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物語のタイトルをつけるとき
第3回 3行ストーリー大賞2023 結果発表会より

物語のタイトルをつけるとき/第3回 3行ストーリー大賞 2023より

春を過ぎると「今年も3行ストーリー大賞やりますか?」といったお問い合わせをいただくようになりました。夏の恒例行事になりつつあるようで大変うれしく思っております。

勿論 今年も実施しました、第3回目となる「3行ストーリー大賞 2023」。今回のお題は、恋愛物 or 青春物。応募総数は855本(前回:540本)。結果発表会はYouTubeでライブ配信しました。

メンバーは、(写真右から)企画・進行役の新井、企画・審査委員長の柏田道夫講師(脚本家・小説家)、審査員の萩原恵礼さん(柏田クラスOG・脚本家・『月刊シナリオ教室』編集部)。結果発表会では、柏田講師と萩原さんが特に気になった作品33本を発表後、最優秀賞・柏田道夫賞・はぎわらちゃん賞を決定しました。

これまでの3行ストーリー大賞でも、トップシーン 脚本大賞()でも、柏田道夫講師がいつも皆さんにお伝えしていることがあります。それは「タイトルは作品の顔」だということ。今回、最優秀賞・柏田道夫賞・はぎわらちゃん賞を受賞した各作品も、受賞理由のひとつは、やはりタイトルでした。

そこで、「タイトルを決めるのに苦労している」「考えすぎた結果“これでいっか”的に決めちゃう……」という方に向けて、発表会でご紹介したタイトルに関するコメントを主にご紹介。タイトルを見て「お!」と思わせる、この“つかみ”の部分を抑えるにはどうしたらいいか。参考にしてください。広報の齋藤がリポート致します。

まずは、魅力的なタイトルの例として各受賞作品をご紹介

*

最優秀賞
北川由美子さん『人形命与命被与(ひとがたにいのちあたうもあたえられるも)』

・ジャンル:青春物
元天才子役のスイは、事故で顔に大ヤケドを負い、芸能界を引退する。孤独な引き籠り生活の中で文楽に出会ったスイは、人形遣いとしてもう一度芝居の三昧境を目指す。

〇柏田:ふたりして一致したのがこちら。まずこのタイトル!いっぺんでは読めないんだけど惹かれる。設定もね、過去とハンデをもった女の子が文楽の世界で、人形遣いとしてもう一回輝こうとするというのがすごく分かりやすくていいし、だからこそ逆に、この難しいタイトルが活きてる。

〇萩原:伝統文化ならではの難しさの中で、元子役の演技力を活かしてのし上がっていく姿を見たい。そこまで想像できちゃう、想像したくなる作品でした。

※実は、北川さん、第1回目でも最優秀賞を受賞されています↓
3行ストーリー大賞  結果・講評

 

柏田道夫賞
斉藤恵里さん『はい、のり弁!』

・ジャンル:恋愛物
初恋の彼が五歳の子供を連れ突然、私の弁当屋に転がり込んできた。「その子は?え、あなたの子?」淡い恋心も打ち砕く典型的ダメ男の彼と子供、私の3人暮らしの幕が開く。

〇柏田:タイトルが好き。内容とかもすごく新しいというわけではないんだけど、でも、コメディ&ホームドラマ的な恋愛ドラマという設定を、この『はい、のり弁!』っていうタイトルが表していて、いいなと思いました。

 

はぎわらちゃん賞
梅野きいろさん『箪笥の香り』

・ジャンル:恋愛物
「気晴らしでもしてきて」。純一は、妻がくれたチケットを手に、カンカン帽に白靴と久々にめかし込んで劇場に向かった。劇場の席に着くと、隣に座ったのは前妻だった。

〇柏田:あ!これ僕も好き。

〇萩原:まずタイトル。

〇柏田:いいよねぇ。

〇萩原:樟脳とか、そういう“匂い”がタイトルから感じられる。

この短い文章の中で、大正とか昭和初期みたいな時代性も感じられる。

劇場の隣の席に前妻が座っている、というちょっとミステリー的要素もあるし、「妻の思いやいかに」っていうところも気になるし、作品の世界観も出ていていいなと。映画にしたらすごく雰囲気が出ると思うし、こういう作品を撮りたいと思っている映画監督さんもいそうだなという感じがしました。

求められているのは“既存の作品とは違う新しい何か”では?

