昨年2021年、学校法人カリタス学園 カリタス小学校6年生の生徒さんは、自分たちのチカラで20分ほどのショートムービー『世界平和計画』を制作しました。
その制作過程で、シナリオ・センターの新井と田中が、生徒さんたちの抱えていた課題に対して、2回にわたって出前授業“キッズシナリオ”を実施(※)。
※その模様はこちらで
▼カリタス小学校6年生の映画作り①
「みんなで映画を作るには 」
▼カリタス小学校6年生の映画作り②
「小学生がショートムービーを作るコツ」
新井と田中がお伝えしたことを参考にしていただき、2022年3月に無事、映画が完成。
また、シナリオ・センター主催・キッズシナリオ実施4校が参加した「子ども動画祭」(※)で、『世界平和計画』の一部と、予告編『2人の桜が咲く時、』『手を取って』を発表しました。
※「子ども動画祭」詳細についてはこちらをご覧ください。
▼「子ども動画祭開催/観客の反応を知る事も動画作りでは大切」
そして、皆さんは卒業され中学生に。「みんな、元気にしてるかな」と新井と田中が想いを馳せていたとき、当時担任をされていた先生より、中学生になった皆さんから「あの映画を色々な人に観てもらいたい!」と連絡があったことをお伝えいただきました!
そこで今回、「カリタス小学校 映画上映会」をオンラインで開催することに。
=今回の概要==============
・サービス名:「カリタス小学校 映画上映会」
・目的:作った映画の発表
・対象:カリタス小学校 元・6年生の皆さん
・時間:約2時間
▼GIGAスクール対応プログラム 「Kids Scenario」
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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当日は、生徒さんと親御さんだけでなく、「是非観たいです!」と言ってくださった“業界”の方々やシナリオ・センターの生徒さんにもご参加いただき、上映後は感想も発表していただきました。
発表会終了後、カリタスの生徒さんや先生方は「映画やドラマの世界で活躍されているプロの方々からも、こんなにコメントをいただけるなんて。一生に一度あるかないかの貴重な機会をいただけて本当にありがたいです!」と感動されていました。
感動していたのはカリタスの皆さんだけではありません!司会進行役を務めた新井と田中も、「プロからこんな言葉をもらえたら嬉しいよね、勉強になるよね!」と感激。勿論、コメントは『世界平和計画』の感想ではあるのですが、物語作り・動画作りのポイントやヒントにもなる内容でした。
そこで、こちらのブログではそのコメントの一部を広報の齋藤がご紹介。物語を作るとき、動画を撮るとき、役立ててください。
創作する上で参考になる、“プロ”ならではの視点
――前述している“業界”とは、どんな方々なのか、気になりますよね。今回は、映画会社・テレビ局・制作会社のディレクターやプロデューサー、翻訳家、シナリオ・センター出身の脚本家、そして、脚本家・小説家でありシナリオ・センター講師でもある柏田道夫さんにご参加いただきました!
