授業で、福祉の大切さを伝える動画を作る小学校が最近増えているようで、担任の先生方からシナリオの書き方や撮影方法に関するお問い合わせやご相談をよくいただきます。
そこで今回は、兵庫県の小学校でオンラインにて実施した出前授業「キッズシナリオ」の模様をご紹介。
=今回の概要==============
・サービス名:「<キッズシナリオ> 動画を作ろう!」
・目的:福祉の大切さを伝えるPR動画を作る
・対象:三田市立 学園小学校 4年生
・時間:各90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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福祉の大切さを伝えるPR動画を作るには、どんなことに気をつければいいのか。シナリオ・センターの新井がお伝えした一部を、広報の齋藤がリポートいたします。
まずは、シナリオを書くときの注意点からご紹介
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--学園小学校 4年生の皆さんは、ユニバーサルデザイン(※)、身近なバリアフリー、盲導犬、点字、手話、車椅子、障がい者スポーツについて紹介するPR動画を作ります。
※年齢・能力・状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品・建物・環境をデザインする、という考え方
現在の進捗状況を聞いてみると、動画の“もと”となるシナリオは既に出来ているとのこと。その原稿を書くにあたり、取り上げたい各テーマについて自分たちでかなり詳しく調べていて、皆さんの知識の深さに、新井びっくり!
〇新井:みんな既にいろいろと調べてくれているから、例えば点字のことを紹介する人は、点字に関することも、点字のどんなことを・何のために・どんなふうに伝えたいのか、ということも、もう自分たちで分かっているとは思うんだけど、今日はまず「シナリオを書く上で大切なこと」からお話ししたいと思います。
シナリオはもう出来上がっているみたいなので、これからお伝えする「4つのポイント」を押さえられているかどうか、あとでチェックしてみてください。そのポイントはこちら。
①何のために動画を作るのか
②誰に見てもらうのか
③動画で伝えたいことは何か
④見る人にどんな気持ちになってほしいのか
〇新井:この①~④は、みんななんとなくは分かっているとは思うんだけど、はっきりと「文字」にして、チームみんなで意識・共有するというのが大切。そうすることで、伝えたいことが最後までブレない動画を作ることができます。
--皆さんにはこちらのプリントに①~④を書いてもらいます。
――途中、生徒さんからこのような質問がありました。
〇生徒さん:「②誰に見てもらうのか」は「学園小学校以外の小学生たち」なんですけど、これで大丈夫ですか?
〇新井:それだとちょっと幅が広いかな。というのは、小学1年生の子に見てもらいたい動画と、小学6年生の子に見てもらいたい動画では、言葉の選び方や内容が少し変わってくるでしょ?
〇生徒さん:ああ!
〇新井:もっと具体的に、でもシンプルに、学園小学校以外のどんな人たちなのか、を絞ってみてください。
--担任の先生も「ここで対象をきちんと決めておいた方がいいですね」と少し時間をとって視聴者の対象を決めることに。
--すぐに皆さんから「福祉って、低学年の子の方が知らない人が多いんじゃない?」「でも1・2年生にはちょっと難しい表現も出てくるかもしれない」「だったら、3・4年生ぐらいがいいのでは?」等々、色々な意見が出ました。
話し合いの結果、「②誰に見てもらうのか」は「学園小学校以外の3年生以上の人たち」に決定。
〇新井:こんな風に、①~④を考えていくと、動画の“骨子”が出来上がるので、事前に考えておくとスムーズにシナリオが書けますし、今回のようにシナリオが出来た後に考えると、自分たちが撮りたい動画について整理することができるんです!
――Zoomの画面に映る皆さんが「うんうん」と頷いております!
