痛み
シナリオ・センター代表の小林です。寒いです。
東京がこんなに寒いのだから、能登半島で被災されていらっしゃる方はどれだけ寒いかと。身体だけでなく心は凍り付いているではと思います。
私たちも何とか支援できないかとは思うのですが、今のところ、義援金もどこへ出せば有意義に使ってもらえるのかわからず、周りのほとんどの方も引いている状態です。
公的機関をイマイチ信用できなくなっている身は誰を信用すればいいのか、災害時に援助するNPO法人を使うのがいいのか、どうすることが一番いいのか、呆然と被災地のニュースを見ては、悩むばかりでなにもお役に立てないままです。
能登半島地震の救援の仕方は、明日被災から29年目を向かる阪神淡路大震災を教訓にして救援に動いた東日本大震災、熊本地震などと大きく差があるように思います。
初動の悪さだけでなく、その後の動きもとても鈍い。
人数が足りないと言いながら何かの手立てをしたように見えないし、視察と称してお上はちらっとみただけで何の励ましにもならないきれいごとだけ言って去るだけだし・・・むしろ経験のある民間が動いた方がいいようにも思います。
暖房も満足に得られず、寒さの中で先行きも見えないまま毎日を過ごしていらっしゃる被災者の方々を尻目に、結局議員だけは悪いことをしてもヌクヌクと不起訴になったりするらしいニュースを見ると、はらわたが煮えくり返る思いです。
大元の騒ぎを作った元首相の奥様、私人のはずなのに安倍元首相の政治資金2億1千万円を無税で相続したのですから、せめて全額「ごめんね」と能登半島地震に寄付されてはいかがでしょうと言いたくなります。
追悼
ドラマ誌2月号は、脚本家山田太一氏の追悼本です。
ちょっと山田太一さんから学んだことを整理してみたいと思いながら読んでいます。
作品を見ればわかることなのですが、山田太一さんは、紳士的な優男で静かに話される方という印象が強いのですが、見た目の印象とは違い骨太のしっかりとものを言う方なのだと改めて実感しています。
山田太一さんの作品に触発されて、脚本家になられた方はたくさんいらっしゃいます。
ドラマ誌にその方々の山田太一ベスト1を載せていました。
この言葉がこれから脚本家をめざす方々へも指針になると思うので、一部出身ライターの方々の言葉を載せさせていただきますね。
「『不揃いの林檎たち』当時主人公と同じようにコンプレックスだらけの大学生だった自分に刺さりまくった、最も影響を受けた作品です。
何度も読み返して、ボロボロになったシナリオ本が書棚に並んでいます。」いずみ吉紘さん
「『想い出づくり』山田ドラマというより、すべてのドラマの中でベスト1です。目指すものがすべて詰まっている。
何度も何度も手書きで書き写しました。一番好きなシーンは最終回の父親三人でももめごとの後処理シーンです」岡田惠和さん
「『沿線地図』決まった生き方に疑問を抱いた高校生の男女が家出、同棲を始めることで、日本人の常識が大きく揺らぐ。
日常の中の刃みたいなセリフの数々の中、笠智衆さん扮する祖父の揺るがない姿に打ちのめされました」柏田道夫さん
「『想い出づくりの企画書』あえて脚本ではなく、山田太一さんの書かれた企画書をベスト1に挙げます。TBSのプロデューサーからいただいた『想い出づくり』の企画書は、自分が企画書を書く時一読します。
『これで結婚したらどうなるの?』この最初の1行で全14話のコンセプトが見える。
30ページの中に登場人物のキャラクター、あらすじ、作者の企画意図がそつなく書きこまれていて、読むうちに惹きこまれてしまう、『企画書』とよんでしまうのは畏れ多い名作だと思っています」清水有生さん
「『ふぞろいの林檎たち』新人の頃、書けなくなるたびに、このシナリオを読んでいました。
山田太一さんの作家としての圧倒的な視点、知性に、これからも手を伸ばし続けて行きたいです」橋部敦子さん
「『獅子の時代』戊辰戦争から明治の秩父困民党事件に至るまでを、徹底して敗者の側から描いた反骨の大河ドラマ。
歴史とフィクションの綯いまぜ方が絶妙で『八重の桜』を書く時、このドラマに恥じないものにしたいと強く思っていた」山本むつみさん
書き続けることはもちろん大前提ですが、他人の作品を読むことはとても大切です。
山田太一さんの視点、作家の佇まいは多くの後輩に刺激を与え続けています。
ドラマ誌2月号、インタビューの採録と「秘密」「終わりに見た街」の2脚本が掲載されています。一読を。