「20枚シナリオで本当に書く力を鍛えることができるの?」「20枚シナリオばかり書いていても長編を書けるようにはならないのでは?」と疑問をおもちの方は特に、今回のお話を参考にしていただければと思います。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
基本をみっちり仕込むことが必要
昔からボクシングが大好きでしたので、試合を見るだけでなく、ボクシングジムまで訪れて練習を見ることもありました。
新人がだいぶ入ったというので、リング上での練習を楽しみにして見に行ったところ、縄跳びをしたり、サンドバッグを叩いたり、パンチングボールを飽きずに叩いたり、シャドウボクシングをやっている人ばかりで、リングの上は空っぽです。勝ち負けがあったほうが面白いので、どうしてしないのかトレーナーの人に訊いてみました。
「ああ、まだやりませんよ」
「えっ、どうして」
「あんなのをリングにのせても1分と持ちませんよ。新人にはまだ耐える力はないのです。基本をみっちり仕込むことが必要なので、パンチの弱い奴はああやってサンドバッグを叩かせて力をつける。縄跳びではフットワークをつけさせる。パンチングボールを叩くことでタイミングを腕に教え込むのです」
“リング”で戦える力をつけるために
弱いところがあれば強いほうに転じるよう練習させ、更に強いところがあれば、もっと強くなる練習をさせるという一種重点主義なのです。それはどちらかというとつまらない退屈な練習ですが、それに耐えるかどうかが成否の分かれ目なのです。
シナリオだと発想の弱い人、セリフがうまくない人、語り口がたどたどしい人などいますが、それらを直すにはどうすればいいのか。
リングに上がった選手に、いくらリングサイドから「右、右!」と叫んでも聞こえないそうです。作品として仕上がったものを「セリフがうまくないですね」と言っても、どこだかわからないのと同じなのです。
なので「20枚シナリオ」を書くのです。20枚なら「このセリフとこのセリフを逆にしたらもっと強く訴えらえる」というような添削があって、初めてその人の血となり肉となるのです。
効率的進歩をするためには、理論的なプロセスがあって、一つずつ理解した上で更に積み重ねる方式がいいのです。ちょうど算数で足し算をマスターした上で引き算を覚え、その上で掛け算となるように、途中を抜かしてはわからなくなるのと同じなのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1990年7月号新井一「20周年記念講座」/2017年8月号「新井一.com」
★次回8月8日に更新予定です★
※こちらの記事も併せてご覧ください。
▼20枚シナリオを書く意味/実践のための手段
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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