今回は、「小道具をこうやって使うと物語がより面白くなる!」というお話をご紹介。シナリオ初心者の方も、「物語を書くチカラをレベルアップしたい!」という方も、ぜひこのやり方を取り入れてみてください。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
映画『手錠のままの脱獄』の小道具の使い方
小道具は、使用目的以外に何に使えるのか考えようと申し上げましたが(※)、カセをからませて、緊迫したドラマを作ることが出来ます。
私がいつも感心しているものに、名プロデューサーのスタンレー・クレマー製作『手錠のままの脱獄』という映画があります。
白人と黒人の犯罪者が、互いに手錠で結びつけられて列車で刑場まで護送されるのです。到着すれば殺されるのを知っている2人は、手錠でつながれているので、単独で脱走する訳には参りません。そこで、あとはともかくとして、手錠のまま逃げようと脱走を企て、2人一緒に手錠のまま線路脇に飛び降りるのです。
ご承知のように手錠は犯罪者が逃亡しないように束縛しておく小道具です。幸か不幸か、束縛するものはいなくて、犯罪者同士です。ともかく線路からなるべく遠くまで逃げなければならない。ここまでは共通の目的です。
小道具には「本来の目的」と「もうひとつの目的」を
そしてやっと落ち着いたところで、いつまでも2人が手錠のままいたらどうにもならない。何とかして外そうとしますが、なかなかうまくいかない。そのうち追手が来る雰囲気で、ともかく手錠のままでいいから逃げようとするのですが、いくら犯罪者同士でも白人と黒人では、人種的な考え方が違います。
2人は手錠につながれたまま、命以上に大切な人種の誇りをもって争います。
私は映画のストーリーを解説しているのではありません。手錠という無機物を使って、人種同士の思想の争いまで表現することが出来る、ということが言いたいのです。
日本の刑事ものでもやたら手錠は使っていますが、シチュエーションに対するアイデアで、素晴らしいものになるという見本のような映画でしょう。
手錠は犯人を捕まえた時に使う道具だけではなく、アタマもぜひ使いたいものです。
小道具は本来の目的だけでなく、もうひとつの目的があるのだよ、ということを言いたいのです。
例えば、映画『恐怖の報酬』(※)では、ニトログリセリンという爆発物の小道具を使って、人間の恐怖の極限まで表現しています。
※こちらの記事「『恐怖の報酬』にみる うまい伏線を張るコツ」もご覧ください。
出典:『月刊シナリオ教室』1996年6月号新井一「十則集」より/2017年4月号「新井一.com」
★次回2月7日に更新予定です★
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。
詳しくは講座のページへ