日本放送作家協会九州支部 主催、日本脚本家連盟九州支部/日本脚本家連盟寺島アキ子記念委員会 後援の「第17回南のシナリオ大賞」。募集作品は、15分のラジオドラマのシナリオ(400字詰原稿 15枚以内)でテーマは自由。ただ、「シナリオの中に1回以上、九州か沖縄の地名が登場すること」。
応募総数252篇(前回276篇)の中から、今回は大賞1篇、優秀賞3篇が選出され、立石えり子さん(作家集団 大前玲子講師担当クラス)の『株式会社ホワイト』が優秀賞を受賞!
受賞を記念して立石さんにコメントをいただきましたのでご紹介。
「映像作品もラジオドラマも表現手法が違うだけで、根本のところは同じなのではないかと常々思っています」という立石さん。こちらをお読みいただくと、「ラジオドラマは映像ドラマよりもセリフを書くのが難しそう……」という方も、挑戦したくなるのではないかと思います。
優秀賞受賞作『株式会社ホワイト』立石えり子さん
「小気味よい博多弁の啖呵も含め、セリフのやりとりが面白くなるように」
=あらすじ=
ハラスメント防止が徹底されている株式会社ホワイト。課長の愛子は部下の業務も肩代わりし、夜中まで残業するなど疲弊していた。そこへ見回りに来た老警備員が「ワシは死んだ祖父ちゃんの鬼平だ。助けに来た」と言い出し、愛子の体に相乗りしてしまう。翌朝から愛子の発言は相乗りする鬼平による昭和の鬼上司の本音がさく裂。愛子の豹変に部下たちは戸惑う。そんな中、福岡の愛子の母が倒れた。が、部下たちは愛子が母の元に行くことに難色を示し、業を煮やした愛子は「会社を辞める」と言い残して母の元へ。鬼平は、今度は愛子の部下の澤村の体に相乗りする。一方、容態が落ち着いた愛子の母は「頑張りすぎてはいけない」と愛子を諭す。愛子が職場に復帰すると部下たちは団結して仕事を進めていた。新入社員の西田も成長したいので今後は厳しく指導して欲しいと言う。安心したのか鬼平は天国に帰っていく――
――まずは受賞のご感想を。
〇立石さん:これまでの受賞作を拝見するとハートフルな作品が多く、拙作のようなコメディタッチのものは受賞は難しいのではないかと考えていましたので、受賞の連絡をいただいた時には「本当にあれでよかったのか」と少し戸惑ってしまいました。ですので、電話を切ってからじわじわと嬉しさがこみ上げてきたというのが正直なところです。
南のシナリオ大賞への応募は昨年に続いて今回が2度目です。昨年は3作応募して、2作が一次審査だけ通過しましたが、ウェブサイトに掲載される通過作品への“ときに辛辣なコメント”が嬉しく、それをまた拝見したくて今年も1作品だけ応募しました。
ひとつひとつの作品を丁寧に読みこみ、最終審査だけでなく、一次審査や二次審査を通過した作品に関してもコメントを下さる審査員の方々のお骨折りには敬意を表します。今回、優秀賞に選んでいただき 感謝の気持ちでいっぱいです。
――ラジオドラマを書こうと思ったキッカケは何ですか?
〇立石さん:何年か前に、創作ラジオドラマ大賞に応募したのが最初だったと思いますが、その頃から勉強のために「FMシアター(NHK)」などのラジオドラマを聴き、自分の頭の中で映像を広げていくような感覚、その奥深さに魅了されました。ただ、「これを伝えたい」という気持ちでドラマを描くという点では、映像作品もラジオドラマも表現手法が違うだけで、根本のところは同じなのではないかと常々思っています。
――受賞作『株式会社ホワイト』を書こうと思った経緯を教えてください。
〇立石さん:SNSなどが普及する中、却ってコミュニケーションが難しい時代になったと感じています。特に職場の管理職の方はハラスメント防止も含めた働き方改革を進める中で過剰に神経質になってしまい、気がつけばきちんと言うべきことも言えなくなって、精神的にも肉体的にも疲れ果てているということもあるのではないかと。
そんな管理職が口にできない心の奥底を、昭和の鬼上司だった「お祖父ちゃん」の鬼平が乗り移って代わりに言い始めたらスカッとするのではないかというところから発想しました。もちろん鬼平の言動は今の世の中では完全に「アウト」なんですけどね(笑)
――セリフで特に気を付けたことがありましたら教えてください。また、映像のないラジオドラマで、どの登場人物が喋っているのか、リスナーが混乱しないようにするために心掛けたことはございますか?