また、この中にはカリタス小学校“OG”の方もいらして、現在業界で活躍されている“先輩”と、もしかしたら将来同じ業界に入るかもしれない“後輩”との交流の場にもなりました。
ではまず、『世界平和計画』のあらすじから。
正反対の性格の蒼(そら)と陽向(ひなた)は、七夕で「世界平和」という同じ願い事を書いた。しかし理由は正反対。蒼は特に願い事がなかったのでなんとなく書いただけだったが、一方の陽向は本気で世界平和を志し、その願いを全力で叶えようとしていた――。
――このあらすじだけでも「本当に小学生が考えたの?」って思いますよね。ご参加いただいた業界の方々も驚かれていました。そして、普段されているお仕事の視点で、技術的な部分に関する感想を言ってくださいました!その一部をご紹介いたします。
〇プロデューサーの視点から
<最初に主要な登場人物が出てきて、いろいろな出来事が起こって、盛り上がりがあって、ちょっと意地悪な子が出てきて、そして、落ち込むこともあるけど最後までみんなで努力して、っていうこの流れ。きちんと映画的な脚本の流れになっていました>
〇プロデューサーの視点から
<“主人公の敵”というか、そういう意地悪な子にもちゃんとバックグラウンドが設定されていました。僕は特にアニメ制作に携わることが多いので、そういう視点で見たとき、こういうキャラクターの作り方ってやっぱり非常に重要だなって思いました。登場人物にバックグランドがしっかりあると、観客は感情移入が出来る。これって素敵だなと改めて感じました>
〇ディレクターの視点から
<映像の編集について。意地悪な子の回想シーンにおける音楽の入れ方や、フェードイン・フェードアウトの入れ方がちゃんと出来ていて、「あ、この子は昔、バカにされたことがあったから、こういう行動になっているんだ」ということが、画面をセピア色にするとかそういうことではなく、ちゃんと分かるように編集されているのがうまいなと感心しました。編集って重要で、編集でつまらなくなったり面白くなったりするので、その意味でとてもいい編集だったなと思いました>
〇脚本家の視点から
<すごい大人っぽいセリフがあって「新しいおもちゃをみつけた」とか「頭の中がお花畑」とか。ベテランみたいなセリフがポンと出てきてビックリしました。あと、陽向さんは世界平和になぜこれほど強い関心をもったのかとか、なんで蒼さんに関心をもって近づいたのかなとか、そういうことも知りたくなりました。映画やドラマって、どれだけ主人公のキャラクターに気持ちがのっかれるかがすごく大事かなと思うので、そのへんもあるとさらに面白くなるんじゃないかなと思いました>
〇翻訳家の視点から
<私は翻訳者なので、出来上がった作品を読み取る側の人間。どういうメッセージが込められているのか、というのをひたすら読み取る作業をしています。皆さんの作品を観て一番驚いたのが、“夢は叶うよ的”なものになりがちなところを、初っ端から「夢は叶わない」という視点を入れているところ。すごく斬新だなと思いました>
――脚本家の方は脚本家ならではの、翻訳家の方は翻訳家ならではの、それぞれの視点で感想を言っていただけて、Zoom の画面に映っているカリタスの皆さんはそのコメントを嬉しそうに聞いています!
オンラインでの実施ではありますが、参加者の皆さん全員が同じ場所にいるような、温かい雰囲気に包まれています。そんな中、「もう、泣きそうでした!」と感想を言ってくださったのが「我らが柏田講師!」脚本家・小説家の柏田道夫さん。
〇柏田さん:歌うシーンが良かった!だんだん歌う人が増えていったりとかね、いいよね、ここは感動ポイントでうまいなと思いました。脚本的にはちゃんと登場人物の2人が喧嘩して、蒼さんが葛藤して悩むというのが非常にドラマとしての基本構造に沿っていて、すごいうまいなと思いました。
皆さん、『ペイ・フォワード 可能の王国』っていう映画、観た?観てない。じゃあ偶然なんだ。この映画は、人に親切にしてもらったら、“お返し”をその相手にするんじゃなくて、別の3人に返せば、世界中の人が親切になる、というアイデアを思いついた主人公の話。個人的な意見なんだけど、終わり方がちょっとね、納得がいかない(笑)。みんなが作った映画のほうが希望があっていいなと思いました。機会があったら観てくださいね。
――「はい!」とカリタスの皆さん。こんな風に創作の参考にできる作品を教えてもらえるのも嬉しいですよね。
映画の完成度も質問に対する受け答えも、オーディエンスはビックリ!
――カリタスの皆さんは感想を聞いているだけではありません。質問にもちゃんと答えていました。例えば、制作会社のプロデューサーであり、カリタス“OG”でもある方からこんな質問がありました。
〇質問:なぜ陽向さんはずっと半袖で、蒼さんは長袖を着ていたのか、理由がありますか?
〇『世界平和計画』監督:はい。衣装担当と「陽向には活発なイメージがあるね」という話をしていて、それで半袖にしました。この映画の季節感としては夏から秋にかけてくらいのイメージなんですけど、よく小学生で“年中半袖で元気!”みたいな人がいるなと思って。陽向のキャラクターを考えると半袖短パンで統一しよう、ということに衣裳担当と相談して決めました。蒼の服装についても長袖とまではいかないのですが、「少し重めの服がいいかな」という話をしました。
――このやり取りを見ていた新井と田中は「大人顔負けだね」「監督のインタビュー番組を見てるみたい」とビックリ。
映画の完成度も質問に対する受け答えも、オーディエンスの方々を驚かせたカリタスの皆さん。“業界”の方以外にも、ご参加いただいた方々からこういった感想をいただきました!
