ケチ
シナリオ・センター代表の小林です。H3ロケット打ち上げ成功かと思いきや、フィリッピン沖に・・・と今朝、ドラマのような展開の打ち上げをみました。
せっかく打ち上げたと思ったら、ヌカ喜びに終わり、頑張って、頑張って打ち上げまで持って行った方々の無念はいかばかりかと思います。ロケットにはお金を出してくれているのでしょうか。
ケチ臭い日本のお上が研究費をだしてくれないせいで、せっかくの能力を発揮できない研究者がたくさんおり、多くの人が海外へ流出してしまっているそうですね。
無能・有能とか勝ち組・負け組とかいうレッテル貼りは、大嫌いですし、そういう仕分けは認めたくない私ですが、最近はついつい思ってしまいます。
口には出したくないけれど、無能なお上と役人が有能な人たちを殺す、本当にろくでもない日本だと。
日本は、いつから大局を見るとか、長い目で見るとかができなくなったのでしょうか。
あらゆるところで世界ランキングも落ちて、G7で最下位なんて話ばかりを聞かされると、本当にガッカリします。
それもこれも、お上が勝手なことをやっているからなのでしょう。
国会も機能していないし、閣議決定ばかりのろくでもないことを平気で行う人は、自分が何をしているのかがわからないのでしょうか。目先の自分の利益だけを追っているのでしょうか。
自分の半径5メートルではなく、もっと遠くを見回して欲しいと思います。他人の小さな声に耳を傾けて欲しいと思います。
ロストケア
昨日、出身作家の美輪和音さんのご主人でもある日活の有重プロデューサーが製作された映画「ロストケア」の試写を拝見しました。
壮絶なお話で、本当に日本という国は・・・と思いながら見ていました。
「ロストケア」は、「日本ミステリー文学新人賞」を受賞した葉真中顕さんの原作で、65歳以上高齢者が人口の3割近くを占める日本の介護について鋭く切り込んだ作品です。主役は松山ケンイチさんと長澤まさみさん。
誰にでも優しく親身に接する斯波(松山ケンイチ)は、介護家族にも慕われる献身的な介護士です。
ある日、早朝の民家で訪問介護センターの所長の死体が発見されます。
捜査上に、介護士斯波が浮かび、検事の大友(長澤まさみ)が調べていくと斯波が勤める訪問介護センターが世話している老人の死亡率が異常に高いことに気づきます。
斯波が働き始めた3年で自宅での死者が41名となっており、斯波は自分が42名を殺したことを認め、だが、それは殺人ではなく「救いだ」と主張します。
大友検事は介護家族の厳しい現実を知るのですが、法の正義とはなにか、斯波の救いとは何か、互いの正義の在り方は・・・。
この映画は、ドラマですが、私たち観客の心への問いかけではないかと思いました。
主人公は、介護の現場で大変な介護を強いられる家族や本人のために殺しを重ね、大変な人たちを「救った」、正義だと思っている。
検事の大友は法の上の正義として「殺人だ」と主張します。
お互いの正義は、本当の正義は何かを、私たちに問いかけます。
現実に今「老人は集団自決せよ」という声もあり、また障がい者施設を襲って役に立たない人は殺していいと主張した人も、生産性のない人は必要がないという人もいます。
映画の中でも、とても悲惨な状態の介護をしていた娘が「人殺し!」と斯波に叫び、また亡くなったことを受けとめて新たな人生を切り開こうとする人もいます。一人一人の想いは違うのです。
「さもありなん」という主題歌を作った森山直太朗さんは、
「介護という一つのテーマでも生きている人の数だけ無数の問題と途方もない答えがあって、何が善で悪なのかはそれぞれの倫理観、置かれている立場によって異なります。
大切なのはその「異なり」に寄り添い見守ること。
是か非か、ありか無しかを問い合うより、無意識の視点で相手の想いを感じること。」
森山直太朗さんの言葉が響きます。
実際、社会的サポートはひどいものです。矛盾していることに気がつきもしない。
介護は家族がやるものと強いられ、仕事をやめて、親を介護して、困窮してしまったにもかかわらず、生活保護を申請すると「あなたは働けるでしょ」と受け付けてもらえない現実があります。
お上が、現実に困っている人々の視点でものを見ることができたら、異なった思いはあっても、追いつめられることはないのではないかと思います。
こうした重いテーマを世に問おうとする「ロストケア」のスタッフに敬意を表します。
ドラマも映画も、それぞれの視点で、それぞれの見せ方で、社会を描くことによって、社会へ伝える声へとなることを大事にしてほしいと思います。
是非、観て欲しい映画です。