことが起きるよね」ということを作り手自身が把握するためにしています。
例えば、『となりのトトロ』のメイとサツキのお父さん草壁タツオがどんな仕事をしているか詳しいこと知ってます?東京にある大学で非常勤講師をしていて、生活のために翻訳の仕事をしているっていう設定らしいんだけど、物語の中では描いていないよね。だって物語の本筋には必要ないから。でも作り手は分かっていないと、その人物のことを描けないんですよ。
――「あー!」と皆さん。その後も、積極的に質問してくれます。
〇生徒さん:憧れ性と共通性は主人公だけでなく脇役も作ったほうがいいですか?
〇新井:いい質問!そうだね、作っておいた方がいいと思います。こんな感じでキャラクターを考えていくと、「どこまで掘り下げたらいいんだ!」ということを防げますよ!
講義2回目は「柱・ト書・セリフ」
*
〇新井:今日は前回のリベンジ!ちゃんと映画のTシャツ着てきました!映画『BELUSHI ベルーシ』公開記念のジョン・ベルーシTシャツです。この人、勿論知ってるよね?特に有名なのが映画『ブルース・ブラザース』のジェイク・ブルース役!
――熱く語る新井。皆さん、静かに微笑んでくれています。
〇新井:さて、講義2回目は「柱・ト書・セリフ」。柱も、ト書も、セリフも、考えるときは前回お伝えした「登場人物のキャラクター」が深く関わってきますよ。
――例えば、「セリフ」についてご紹介した模様がこちら↓
〇新井:セリフには、
①人物の心理や感情を表す
②事実を知らせる
③ストーリーを展開させる
という3つの機能があります。
そしてこの機能に「登場人物のキャラクター」を掛け合わせることで、「キャラクターが出る、登場人物ならではのセリフ」になります。
前回、皆さんからシナリオに関するお悩みを聞いたときに「セリフが説明っぽくなってしまう」というのが出ましたよね。でもそもそも、セリフって説明なんですよ。だけど、説明セリフだと面白くないですよね。だからそうならないように、登場人物のキャラクターを掛け合わせる。そうすると、感情や事実やストーリーに関することを伝えてはいるんだけど、「登場人物の言葉」として観客・視聴者に伝わります。
――皆さん、一生懸命ノートをとってくれています。
――こんなふうに説明をした後はワークを実施。「セリフ」のときのワークでは、「今日のごはんはどうする?」「これにしようか?」といった、キャラクターが全く出ていない登場人物2人のセリフが書かれたシナリオを配布。これを、新井が設定したキャラクターをもとに、登場人物ならではのセリフに書き換えてもらいました。
――そしてシナリオが完成したら、2・3人のグループに分かれて共有してもらいます。
〇新井:どうでしたか?セリフにキャラクター出てました?
登場人物の名前を伏せてセリフを言っても、誰のセリフなのか分かれば、ちゃんとキャラクターが出ている、ということになります。誰のセリフか分からなければ、もう一度、その人物の性格・憧れ性・共通性を考えて、セリフを練ってください。
――「セリフ」だけでなく、「柱」や「ト書」についても、基本的な機能や書き方をご紹介後、ワーク&グループで共有してもらいました。講義を受けていただくだけではなく、実際に手を動かして、短い時間ではありますが、シナリオの技術が少しでも“腕につく”ように行いました。
――終了後にご回答いただいたアンケートの「一番印象深かった/興味深かった内容は何ですか?」という質問で一番多かったのが「登場人物のキャラクター」でした。シナリオ・センターの講座やゼミでは「ストーリーを面白くしようと考えるより、シーンを面白くすることを考えてみてください。そして、シーンを面白くするカギは登場人物のキャラクターにあります」(※)とお伝えしています。
「面白いシナリオを書くには、登場人物のキャラクターを設定することが大切!」ということを、全2回ではありましたが、お伝えできたのではないかと思います。
こういった基本的なシナリオの書き方を押さえておけば、以前よりも「どう書けばいいか全然分からない」と悩むケースも減るのではないかと思います。
今回ご参加いただけなかったメンバーにも、新井がお伝えした内容を共有していただけるとのことでした。早稲田映画研究会に所属している全ての皆さんに参考にしていただいて、アッと驚くような面白い映画を沢山作っていただければと思います。
また、こちらのブログをご覧いただいた、独学でシナリオを勉強されている方も今回ご紹介したことを参考にしていただき、「もっと詳しく知りたいな」という場合は、お気軽にシナリオ・センターまでお問い合わせください!
※登場人物のキャラクターについてはこちらの記事も併せてご覧ください。