・リアルに鳥肌が立ちました。堅い大人があれこれ言うより、ずっと説得力があります。こんな素敵で真っすぐでエネルギッシュな映画をシェアしていただいて、ありがとうございます。
・純粋な思いが伝わってきて、とてもよかったです。皆さんの作品でパワーをもらえました!
・起承転結がちゃんとあって、これを小学生・中学生の皆さんが作ったというのがビックリです。皆さん仰ってましたが、ライバルの子にもちゃんとバックボーンがあっていいですね。
・本日はこのような上映会をありがとうございました。皆さん、コロナ禍の限られた時間の中、素晴らしい作品が出来上がりましたね。観終わった後に私自身も「世界平和計画」に参加したくなりました。カリタスの先生方やシナリオ・センターの皆さま、子ども達に素晴らしい経験をありがとうございました、最高でした!
・小学生がこんな映像を作れるのにびっくりです。陽向が戻ってきた蒼へ言う「おかえり」とか、最後の方の「世界は広いね」とか、何でもないような言葉が素敵でした。
「作家の眼」を持ち続ける
*
――大盛況のうちに終了となった「カリタス小学校 映画上映会」。盛り上がりすぎて予定時間を少しオーバーしてしまいましたが、有意義な時間を過ごせていただけたのではないでしょうか?
最後に新井がカリタスの皆さんにこう呼びかけました。
〇新井:「平和っていいよね」っていうテーマは、これまでも映画やテレビドラマで沢山描かれているし、ありがちなテーマだと言えばそうかもしれませんが、カリタスの皆さんの今の年齢だからこその視点で、観客を感動させる物語としてきちんと作れたことは凄いことだと感じました。本当に、よく知らない人の一存で始まってしまう戦争なんて嫌だもんね。
中学生になっても是非また機会があったら映画を作り続けていってほしいと思います。そうはいっても、創作は大変なことが多いですよね。みんなのスケジュールを合わせたり、授業の限られた時間の中でいろいろ試行錯誤したりして。
だけど、楽しいよね。で、この楽しさを、作品を発表することで他の人にも伝えることができるというのも、またひとつ映像の魅力なのかなと思います。
最後に、ちょっといいこといいます。「物語を考える」「シナリオを書く」ということを、今回カリタスの皆さんにやってもらいましたが、この“作業”を通して、「登場人物の立場になって、想像力を働かせる」ということも体験できたかなと思います。
これは、実際にシナリオを書いた子だけじゃなくてね、今回の映画作りに携わったクラス全員に言えることだと思います。例えば音楽を担当したなら「この世界観だったらどういうBGMがいいかな?」って考えたと思うし、担当した“係”に関わらず、映画を作る中で「観客に伝わるためにはどう表現したらいいんだろう?」って考えたでしょ?こうやって自分以外の、誰かの・何かの、立場になって考えることで想像力がどんどん豊かになって、表現力が磨かれたんじゃないかと思います。
シナリオ・センターではこのことを「作家の眼」といっています。「作家の眼」は、創作を通して、さまざまな物事をいろいろな角度から見て・考えることで養います。作家になる以外にも、日常生活のあらゆる場面で活かすことができます。是非、この「作家の眼」を持ち続けていただければと思います!
――Zoomの画面には元気よく「はい!」と言ってくれているカリタスの皆さんが映っています。先生方は「今日の経験をこれからの人生に役立ててほしいです!」と仰っていました。新井も田中も同じ想いです!
今回ご紹介した模様をご覧いただいて「うちのクラスも映画を作りたいといっているけど、どう進めていけばいいか分からない」とお悩みの先生方がいらっしゃいましたら、是非お気軽にお問合せください。また、ご参考までにこちらの動画や記事も併せてご覧ください。
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