訃報
シナリオ・センター代表の小林です。シナリオ・センターは今年創立53年になります。
創立から半世紀を過ぎ、700名以上の脚本家、小説家を輩出できたことは大きな喜びですが、ここまで年月を重ねた故に悲しいことも増えてきます。
一番の悲しいことは、シナリオ・センターにかかわってくださった方の訃報です。
所長後藤千津子に次いで、シナリオ・センターの講師であり、脚本家、監督の高山由紀子さんが6月2日ご逝去されました。享年83歳。最近の寿命からすれば早すぎた気がします。
高山由紀子さんは、シナリオ・センターに入られて、あっという間にデビューされた方のお一人です。
75年に映画「メカゴジラの逆襲」で脚本家デビュー。その時「これはすべて新井先生のおかげ。どこまでもついていきます」と仰ったことを想い出します。
その後「月山」「遠野物語」「真幸くあらば」などの映画の脚本、テレビでは時代劇「必殺シリーズ」など多数手掛け、映画「娘道成寺・蛇炎の恋」では、脚本・監督をされました。
映画化された「源氏物語 千年の謎」や「吉原代筆人 雪乃」シリーズ、「花魁くノ一」など小説も書かれており、父である日本画家で文化勲章受章者の故高山辰雄さんを語った「父 高山辰雄」も上梓するなど、細い体のいったいどこにこれだけのエネルギーが隠されているのだと思うほど八面六臂の活躍をされていました。
シナリオ・センタ―でも長く作家集団の講師を務めてくださっていたのですが、骨折を繰り返し、コロナもあり、この3年ほどはご自宅で過ごしていらっしゃいました。
通夜は6月11日日曜日、葬儀は12日、この3年近くお会い出てきていなかったので、お見送りできることがせめてものと思っています。元気なお顔にお会いしたかったのですが。
ご冥福をお祈りします。合掌。
描く
第44回シナリオS1グランプリが発表されました。
■準グランプリ
『この一瞬のきらめきを』(部門①) 桐乃さち
『スッカスカだね!お父ちゃん』(部門②)境田博美
■佳作 『あなたの為に』(部門①)稲毛あずさ
■奨励賞
『鈴峰エレン、二十代。昭和の冒険』(部門①) 周南カンナ
『ぐるぐるまわる』(部門②)桐乃さち
『クオラ!』(部門②)高橋英樹 ※順不同
おめでとうございます。
6月20日、シナリオS1グランプリ授賞式と審査員でもある浅田講師のコンクール公開講座が行われます。
対面とオンラインのハイブリッドで行われますので、奮ってご参加ください。
ドラマ誌6月号に、現在放映中の「日曜日の夜ぐらいは・・・」(ABCテレビ・テレビ朝日系)の脚本が掲載されています。
言わずと知れた出身ライターの岡田惠和さんのオリジナルです。
作者ノートの中で、岡田さんが書いていらっしゃることに、深く感銘しました。
ベテランの大御所脚本家ですら、いや、だからこそ言えることなのですね。
「自分が今、何を描きたいと思っているか、そしてそれは独りよがりの、自分のためだけのドラマになっていないか。世の中の人が見たいと思う物語になっているだろうか。視聴者とともに幸せな時間を共有できる可能性があるだろうか。役者がこの役、このシーンを演じたい、このセリフを言いたいと、思えるのものになっているだろうか。演出家が早く撮りたいとワクワクしたりするものだろうか。自分の好きな得意な世界を描くのはいいけれど、単なる引き出しの中から出した再生産になってはいないだろうか。『今風』ではなく自分のとっての『今』が描けているだろうか。そんなことをぐるぐる、ぐるぐる考えながら紡いでいます。」(ドラマ誌6月号から抜粋)
世阿弥の三大深切「座元に深切・役者に深切・お客に深切」ですね。
コンクール応募作品も20枚シナリオも同じです。
こういう想いを常に心の片隅、頭の片隅に置いて、描いているでしょうか。
きちんと他人に伝えたいと思いながら描いているでしょうか。
「自分はこういうつもりで書いたのに・・・」、作者の思いだけでは伝わらないことを、岡田さんは教えてくださっています。