〇立石さん:特に私のような初心者がラジオドラマを書く際には、同じ年代で同性の複数の登場人物のセリフ(声)を「聴き分けてもらう」のは難しいと聞いていましたので、そこはなるべく被らないように気を付けたつもりです。
また、今回の作品は、主人公やその部下に別人格(お祖父ちゃん)が乗り移るので、同じ人のセリフの中で、<☆☆印>は通常モードで、<★★印>はドスの効いた低音で読んでもらうように注意書きをつけました。その点については表彰式の際、「斬新でしたね」と審査員の方に褒めていただきました。<★★印>の部分は、南のシナリオ大賞らしく「博多弁」のセリフになるので、書いていて楽しかったです。
――「音で表現するラジオドラマだからこそ、こんなふうに書いた!」といったことなど、特に工夫されたところがございましたら教えてください。
〇立石さん:以前書いた作品では、SEの部分に情緒的な「音」が入るように工夫したことはありましたが、今回はコメディ調ということもあり、また、ラジオドラマのコンクールでは1時間弱の内容を書くものが多いと思いますが今回は15分のラジオドラマということもあるので、小気味よい博多弁の啖呵も含め、セリフのやりとりが面白くなるよう心掛けたように思います。
「(ラジオのモノローグは)どこまでシンプルに削れるか、を意識することが楽しいところかもしれません」
――シナリオ・センターで学んできて、今回特に役に立ったことはありますか?
〇立石さん:在籍する作家集団の大前玲子先生からは、「ラジオドラマを書く際には主人公にマイクをつけているつもりで」とよくご指導いただいています。映像作品と違い、モノローグを含めて主人公の視点で最初から最後まで書き切ること、主人公の心情がきちんと伝わることが大切なのだと思いますが、私にはまだまだできていないところも多く、今後も精進していきたいと思っています。
――では最後に、ラジオドラマを書く楽しさや魅力、もしくはおすすめの勉強法など「ラジオドラマを書いてみたい」「コンクールに応募してみたい」という方に向けてメッセージをお願い致します。
〇立石さん:先日、創作ラジオドラマ大賞の公開講座で脚本家の藤井香織さんも仰っていたのですが、もしもまだラジオドラマを聴いたことがないという方がいたら、まずはいくつか聴いてみて、ご自分で楽しむ、面白がることが大切なのではないでしょうか。
また、今回の受賞作ではほとんど入れていないのですが、モノローグについて。映像作品でもモノローグを入れることはありますが、ラジオドラマは当たり前ですが聴いている方には何が起こっているのか「見えない」わけで、状況の説明という点からもよりモノローグがより重要になってくると思います。その際、「どこまで書くか」というより「どこまでシンプルに削れるか」を意識することが書いていて楽しいところかもしれません。
* * *
「ラジオドラマってセリフの書き方が難しい」と思われていた方も、今回ご紹介した立石さんのコメントをお読みいただくと気を付けるポイントがお判りいただけたのではないかと思います。ぜひ次回の南のシナリオ大賞に応募してみてください。
なお、立石さん作『株式会社ホワイト』のシナリオは、その他受賞作品とともに2024年1月10日より、南のシナリオ大賞公式サイトで公開予定とのこと。こちらも是非チェックしてみてください。
「南のシナリオ大賞に応募したい!」という方はこちらも!
シナリオ・センター在籍生・出身生はこれまでも「南のシナリオ大賞」で受賞されています。
こちらの記事も併せてご覧ください。
■第16回南のシナリオ大賞 優秀賞 谷口あゆむさん&橋本直仁さん
■第15回南のシナリオ大賞 大賞 荻安理紗さん&優秀賞 竹上雄介さん
▼南のシナリオ大賞の公式サイトでは、ラジオドラマ化された受賞作を聴くことができます。
「南のシナリオ大賞 – 日本放送作家協会 九州支部」
- 「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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