アップとロングの使い分けを意識
--次に皆さんにやっていただいたのが「絵コンテ」。シナリオが出来たらすぐに撮影に入るのではなく、この“ひと手間”を加えます。
〇新井:絵コンテは、「このシーンではこんなことをこんなふうに伝える」というのをチームのみんなで把握するための方法なんです。撮影に入る前に絵コンテを描いておけば、現場で「え?このシーンはこう撮るの?」「私はこう撮ると思っていたんだけど」みたいな“擦れ違い”を防ぐことができます。
--まずは練習です。プリントには短いシナリオが書いてあります。それを映像化するためにどんな“絵”にするか。四コマ漫画のように4つの枠の中に、簡単なイラストを描いてもらいます。
新井が特に注目したのが、シナリオに書いてある最後の一行。
〇新井:「紙のはしに小さく『X・Y・Z』と書いてある」という文章がありますよね。皆さん、どんなイラストを描きました?A・B・Cの三択で聞いてみよう!
Aのように描いた人、手を挙げてください!
〇新井:では、Bのように描いた人!
〇新井:最後に、Cのように描いた人!
〇新井:おお!Cが多かったですね、大正解!
Cで描いてくれたような撮影サイズを「アップ」と言います。
で、たぶん、このコマ以外は、全体が分かるサイズでイラストを描いてくれたと思います。これを「ロング」もしくは「ルーズ」と言います。
ぼくたちの“目”は、日常生活ではずっとロングで見ているんです。意識してグッと顔を近づけないとアップで見ないでしょ?
--Zoomの画面に映る皆さんが「うんうん」と頷いてくれています。
〇新井:だから動画を作るときも、油断していると全部ロングで撮っちゃうんですよ。そうすると「観てくれる人に、何に注目してほしいのか」が分かりづらくなってしまうんです。
では、もうひとつ練習。こちらの点字ブロックの画像をご覧ください。
〇新井:この画像にはテロップで「点字は目が不自由な人にとって大切なものです」と入れます。
作っている側は、黄色いところが点字ブロックだと分かります。でも、ロングで撮っているので、観ている人の中には「え?どれを説明しているの?」と戸惑ってしまう人もいるかもしれません。
だから映像の場合は、最初にロングで点字ブロック全体を撮ってから、
〇新井:その次に、点字ブロックをアップで撮る。
〇新井:写真の場合だった、これらの画像を2枚、載せればいいんです。こうやってアップとロングを使い分けてくださいね。
特に今回のように、福祉の大切さを伝える動画を作るときは、いま例にしたような点字ブロックや、それからユニバーサルデザインや盲導犬や手話など、ロングではちょっと伝わりづらいときがあるんじゃないかと思います。例えば、詳細を説明したいときとかね。アップにした方が、そのモノ自体が良く見えるし、観ている人に機能や特徴が伝わりやすくなりますよね。だから、アップとロングの使い分けを意識して撮影してみてください。
〇生徒さん:はーい!
--この後、残りの時間で、先ほど①~④を書いてもらったプリントに、自分たちが作る動画のシナリオと絵コンテを描いてもらったり、動画撮影に関する質問・相談コーナーも実施。
最後、生徒さんからこのような感想をいただけました!
・すっごく分かりやすかったです。
・絵コンテのことを知ることが出来て、それから描けるようにもなってすごく良かったです。
・今日教えてもらったことは、すごく役に立つと思います。
・これから動画を撮影するので、今日教えてもらったアップとロングを活かしたいと思います。
--さて、どんな動画が完成するのでしょうか!新井とともに楽しみにしています!
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福祉の大切さを伝える動画、というと、「シナリオに書く“内容”をどうするか」に特に意識がいってしまうかと思うのですが、新井が言ったように機能や特徴を分かりやすく伝えるためには「アップとロングの使い分け」も忘れてはいけない大事なポイントです。「なるほど!」と思われた方も多いのではないでしょうか?
こんな風に、シナリオ・センターで実施しているキッズシナリオや、その他の大人向けの研修では、「実はこんなシナリオの技術で、こんな“ひと手間”で、グンとレベルアップします」というコツをお伝えしていますので、ご興味ある方は是非お気軽にお問合せください。
※PR動画の作り方についてはこちらの書籍も是非。
新井一樹 企画・構成・著
改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』 (「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/執筆 川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
※ご参考までにこちらの記事もご覧ください。
▼「コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ」