menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

過去が紡ぐ

時をちぎれ

討ち入り

シナリオ・センター代表の小林です。今日は、ご存じ忠臣蔵、赤穂浪士討ち入りの日です。
時は元禄15年(1702年)、本所吉良邸に討ち入り、見事本懐を遂げた日です。
亡くなった私の大好きな二代目吉右衛門丈が得意とした「松浦の太鼓」は忠臣蔵外伝として有名ですが、この話は、俳句、陣太鼓、とてもおしゃれなのです。

風流大名として有名な松浦侯の屋敷は、吉良邸のお隣。大石内蔵助と山鹿素行の下で同門だった松浦侯は、内蔵助がなかなか討ち入りしないことにイライラ。
宝井其角が松浦侯の句会へ行く途中に、笹売りに身をやつしている俳句の門下大高源吾に出会い、寒そうなので松浦侯から拝領した羽織を上げたことに腹を立て、イライラが募っている松浦侯は、四十七士のひとり大高源吾の妹お縫まで、首にしようとする。
其角、お縫に当たり、すったもんだするのだが、別れ際に「年の瀬や水の流れと人の身は」と発句をむけると源吾は「明日を待たるるその宝船」と附句を返して別れたと其角から聞いて、急に納得する。
そこに、山鹿の陣太鼓が響き渡る。太鼓の音で、討ち入りしたことを知り、助太刀にはせ参じようとすると、縫の兄源吾が、本懐を遂げたことを報告にきて、松浦侯は大喜びする。
大高源吾は「山を抜く 力も折れて 松の雪」辞世の句を詠むと、あっぱれな辞世の句に松浦侯は大満足して終わります。

歌舞伎の筋立てって、長いものの一部のせいもありますが、ちょっと荒い、つじつまがいまいちとかって、私は思っちゃうこともあります。
ですが、この松浦侯を初代も二代目吉右衛門丈も得意とし、仁左衛門丈始め多くの役者が演じたがるのは、松浦侯のキャラクターの魅力ゆえなのだと思います。
直情型の殿様、天真爛漫、喜怒哀楽が激しい、正義の人で風流人・・・演じて楽しいですから。
歌舞伎は、同じ演目を色々な方が演じます。
それぞれのキャラクターへの役者さんの色付けがそれぞれ違うので、同じ演目でも別の味わいができ、楽しいものです。
ストーリーではなくキャラクターの醍醐味。江戸の昔から、戯曲作家は言われてきたのでしょうか。(笑)
この「松浦の太鼓」、笹売りの源吾の寒々しい装い、山鹿の陣太鼓の音、俳句で想いを語らせるところなど風流なだけでなく、せりふで言わせないところがうまいでしょ。歌舞伎の見せ場は、勉強になります。

古典を見ると、すべてのドラマの基本に通じているのですね。
ストーリーじゃない、キャラクターだって。
古今東西、名作といわれるものはみんなそうなのだと思います。

時をちぎれ

先日、舞台脚本コンクール授賞式でご紹介した『時をちぎれ』(作=土田英生 演出=金澤菜乃英)が、来春1月20日(金)~29日(日)まで東京芸術劇場シアターウエストにて上演します。

今回の舞台は、サプリメントの販売で急成長を遂げた「嶺岡幕府商事」のある一室。
社長がちょんまげ姿で登場するCMが大人気で、主力商品「減量丸」はヒットを続けています。
しかし、おかしなことにこの会社、京都室町の本社を「室町御殿」、東京事務所を「鎌倉御殿」、社長を「将軍」と呼ばせるなどいたるところが室町時代。
ある日、この会社に研修制度で一人の女性がやって来ます。彼女を待ち受けていたのは⁉

舞台だけでなくテレビドラマ・映画脚本の執筆も多数手がける土田英生氏が、13年振りに青年座へ新作、軽快で痛快な会話劇「時をちぎれ」を書き下ろしてくれました。
2023年最初の作品『時をちぎれ』にどうぞ、ご期待ください。

戯曲はドラマの基です。
みせるというのはどういうことか、セリフとは何が必要か、伝えるということは・・・新春、新しくぴょんと跳ぶために原点に戻って見るというのもいいかもしれません。

【チケット料金】一般前売5,500円のところシナリオ・センター生徒の方に限り、特別価格一律3,500円。
シナリオ・センター事務局へお問い合わせください。

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