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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

想像すること

喫茶おじさん(小学館刊)

銭湯の日

シナリオ・センター代表の小林です。今日は銭湯の日なんだそうです。銭湯の日、いいですね。
なによりも戦闘でなくてよかった、世界中の紛争を見るにつけ、ゆるゆるの銭湯の日はなんだか嬉しいし、このまま将来もずーっと10月10日は銭湯の日であり続けて欲しいと願います。
それにして、なんで世界中好戦的になっているのでしょうか。
地球人類全体の未来が危ないというのに、なんで情けないほど想像力のないケチ臭い考えで、人間は動くのでしょうか。
結局、大事なのは人の心の問題なのではないかと思います。
何をするにも何かを犠牲にしなければならないことは多いとは思います。
今問題の神宮外苑の樹木もそうですが、本当に何百年もかけて茂った樹木を伐採しなければならないほど、高層ビルは必要なのでしょうか。
その大きさ、高さ、便利さは本当に必要なのでしょうか。高層ビルは何百年先の人の心を癒してくれるのでしょうか。
新しい樹木は何百年も経たなければ、今のようにならないことを想像して欲しいです。
文化は一朝一夕に創れないことを知って欲しいです。
これから未来を担う者たちへ伝えたい心とは何なのか、何が大事なのか。
こんな殺伐とした時代だからこそ、今一度世界中の人に立ち止まって考えて欲しいと思います。
人類が生き延びるためには、それぞれが他人にやさしく生きるという文化を創り上げていきませんか。

喫茶おじさん

出身作家原田ひ香さんの新刊がでました。
「喫茶おじさん」(小学館刊)
原田さんの本はタイトルからして読んでみたくなります。
今書店では、「古本食堂」が文庫ベストセラーランキングに入っているほど。

「喫茶おじさん」は、なんと57歳のおじさんが主人公。大手ゼネコンを早期退職した純一郎、再就職の当てもなく、妻とも別居中の彼は、これといった趣味もなく、お気に入りの喫茶店でも探そうと思っていた。
自宅近くの喫茶店で「よくあんな知ったかぶりの客の相手をしてられますよね」という店員の声。
実は、喫茶店のカウンターで、初老のマスターにちょっとコーヒーのうんちくを話しかけ、気分良く店を出た純一郎のことだった。
ショックを受けた純一郎は、その恥しさを払拭しようと銀座1丁目の喫茶店に入り、名物のタマゴサンドとブレンドを頼んでそのおいしさに感動。
趣味を「純喫茶めぐり」にしようと決める。
彼はバツイチで2度目に結婚した今の妻と大学生の娘がいるのだが、妻は娘のアパートに住んで別居中。
何故?と思っている彼に娘の「お父さんって、本当に何にもわかっていない」の一言が突き刺さる。
そして、同じように元妻、友人たち、現在の妻などにも「本当になにもわかっていない」と言われ続けてしまう意味を、東銀座、新橋、学芸大前、アメ横、渋谷、池袋、京都・・・とコーヒーとお店の看板の味を楽しみながら、自分と向き合っていきます。

彼は純喫茶を巡りながら人生を考えていくのですが、まあ、原田さんの美味しい純喫茶めぐりは果てしもない。
純一郎でなくても、巡りたい。私が知っているであろうお店も出てはくるのですが、「ランチ酒」でも「古本食堂」でも思いましたが、もう驚くほどよくご存じで。
初版本限定の「著者おすすめ喫茶リスト」で答え合わせを、行ったことないお店探訪をしようと心に決めています。

と言っても純喫茶店探訪の本ではもちろんありませんよ「喫茶おじさん」。
「なんにもわかっていない」純一郎の57歳にしての成長物語です。
このキャラクターがことのほか愛らしい。いい人な、絶望的。
ホントこういうおじさんっていっぱいいますよね、偉そうに言うけど含蓄もない、相手に対する想像力もない人って。

原田さんのうまさは、当たり前すぎてしまいますが、人間の本質を描いて、それもさらっと気楽な喫茶店話のようにみえながら、奥が深い。そのバランスがすごい。
登場人物それぞれに寄り添いながら、読者に寄り添っていることがよーくわかります。今日も一日頑張ろうと思えます。

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