子どもたちが「いいこと思いついた!」とひらめくとき、ものすごく嬉しそうな顔をします。
そして、ひらめいたことを発表して、周りのみんなに「面白い!」といわれると、また笑顔になります。
これを繰り返すことで、アイデアを発想する“ひらめき力”がどんどん引き出されていきます。
この瞬間に立ち会える機会のひとつが、シナリオです。
その模様を広報の齋藤がリポートいたします。
=今回の概要==================
・サービス名:「シナリオプロジェクト」
・目的: シナリオ作り
・対象:NPO法人 放課後NPOアフタースクールさま
台東区立 谷中小学校 放課後子供教室(3~5年生)
・時間:約1時間
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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今回は、参加してくれた生徒の皆さんに『ももたろう』の続きを考えてもらいました。
“めでたしめでたし”で終わったはずの『ももたろう』のその後。
「子どもの“ひらめき力”を高めたい!」という先生や親御さん方、この発想法を参考にしてみてください。
「めでたしめでたし」の、その後を考えてみる
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――今回で実施10回目。初めて参加してくれた生徒さんと、“リピーター”の生徒さん。和室でまったりとスタートです。
〇新井:『ももたろう』の終わり方について、僕はずっと思っていたことがあって。ももたろう・いぬ・さる・きじのみんなで鬼退治をして、財宝を手に入れるでしょ?
で、これで「めでたしめでたし」になっているけどさ、帰り道に絶対揉めると思うんだよ。そう思わない?だから今日はね、鬼退治の後、手に入れた財宝を持って帰るときに揉めているシーンをみんなに書いてほしいの。
〇生徒さん:財宝ってどのくらい?
〇新井:山のような財宝だから、大きさを例えるなら跳び箱8段くらいかな。
〇生徒さん:“山のような”っていくらぐらい?
〇新井:う~ん、じゃあ、8億円分にしよう!8億もあるんだよ、絶対揉めるでしょ!
〇生徒さん:私なら、いらない。
〇新井:えー!じゃあ、僕にちょうだい(笑)
〇生徒さん:どうぞ(笑)
〇生徒さん:え!?大人げない!(笑)
〇新井:大人も子どもも関係ない!ほしいもん!
――“もしも”の話で真剣に取り分を増やそうとする新井。優しく笑ってくれる皆さん。
〇新井:こんなふうにね、それぞれの「性格」、つまり「キャラクター」が人によって違うから、財宝を分けるときは揉めると思うんだよ。では早速、この続きのシーンを書いてみてください!
〇生徒さん:設定は「夕方」じゃなくて「夜」にしてもいいですか?
〇生徒さん:どんな性格なのかキャラクターも自分で考えていいですか?
――もうすでに、皆さんの“ひらめき力”が湧きだしています。
〇新井:勿論!自由な発想で書いてみてください!
――まずは、ももたろう・いぬ・さる・きじのキャラクター設定から取り掛かります。
生徒さんが「どう考えればいいか分からない……」というときは、
新井や、いつもご協力いただいている胡麻尻亜紀さん(シナリオ・センター在籍生/映画『15歳の総理大臣』監督・脚本ご担当)がそっと傍へ。
――新井や胡麻尻さんと、「こんなとき、このキャラクターならどんなこと言うかな?」と話しているうちに、「思いついた!」とアイデアがひらめきます。
――“リピーター”の生徒さんとはこんなやり取りも。
〇生徒さん:(シナリオを書きながら)喧嘩がはじまっちゃうの!
〇新井:お!いいね!桃太郎ときじが喧嘩してる(笑)。いいよいいよ喧嘩してよ。8億円だもん、喧嘩するよ。それに、以前この「シナリオプロジェクト」で、「物語の展開がスムーズにいかないと面白くなる」というのをやったでしょ?覚えてる?
〇生徒さん:覚えてる!何かやろうとすると邪魔が入ったり、トラブルがあったりしたほうが面白くなる。
〇新井:その通り!今回で言えば、「財宝8億をみんなで平等に分けましょう→はい分かりました→めでたしめでたし」で終わるよりも、さっきの僕みたいに、「いらないなら君の分ちょうだい」とか、それを聞いた人が「ずるい!」って揉めた方が、このシーンを読んだり観たりする人は「この先どうなっちゃうの?」「面白い!」って引きこまれます。これは面白い物語を作るためのポイントであり、プロの脚本家も使っているシナリオの技術なんですよ。
――新井が話したポイントを聞いた皆さん、「あ!」とまた何かひらめいたようです。どんどん書いていきます!
