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第22回テレビ朝日新人シナリオ大賞
視聴者を惹きつける“もう一捻り”

第22回テレビ朝日新人シナリオ大賞/視聴者を惹きつける“一捻り”

前列左から優秀賞の宮本真生さん、大賞の若杉栞南さん、優秀賞の平岡達哉さん。後列左から最終選考委員の岡田惠和さん、井上由美子さん、両沢和幸さん。

講評から学べること

第22回テレビ朝日新人シナリオ大賞。応募総数1064篇(前回は2部門合計で1453篇)。今回は部門は設けず、「家族」というテーマでテレビドラマ脚本を募集。選考委員の岡田惠和さん、両沢和幸さん、井上由美子さんの3氏によって、大賞1篇・優秀賞2篇が決定。

優秀賞2篇のうちの1篇は、平岡達哉 さん(本科修了生)の『さすらいのパンツマン』でした!

先日、授賞式が開催。その模様を広報の齋藤がリポートいたします。

こちらのブログでは平岡さんの受賞コメントとともに、最終選考委員3氏による講評もご紹介。講評の中には、視聴者を惹きつけるためのポイントや面白いシナリオを書くにはどんなことに気をつければいいのか、が詰まっています。

例えば、脚本家であり、監督・演出家・プロデューサーでもある両沢さんの最優秀賞受賞作への講評。
<もしこれを映像化するのであれば、前半のところをもうちょっと“動き”のある芝居にするといいなと思いました。そうすると後半の展開に活きるんじゃないかなと>

最優秀賞受賞作であっても、優秀賞受賞作であっても、まだまだ「もう一捻り!」といわれるような“伸びしろ”があるんだ、ということに気づかされますよね。脚本家になりたい方や脚本コンクールで賞をとりたい方は、ご自身の作品の「もう一捻り!」という部分を見つける参考にしてください。

※『月刊ドラマ』11月号(映人社)には受賞3作品が掲載。シナリオ・センター発行『月刊シナリオ教室』には平岡さんの受賞シナリオとコメントを掲載予定ですのでお楽しみに!

優秀賞受賞:平岡達哉さん
「自分の書きたいことをとにかく詰め込んで」

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==受賞作『さすらいのパンツマン』あらすじ==
家族に内緒でピン芸人を7年続けてきた細井涼(29)。ライブに出れば万年ビリで、売れる気配はゼロ。性格は、周りを気にしすぎて本音を言えない超小心者。ある日、同期の人気芸人・パイソンズが自身の生配信に向けて出演者オーディションを開催することに。雑用を命じられた涼が手伝いに行くと、そこに現れたのは、なんとパンツ一丁の父・細井茂(62)。茂は昔からの夢である芸人を志し、養成所に通っていたのだ。さらに、母親と離婚していた事実まで明かされ、芸人を目指している茂に嫌悪感を、そして離婚を隠し続けていた母には不信感を募らせる。そんな折、涼は事務所から「次のライブで結果を出さなければクビ」と宣告を受ける。崖っぷちに立たされた涼。一方、がむしゃらに芸を磨く茂。そんな父と向き合っていくうちに、涼の心に変化が。「俺も本音で生きる人生を選びたい。好きなお笑いを諦めたくない」――。

〇平岡さん:自分の書きたいことをとにかく詰め込んだ作品。その内容で選んでいただけたことを光栄に思っております。

私は普段、テレビ業界で働いていて、昔からとにかく「ドラマ脚本の世界に行きたい」「ドラマを書きたい」とずっと憧れていたのですが、なかなかその機会がなくて、ドラマの世界は近いようでとてつもなく遠い存在でした。

そんな中、このような大きなキッカケをいただいて何よりうれしく思っております。これからはいただいたチャンスを無駄にしないよう、1日でも早くドラマ脚本家としてデビューできるよう目指します。そして、1日でも早く現場の方から信頼される脚本家として活動できるよう、日々精進していきたいと思っております。