――3行ストーリー大賞でも、トップシーン 脚本大賞でも、ご覧いただいた方々から大変ご好評いただいているのが、萩原さんによる通称「萩原メモ」。これは、「応募作で特にこういう感じのものが多かった」という“今回の傾向”を端的にまとめてくださったパワーポイント画面です。

今回は「既視感のあるタイトル」と題して、タイトルに使用されていることが多かった5つのワードについて解説していただきました。それがこちら↓

①「アオハル」が使われているタイトル

②「AI」が使われているタイトル

③「推し」が使われているタイトル

④「2回目」「二度目」が使われているタイトル

⑤間に「の」などを入れずに ひとつのワードにする「漢字(日本語)+カタカナ(英語)」のタイトル

〇萩原:855本、目を通すと「あれ?この単語また出てきた」というのがものすごくあったんですね。それがこの5つです。

「2回目の〇〇」「二度目に〇〇」というタイトルの作品は、初恋の相手にもう一度恋をしたり、初恋のときはダメだったけどもう一度チャレンジするとか。内容は違っていたとしても、同じ感じのタイトルが並んでしまうと、どれがどれだか分からなくなっちゃうんですよ。

それから、「推し」みたいにもう世の中に広まっている言葉を今から使おうというのはちょっと既視感があるし、流行っているものに乗っている感が出ちゃうんですよね。

例えば、プロデューサーやディレクターの方から「何かアイデアを」と自分にチャンスが巡ってきたとき、求められているのは、新しい発想やワードだったり、既存の作品とは違う“新しい何か”だと思うんですよ。新人にアイデアを出してと言っているわけですから。そういうときに、既に使われているワードを使ってしまうと、いくら内容が良くても損しちゃうかなと。

それに、いま流行っている言葉だとしても、作品として完成するのは1年後とか2年後。その時はもう古い言葉になっていて、ワンテンポずれてる感が出ちゃう。だったら使わない方がいいのでは、と思います。

――この他、タイトルに関して柏田講師からこんなお話も。

〇柏田講師:今回ね、「もじりタイトル」というか「ぱくりタイトル」も多くて。設定は面白いものもあったんだけど。懐メロのタイトルとか、名曲の歌詞の一部とか、有名な番組のタイトルとか。それを敢えてそのまま持ってくるというのは、う~ん、面白いと言えば面白いんだけどね……。

〇新井:やっぱりタイトルは作品の顔だから、「このタイトルで他の作品と被らないか」「本当にそこにオリジナリティがあるのか」みたいなことは考えたほうがいいのかもしれないですね。

タイトルと3行でいかに「この話、面白そう!」と思わせるか

――タイトルでお悩みの方、いかがでしたでしょうか。あくまでも「参考」ではありますが、作品のタイトルをつけるとき、今回ご紹介したことをヒントにしていただければと思います。

売れる企画・面白いアイデアは一言でアピールできる、といわれます。だから、この3行ストーリー大賞を、「企画の売りやアイデアの面白さをいかに短く表現できるか」の“訓練の場”として活用していただけたらと思っています。

また来年も開催予定ですので、タイトルと3行でいかに「この話、面白そう!」と思わせられるか、腕試ししてみてください。来年応募していただく方に向けて、最後にこちらの柏田講師のコメントを。

〇柏田講師:3行ストーリーを書くときは、 どういう設定で、どういう展開になるのか、を分かるように書いてください。今回、ポエムというか、小説の出だしのような文学的になっているものが結構ありました。文章はキラキラ美しくて、雰囲気は伝わるんだけど、どういう話か分からない。3行ストーリーは、物語の方向性や“誰が何をするのか的な部分”はある程度 具体的に書いてほしい。企画を立てるってそういうことですからね。「なるほど!この話をドラマや映画にしたら面白いな」と思わせてほしいです!

 

*     *     *

▼「第3回 3行ストーリー大賞 2023」発表会全編は現在もご覧いただけます

トップシーン 脚本大賞についてはこちらを

トップシーン 脚本大賞 結果・講評

トップシーン脚本大賞2022 春

※3行ストーリーについてはこちらの記事も

3行ストーリー大賞 2021結果・講評

ミステリー書きたい人“あるある”/ 3行ストーリー大賞2022より

三行ストーリー 書けますか?

※タイトルについてはこちらの記事を

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