準備

シナリオ・センター代表の小林です。だんだんと秋が深くなってきました。
もう事務局では「今年も終わりだねぇ」といい合っています。
残り少なくなった2022年です。それにしても、日本だけではなく世界中で色々なことが起きています。
この様々なことがいい方向へ変化してくれるといいのですが。
今年は壬寅（みずのえのとら）という420年に1回の芽吹きの年でした。
いろいろな変化が起こった今年、さあ、来年は大変化を起こすぞ！
来年の開花のための準備をおさおさ怠りなくやっておきましょう。

来週のことなので、急いでの告知です。
出身ライターのさらだたまこさん脚本・作詞のソロ・ミュージカル「ロートレック」が10月26日から30日まで、中野WESTEND　STUDIOで上演されます。
2020年の再演ですが、新たな改訂版として手を入れています。
登場人物10数人を20曲以上の歌と語りで、あの印象派のロートレックの生涯を山本芳樹さんが一人演じます。
お申し込みはチケットぴあ他で。

老人ホテル

10月15日土曜日目覚めて、何気に朝日新聞の朝刊を開いたら、な、な、なんと原田ひ香さんの本の紹介広告が全５段で、バババーンと。「今いちばん読みたい作家　原田ひ香が止まらない！」
家の近くの文教堂書店に行ったら、原田ひ香さんの文庫「三千円の使い方」「母親ウエスタン」「彼女の家計簿」がドドーンと平積み。
思わずきれいに置き直してしまった。(笑)　

19日新刊がでます。「老人ホテル」（光文社刊）
女性の心をつかんだ節約本といわれる大人気の「三千円の使い方」は、70万部を行くというベストセラーになり、次の「財布は踊る」など、今や原田ひ香さんは、お金の使い方を教えてくれる作家さんのように言われています。(笑)
確かにわかりやすく節約法とか投資法とかを教えてくれます。小説の中でなんとなくわからせてくれるってすごい。
ですが、どの本もお読みになった方はおわかりのように、お金はあくまでキャラクターをかたどるひとつのポイントであって、原田さんが描いているのは、誰もが持っている自分の汚い部分、情けない部分を描きながら、人間の本質を描いているから、心に刺さるのです。

新刊の「老人ホテル」は、生活保護で生きることを信条（？）としている大家族から逃げてきた元キャバ嬢日村天使（エンジェル）が主人公。
キャバ嬢をやめさせられた彼女は、食べるのもギリギリの極貧生活。
まともな生活というものを知らず、なにをすればいいのか、どのように生きていけばいいのか、何もわからない。でも、彼女なりに考えます。
この極貧生活から抜け出るには、キャバ嬢の時に助けてもらった金持ちの老婆綾小路光子に金持ちになる方法を教えてもらおうと。そして、老舗ビジネスホテルの清掃バイトになります。
綾小路光子はホテルに隠遁する元不動産投資家。
二人は複雑な過去と秘密を抱えた者同士。
高校中退で何も知らない天使が、少しずつ光子から教示を受け、きちんと生活する方法を、投資の方法を会得していくのですが。
生きるということは、稼ぐということはどういうことなのか、独りでも生きていける希望とは何か、驚くような展開で迫ってきます。

原田さんの小説の妙は、どの本も、ひとごとではなく自分に引きつけて描かれているので、客観的でありながら、読者の心に迫る熱さがあるように思います。
現在、NHKで放映中の「一橋桐子の犯罪日記」（原田ひ香原作）をご覧になると手っ取り早くおわかりになるかと思いますが、キャラクターの造詣が深いのです。
しかも周りの人々で浮き彫りにするテクニックが巧みなので、より主人公へ思わずのめり込ませられるのです。
純文学から小説家として出発されたのですが、シナリオを描かれていた時は、エンタテイメント性を発揮されていました。
そのエンタテイメント性と純文学で築いた筆致がベストセラーを産んでいるのだと思います。

私は、お金は地道に稼ぐものというポリシーを持っておりというとかっこいいのですが、ま、怖い怖いの意気地なしだからですが、投資的なことは一切しません。石橋をたたきまくっていくタイプ。
でも、「老人ホテル」を読んで、なるほどこういう投資もあるのだなとちょっと心が動いています。(笑)
あなたはどうでしょか。

明日から３日間ほどお休みをいただきます。21日金曜日にはまたお目にかかりましょう。