選考委員による講評① 両沢和幸さん
「前半にもう少し“動き”を入れると後半の展開が活きる」

*

〇両沢さん:若杉栞南さんの大賞受賞作『拝啓、奇妙なお隣さま』は、昏睡状態になった3人の患者がモノローグで対話するところに、お見舞いに来た家族の会話が入ってきて、それぞれの事情が描かれていくと。目覚めて終わりじゃないというところがすごく良かったです。目覚めた後に、目覚められなかった人たちの家族を訪ねたりして、その想いを伝えるという、この後半が非常に印象的でした。

ですので、もしこれを映像化するのであれば、前半のところをもう一考して、もうちょっと“動き”のある芝居にするといいなと思いました。例えば、家族やお見舞いに来た人がちょっとマッサージしてみたりとか、何かそういう芝居があると、後半の展開に活きるんじゃないかなと。自分が演出するとしたらそういう注文を出したいなと思いました。

平岡達哉さんの優秀賞受賞作『さすらいのパンツマン』は、個人的に私はこれがすごく好きでした。ピン芸人を目指している息子と、同じくピン芸人を目指していた父親がパンツ一枚でコンビを組む話。

気に入った理由というのは、最近、テレビドラマにせよ映画にせよ、主人公はわりとおとなしい男の子で、すごく活発な女の子が脇に出てくるという設定が目立つような気がします。この作品は元気のあるエネルギッシュな男の子が主役なので、個人的に非常に好感がもてました。ぜひ元気の出るドラマを実現していただきたいなと思っております。

宮本真生さんの優秀賞受賞作『代表取締役息子』は、タイトルからして面白そうだなと思う作品でした。父と息子の会社が同じグループになって、いろいろ葛藤するという物語。

最後のほうに出てくる運動会のシーン。運動会は、ある種ホームドラマの定番の1つともいえるので、何かここに“もう一捻り”あるとさらに面白くなったんじゃないかなという気がいたします。でも、この作品で描かれていることは、これから本当に起きるかもしれないので、それを新しいドラマとして提示できるというのが若い世代の感性だなと思いました。

テレビドラマ界は今、過渡期にあると思いますので、新しいドラマ作りをこの3人に期待したいと思います。

選考委員による講評② 岡田惠和さん
「次に起こることがなんとなく読めてしまう感じが勿体ない」

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〇岡田さん:若杉栞南さんの大賞受賞作『拝啓、奇妙なお隣さま』。とても面白かったです。病室に寝たきりの3人がいて、そのうち2人は一度も目を覚ますことがなく、基本的には「心の声」だけで芝居をしていくという、なかなかプロになって俳優さんのことを考えると書けないタイプの脚本です(笑)。

この撮影の大変さをどれだけ分かっているか分からないけれど、でも読んでいくうちにそんなことはどうでもよくなって、この作品面白いな、できれば映像になったものを観てみたいなと思いました。作家としての想いをちゃんと整理して書いているところに技術の高さを感じました。

平岡達哉さんの優秀賞受賞作『さすらいのパンツマン』。お笑いをドラマにするって実はとても難しくて、「ネタをやってみんなが笑う」ってト書に書くのは簡単だけど、それをどうやって映像にするんだというところが問題。

わりと若い方がお笑いやミュージシャンの話を書くとき、その部分を“なんとなく”で逃げちゃいがちなんですけど、平岡さんは逃げずに書かれていた。この作品に書かれているネタをやって、笑えるかどうかは分からないけど、逃げずに書いたことがとても素敵だと思いました。それに、観ているうちに笑えるかもしれない、と思えてくる説得力みたいなのものもあって、とても好感をもちました。書き続けていただきたいなと思っております。

宮本真生さんの優秀賞受賞作『代表取締役息子』は、優秀な子どもが社長になって、その下に父親が就くという、今の時代だったらひょっとしたらあり得るかもしれないファンタジーを、とても気持ちよく描いていました。起きることにも説得力があって、安っぽい天才みたいになっていなくて、とても好きでした。

個人的な“想い”としては、途中から運動会の話が出てくるのですが、ちょっと「あ、運動会か……」と思いました。起こることがなんとなく読めてしまう感じが、ちょっとだけ勿体なかったかなと思ったことも、個人的な意見として伝えておきます。でも、すべての登場人物のキャラクターができあがっていて、いい作品だと思います。

