愛は深く
シナリオ・センター代表の小林です。今日は言わずと知れたバレンタイン。
わがセンターの男性スタッフの机の上は、チョコレートが山積み。センターは女性の方が圧倒的多いので。
でも、独身はいないので、ゼーンブ義理チョコ(笑)
とはいえ、義理チョコは義理チョコなりに差し上げる方もいただく方も楽しまないとね。
いつもの大阪在住の元スタッフからは、浪花のおばちゃんらしい小細工いっぱいの(笑)愛を込めたハートの風船入りの段ボールが届き、そのハートを(彼女の愛を)もて遊ぶ動画を送る男性スタッフ・・・と双方で遊びまくっています。
シナリオ・センタ―の取柄は、退職したスタッフも含めて仲がいい、出身ライターやお辞めになった受講生の方も気軽にお顔出しくださるし、今年で53年と長く続いているのは、こうした縁を大切にしているからだと、私は信じています。ありがたいことです。
これは誰かが仕掛けているのではなくて、みんなの心が自然といい方向に向かっていくんです。シナリオ・センターは、そういう場所だと自負しています。
この縁は、家系図をかかげて自慢するのとは違うのです。
お祖父さんも大叔父さんもお父さんもみんなみんなすごいのだよっていう人は、どこかの息子のように「俺の親父は総理の秘書官で・・・」と叫んでいるのと同じです。
自分がこんなにちゃんとしていますよと言えないから、家族の持っている権力を笠に着る・・・それを「坊ちゃん」として認める日本人も情けないけれど。
センターの出身ライターの方も、受講生の方もスタッフも、創作は、自分の力でしかことを成しえないことを知っているから、そんなおかしな人はいません。
創作の世界に生きていてよかったとしみじみ思います。
人を愛し
ドラマ誌3月号に「橋田賞新人脚本賞」の受賞作と選評が掲載されています。
前にも申し上げたように、今回から映像化をうたっていたので、例年の3倍くらい応募数がありました。
その難関をかいくぐって佳作に大阪校の長島清美さんの「ビリーヴ」が受賞されました。おめでとうございます。
ところが映像化になる入選作は、残念ながらなく、長島さんの作品も今一歩足りなかったようです。
選評では、「多くの作品が現代に生きる人々や家族を真摯に描き、テーマ、題材も極めて多様性に富んでいた。各作者のドラマに挑もうとする志と大きな可能性を実感」とおっしゃっていただきました。
ですが、ここの作品評を見ると案外と厳しく、映像化できないことがわかります。
過日、石井ふく子さんのインタビューの抜粋を載せましたが、その石井プロデューサーの言葉を思い出してみると、やはり「人間を描く」ことが足りないように思います。
どうしてもコンクールは、設定や発想の奇抜さに囚われストーリー本位になりがちです。
ドラマとはなにか、葛藤・相克・対立です。
人間の心が映し出されなければ、順を追ったストーリーを見せられるだけになってしまいます。
そこにある葛藤をどう丹念に描くか、シーンとして魅力的に描かれるかです。
ストーリーにこだわると、段取りを踏んでいくだけで主人公の心情に繋がらないのです。
ご覧になっているでしょうか。
毎週火曜日の23:30から放映されている出身ライター橋部敦子さん脚本「6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱~」(テレビ朝日)
遅い時間なのですが、ここのところ、優しさに包まれるホームドラマとして話題になっています。あ、今日見てください!!
幽霊になった父親との花火師職人親子の不思議な日常を描いたドラマです。
1話30分の短い枠ですが、ゆったりとした、不思議な味わいのあるホームドラマで、主役の父親役の橋爪功さんが提案した企画なのだそうです。
息子役は髙橋一生さん、日常に変化をもたらすかき回し役の本田翼さんとほぼ三人が登場するだけで、心の機微を丹念にしみじみと描き、会話のキャッチボールはテンポ良く、コミカルにほのぼのさせてくれるホームドラマなのです。
「人間を描く」にはどうすればいいのか、どういうことなのかと悩まれている方に、是非見ていただきたいです。
「僕の生きる道」などの僕シリーズ3部作をはじめ常に人間を見る目の、人間を描く確かさに「向田邦子賞」を受賞されている橋部さんらしい素敵なドラマです。
橋部さんは、「橋田賞脚本賞」(プロに贈られるものです)も受賞されています。