狢
シナリオ・センター代表の小林です。最近の楽しい話と言ったら、大谷選手のドジャーズ開幕の話、オリンピック卓球代表に張本兄妹、藤井聡太八冠の20連勝くらいで、スポーツ・文化は素晴らしいのですが、社会生活の最低さ加減は・・・壊滅的です。
元旦の地震からもう1カ月以上たち立春も過ぎたというのに、未だ体育館に避難されていらっしゃる方々が段ボール敷シートで過ごされている状況を昨日ニュースでみてびっくりしました。
段ボールベッドとか仕切りとか何故よういできないのでしょう。こんなに時間がかかっていることに唖然とします。
それなのに、国会では「記憶にございません」とくりかえす大臣に官房長官、三谷幸喜さんの映画は面白かったけれど、こちらは全く不愉快極まりない。自分の保身ばかりで災害のことなどトンと記憶にないのでしょうね。
収支報告書も、支出も収入も翌年の繰り越しも何もかも不明で提出できる政治家たちを見ていたら、自分達との違いに経理に関わっている方々はげんなりしてやる気を失うでしょう。
今年の決算はすべて不明で提出しようとさえ思ってしまいます。
まともな方たちのやる気をそぐような社会ではあっては絶対にいけないと思います。
同じ穴の狢たちが数を頼みに、相変わらず下々の怒りなどに無頓着いられることに腹立ちを感じます。
時ひらく
「時ひらく」(文春文庫刊)
物語の名手たち辻村深月さん、伊坂幸太郎さん、阿川佐和子さん、恩田陸さん、東野圭吾さんと出身ライターの柚木麻子さんが350年の時を刻む老舗デパート「三越」を舞台に描いたアンソロジーです。
今もなお、老舗デパートとして確固たる地位を築いている三越。
日本橋三越本店は、国の重要文化財になっています。
三越と言えばライオンでしょう。誰もがすぐにイメージしますよね。
日本橋本店の天女の像とパイプオルガンは、まさにデパートを越えている感じもします。
そんな三越を舞台にそれぞれの想いを物語として紡いでいます。
その中で柚木麻子さんは「7階から愛をこめて」を書かれています。
日本人の父とロシア人の母を持つアンナと弁護士を母に持つ裕福な家に生まれた奏が、アンナのいとこへのプレゼントを買いに日本橋三越へ訪れるとこから始まります。
ウクライナ侵攻の今と第二次世界大戦前とを時空を超えて描かれていて、オルゴール、パイプオルガンという音楽を通して時空を行き来します。
ウクライナ国歌「ウクライナは滅びず」を自動演奏し続けるパイプオルガン、反戦主義者と言われたやなせたかしさんのアンパンマンのテーマを弾く奏、古き良き三越と今の三越を描きながら、さりげなく反戦を描き、その要は女性だというところはさすが柚木さんです。
「ライオンにまたがると夢がかなう」という言い伝えにライオンに乗ってみると、奏たちの未来が見え、戦前に生きている和子が社会に向かって立ちあがるというラストに心打たれました。
さりげない反戦もですがさすが柚木さんは、美味しいものも忘れません。
私も大好きな7階特別食堂の大人でも注文できるお子様ランチができて・・・思わずヨダレがでてきそうなほど嬉しかったです。
3月には新刊が出るようなので楽しみに待っています。