なんというか今、テレビドラマはたぶん、違うフェーズに入ってきていて、そういう空気を感じます。今まで、例えば10話連続なら、毎週毎週1話1話“ひっぱり”を作って、次の週まで待っていただけるような作り方をしてきました。

でも、いわゆる“配信”の仕事をすると、10話同時に配信しちゃうこともあるので、「各話の最後のシーンは誰も観てないかもしれない」「下手すると一晩で観るのかもしれない」みたいな感じがするし、視聴者の方々も倍速で飛ばして観ているらしいという話も聞こえてきたりして。

ただ、なんかやっぱり、エンターテインメントは求められていると思うし、まだまだテレビドラマは“盤石”だと思っています。一緒に頑張っていきましょう!

選考委員による講評③ 井上由美子さん
「家族に対する“毒(批評性)”もあると、温かい持ち味がより際立つ」

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〇井上さん:若杉栞南さんの大賞受賞作『拝啓、奇妙なお隣さま』はファンタジーなんですが、主人公の患者たち、それから家族たちの感情にリアリティーがとてもあって、悲劇と喜劇、絶望と希望のバランスが巧みでした。

人が亡くなるのにハッピーエンドっていうテイストで、「家族」というテーマを説教くさくなく捉えていて、私個人の感想ですけど、この10年くらいの受賞作品の中で最も好きな作品のひとつになりました。

平岡達哉さんの優秀賞受賞作『さすらいのパンツマン』は、お笑いを題材に、父と家族の夢を丁寧に描いた作品でした。ほのぼのとしたオーソドックスな物語が書けるのは、とてもチカラがいることで、そのチカラがあるのだと思います。

なにかひとつ、この家族に対する“毒”というのかな、ピリッとした批評性があれば“甘辛”というか、温かい持ち味がより際立つ作品になったのではないかなと思います。

宮本真生さんの優秀賞受賞作『代表取締役息子』は、私の好きな映画『ビッグ』のような味わいのエンタメ作品です。子どもが社長になることをただのファンタジーではなく、現代的なリアリティーをもって描いており、非常に感心しました。

惜しむらくはクライマックス。運動会の借り物競争という“定番”に収まった感があったなぁというふうに思いました。ここが前半のような新鮮なエピソードの積み重ねであれば満点に近かったと思います。

最後に、お三方にお願いがあります。今回の受賞作を勲章にしないでほしいです。コンクールで受賞すると、どうしてもその後、「あのとき書いた作品よりもっといいものを書かなきゃ」とか、「あのとき書いたタッチと変えて書かなければ」とか、いろんなことを考えてしまって、自由じゃなくなってしまうので、今日明日は「やったぁ!」と喜んでいただいて、その後は受賞を忘れて新しい気持ちになって、まだ書いていないときの気持ちで、次の作品に挑んでいただきたいと思います。それが皆さんの可能性を広げることにつながると思います。

*     *     *

講評をご覧いただくと、「選考委員はこういうところを見ているんだ」「選考委員が気になった部分はきっと視聴者も同じように感じるんだろうな」と思われたのではないでしょうか?

選考委員のコメントにあったような、視聴者を惹きつけるための“もう一捻り”を意識していただくと、面白い作品がうまれるのではないかと思います。今回の記事と併せて、こちらもぜひ参考にしてみてください↓

登場人物を深く描くには「毒」を仕込む

脚本の勉強法:先の読めないシナリオを書くコツ 

次回応募する際の参考に!
これまでの「テレビ朝日新人シナリオ大賞」授賞式の模様&講評

「第21回テレビ朝日新人シナリオ大賞/応募するならクライマックを意識」

「第20回テレビ朝日新人シナリオ大賞優秀賞受賞 長島清美さん/テーマ“25歳”で書いて」

「第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞にみる/どんな脚本が賞 をとるのか」

「第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞 映画部門・優秀賞受賞 川瀬太朗さん」

「第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞にみる①/脚本コンクールで賞をとるには」

・「第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞にみる②/映画・テレビドラマ・配信ドラマの部門について」 

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「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。

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