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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

観て聴いて

高野豆腐店の春 プログラム

映画「高野豆腐店の春」

シナリオ・センター代表の小林です。ずーっとここのところ心の片隅にとげのようなものが刺さっていて不愉快な気分でした。
ニュースを見るたびに非道なことしかやらないお上に対して腹が立ち、それに抵抗しない下々私たちの不甲斐なさが情けなく、怒りながらも何もできない自分自身への歯がゆさに苛立っていました。
そんな私が、久々に爽やかで暖かな気持ちの時間を持つことができました。

映画「高野豆腐店の春」三原光尋監督・脚本の映画を観てきました。
愚直で職人気質の辰雄(藤竜也)と明るくて気立てのいい春(麻生久美子)との父娘の物語で、格別の大きな事件やトラブルが起こるわけでもなく、50近くなった娘がまだ結婚をしないことへの心配、豆腐屋を継ぐように手伝ってくれる喜びとの繰り返しのささやかな日常と、父娘の周りの人々との縁(えにし)が尾道の風景と相俟ってとても気持ちよく描かれており、何故か見ているとほっとします。深呼吸できます。

尾道が舞台ということもあって小津作品のようだという感想も多くあります。
確かに、三原監督は尾道が戦後の日本を代表する名作「東京物語」(小津安二郎監督・1953)、「裸の島」(新藤兼人監督・1960)のロケ地であることがあって、尾道を舞台にしたそうです。
なるほどなぁと思いました。尾道を選んだのはそういうことかと。
三原監督は、本当にさりげなく、でも、広島に、日本にまだ戦争の、原爆の爪痕が残っていること、それでも人々は暮らし続けていることをきちんと伝えたかったのではないかと思います。
映画の背景には、主人公の辰雄自身も、彼と惹かれ合うふみえさんは被爆体験者でもあり、亡くなった親友の代わりに親友の妻と娘を守ってきた辰雄、その妻も血液の病気で早くに亡くなり、ひとりで親友の娘、春を育ててきた辰雄たちの姿があります。
「生きる」ということへの思い入れを強く感じました。

優しい心を持つ人々、辛い過去をもちながら強く生きる人々が、ちゃんと毎日を大切に生きていて、肩ひじはらずに生きるって素敵だなぁとしみじみと思わされました。
こんな世の中どうなっちゃうのと思っている方には、とくにお勧めです。やさしい勇気をもらえます。

高野豆腐店の春ミソ帳倶楽部

この映画、シナリオをどうやって作ったんだろうと思われた方、是非とも見てみたいという方、明日の夜、ミソ帳倶楽部に三原監督をお招きして、お話を聴いちゃいますよ。
是非おいでください。オンラインもありますから、遠方の方も大丈夫。19:00からですが15分前まで受け付け出来るそうです。(シナリオ・センターHPをご覧ください)
脚本家をめざす方は特に、どんなお話しなら映画化になるんだろう、知りたいですよね。

原作ものの映画が多いなかで、「おとなの自主映画を作ろう!」という合言葉のもとに進んだという本作品が、どのように作られたのか、企画がどのように成立したのか、脚本作りはどのようにすすめられたのかなど、映画『高野豆腐店の春』のお話を中心に、脚本を書く際に大切にしていること、映画作りの魅力など、皆さんのモチベーションアップにもつながるお話をしていただきます。
質疑応答のコーナーもありますので、撮影秘話についてもお聞きいただくことができます。是非、ご参加ください。
本講座にご受講の方は、映画『高野豆腐店の春』の鑑賞チケット付きとなります。
ムビチケでのお手続きは簡単ですので、ご安心ください。

尾道シネマ支配人は「連日拍手が湧く作品は、開館15年間で初めて。地元の皆様の心に長く刻まれていく作品になったのは、間違いありません」とSNSでコメント。
レビューのスコアも4・4、4・0と高い評価をうけているそうで、こういう映画は長く見てもらえるのだろうなと思います。

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