物語の続きを考える楽しさで、ひらめき力がUP
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――シナリオが完成したら発表です。「わぁ!」と驚くようなオリジナルストーリーが沢山できました。
例えば、ももたろうを計算高いキャラクターの「悪ももたろう」に設定した生徒さんのシナリオ。悪ももたろうが、いぬ・さる・きじを言葉巧みに誘導し、「どうせ私のエサ代にもなれませんし……」と言わせることに成功。結果、悪ももたろうが8億円のうち4億円を持ち帰っちゃった、という衝撃的なラストに。
また、こんなシナリオも。ももたろう・いぬ・さる・きじが、8億円の取り分のことで大喧嘩。でも喧嘩したことや財宝を鬼から盗んでしまったことも後悔しだして、船の上で大号泣。その涙で、なんと地球温暖化が解決した、という驚きの展開を作ってくれました。
他にも、ももたろう・いぬ・さる・きじの全員がそれぞれ異なる超能力を持っていて対決するというシナリオや、「きじは飛べるから財宝全て持っていっちゃった」というシナリオを書いてくれた生徒さんもいました。
自由な発想で、これまでにないアイデアばかり!
ひとりひとり発表が終わるたびに「おー!面白い!」「新しい!」「私のももたろうのキャラクターとは全然ちがう!」と感想を言いながら拍手。そのたびに、発表した生徒さんがパッと笑顔になります。
〇新井:今回もみんな上手に面白いシーンを書けたね。すごい!今日は、「鬼を倒して財宝を手に入れましたとさ、めでたしめでたし」で本来は終わっている『ももたろう』の続きを考えてもらいました。こんなふうに「めでたしめでたし」で終わっている物語の続きを考えてみるのも楽しいでしょ?
――うんうん、と皆さん頷いてくれています。
〇新井:登場人物たちが揉めると物語が面白くなる、というのも実感してもらえたんじゃないかなと思います。
じゃあ、今日はここまで。次回は11月。またお会いしましょう!何か、書いてみたい題材とかある?
――すると「徳川家康」「豊臣秀吉」「石田三成」といった歴史上の人物や、「3匹のあらいか」などなど様々な希望が。“あらいか”とはみんながつけてくれた新井のニックネームです。
〇新井:僕が3人いるのね(笑)。どちらにせよ「もしも……」っていう話を書きたいのかな。次回までに題材を考えてきますのでお楽しみに!
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今回の模様をご覧いただいて、生徒の皆さんが何度もひらめいているところを“目撃”していただけたのではないでしょうか。シナリオにはこんなふうに子どもたちの“ひらめき力”を引き出すチカラがあります。
これは子どもだけではありません。テレビドラマの最終回や、映画や舞台を観終わった後、「自分がこの作品の脚本家だったらこういう終わり方にするけどな」とか「この後、こんな展開になるんじゃないかな」と考えたことありませんか?この場合は登場人物たちのキャラクターが分かっているので、よりひらめきやすいのではないでしょうか。大人の皆さんも物語の続きを考えると“ひらめき力”が高まりますよ。
子どもも大人も是非、シナリオ作りで“ひらめき力”UPさせていきましょう!
※シナリオ・センターのブログで掲載している、これまで谷中小学校 放課後子供教室で実施した模様です。是非ご覧ください。
・短時間でも映像は作れる!/子どもがのびのびと自己表現できる場
・小学校低学年の子どもたち、書くことがもっと好きに!@谷中小学校
・子どもが遊びながら学ぶ物語の作り方/昔話を使ってシナリオ作り
・「自分の作品を人に見せたくない。恥ずかしい」を乗り越える!
★「谷中小学校放課後子供教室ブログ」でも紹介していただいております。併せてご覧ください。
・高学年ビッグプロジェクト始動開始!!『シナリオプロジェクト』プログラム
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