新井一樹 著『シナリオ・センター式 物語のつくり方』(日本実業出版社)。
おかげさまで昨年8月の発売から現在も沢山の方々にお読みいただいております。
そこで、“読者の生の声”をお聞きすべく、日本実業出版社の編集部・板谷さんとマーケティング担当の小川さんも交えて座談会を実施。
本書をキッカケに、シナリオ・センターの基礎講座を受講された方に対面&ZOOMでご参加いただきました。
小川さんによると、文芸書や芸術書のコーナーだけでなくビジネス書のコーナーでもご好評いただいているとのことで、それに関しても皆さんにお聞きしました。その模様を広報の齋藤がお伝えします。
ストーリーという言葉がフックになっているのでは
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〇新井:おかげさまで『シナリオ・センター式 物語のつくり方』が3万部を突破し、6刷(2024年4月時点)となりました。ありがとうございます。大変うれしいのですが、実は、なぜこの本が売れているのか分からないというのがあってですね(笑)。
で、なぜご購入いただいたのかな、どういうふうにこの本を使っていただいているのかな、もしかしたら創作以外のところでもお役に立てているのかな、ということでこの座談会を実施いたしました。
〇小川さん:この本が発売されて半年ちょっと経つのですが、現在一番部数を伸ばしているのが丸善・丸の内本店さんのビジネス書コーナーなんです。JR東京駅の丸の内北口にある書店さんで「日本で一番ビジネス書を売る」と言われています。
文芸書や芸術書のコーナーに置いていただいている場合は、主に小説や脚本にご興味ある方が購入してくださっているんだろうなと分かるのですが、ビジネス書コーナーでこの本を手に取ってくださった方々はどういった経緯や目的をお持ちなのか、“生の声”をお聞きしたいと思いまして。
〇Aさん:「ちょっと小説を書いてみたいな」と思っているサラリーマンの方は意外といるので、ビジネス書コーナーで売れたのでは?
〇Bさん:私は丸善・ビジネス書コーナーで見かけて購入しました。いま「対面」が減っているので、ビジネスの場面でも「人に伝えるニーズ」が高まっているのかなと。
〇Cさん:私は仕事とは関係なくてですね、小説を書く上で役に立つかなと思って手に取ったんですけど、読んでみたらすごくいい内容で、シナリオ・センターの講座を受けたいなという気持ちになりました。
じゃあこの本は、創作だけしか役に立たないかと言うとそうではなくて、やっぱり人の心を一番動かすのはストーリー性があるものだと思うんですね。理論とか理屈じゃなくて、ストーリーを感じられるものなら相手の感情に訴えられるんじゃないかと。だから、マーケティングを行うときも、ホームページの文章を書くときも役に立つだろうなと思いました。
〇Dさん:私自身は企業の人材育成であるとか、組織まわりの仕事をしているんですけど、人間をより深く知るためにどうしたらいいだろうと考えたときにこの本が目について手に取りました。この本に「シナリオは人間を知ることだ」と書いてあったので、もっと知ろうと思い、現在シナリオ作家養成講座で学んでおります。
ビジネス書領域でなぜ売れているのか考えたときに、「パーパス経営」(※)や「人的資本経営」(※)というのが背景になるのかなと感じています。人的資本経営の観点から言えば、組織の中で、特に経営として社内で「人材価値を資産価値として改めて考え直そう」ということを浸透させる意味で、ストーリーテリング(※)というのがすごく重要になっているんです。
※パーパス経営
社会における自社の存在意義を明確にし、社会貢献と利益創出の両方の実現を目的とする経営手法
※人的資本経営
人材を企業の資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上へと繋げていく経営手法
※ストーリーテリング
自分の主張に説得力を持たせたり、情報やメッセージを聞き手に印象づけたりする目的で、体験談やエピソード、既存の物語などのストーリーを利用して伝える手法
〇小川さん:なるほど、ストーリーテリング。そういうことで「ビジネスに活かせそうかな」というのがこの本からなんとなく匂っていた、という感じなんですね。
〇Dさん:たぶん色々な意味で、“企業まわりの人たち”が「ストーリー」という言葉に反応するのではないかと思います。
〇新井:創作という視点だけじゃなくて、ビジネスにもご活用いただいたり、興味をもっていただけたのは嬉しいですね。
ただ、ひとつ気をつけていただきたいのは「ストーリー」の意味。この本では「面白い物語をつくるためには、ストーリーではなく、ドラマを描いてください」と紹介しています。
「ストーリー」というのは「出来事を並べたもの」です。だから、出来事を羅列して、こんなことがあって、ああなって、こうなりましたっていう「ストーリー」を作ると、印象的な出来事をただ並べただけ、になっちゃうんですよ。
一時期、「ストーリーでブランディングする」みたいなものが流行しましたが、実践してみるとイマイチうまくいかない、という方もいらっしゃるのでは。もしかしたら、そういったモヤモヤしたところが解消されるから、ビジネス書コーナーでの売れ行きがいいのかもしれないなと。イマイチうまくいかないのは、そこに「ドラマ」がないから、なんじゃないかと。ドラマというのは「人間を描くこと」です。
例えば、野球で「ヤクルトが巨人に勝ちました!」と聞くのと、「不振だった村上選手の一振りで、ヤクルトが巨人に勝ちました!」と聞くのとでは、ちょっと印象が違いませんか?それは「今日ヤクルトが巨人に勝ちました!」はストーリーだからなんです。でもそこに、「不振だった村上選手の一振りで」という人間ドラマが加わると、「村上選手、頑張ったんだな」とこちらの気持ちが動きますよね。
つまり、人間の姿が描かれていないと、観客は感動したり、面白いと感じない。だからこの本では「ストーリーじゃなくてドラマを」と言っているんです。なので、ビジネス書としてお使いになる際は、いま言ったこの「ストーリー」と「ドラマ」の違いを頭の片隅に置いていただければ、と思います。
他のビジネス書とは“色”が少し違うものとして広がったのでは
〇小川さん:この座談会では、『シナリオ・センター式 物語のつくり方』にビジネス書としてのニーズはどれぐらいあるのかを知りたかった、ということともう1つ。今後、ビジネス書として何か新井さんに書いていただくならどういった感じのものがいいか、皆さんのご意見をヒントにさせていただきたい、ということもあります。
で、お聞きしたいのが、この本にワークブックや課題みたいなものがあればよかったな、という感じはありましたか?ビジネス書にはけっこうそういったものを入れることがあるのですが。
〇Eさん:私は、そういうものがなくて良かった、と思っています。ビジネス書っぽくしたいのであれば、章ごとのチェック項目とかあってもいいと思うのですが、そういった香りがしないのがこの本のいいところかなと。だから、この本がビジネス書コーナーで、他の本とは少し“色”が違うものとして広がっていったんじゃないかと。
個人的にはチェックシートがあっても、あんまりやらないタイプなんです(笑)。例えば、「ここでちょっと手を止めてこれを考えてみましょう」と書いてあってもサッと読み進めてしまう。そういう方もいるんじゃないかと。
私は『シナリオ・センター式 物語のつくり方』を読んで、シナリオ8週間講座を受講しました。実際に受講してみると、本でも講座でも紹介されている内容が統一されているので復習にもなるし、より詳しく学べる。それに、直接講義を受けてから課題に取り組むからこそ、より技術が身につくのかなと。
〇Fさん:本に課題を入れても、そのフィードバックがないとあまり意味がないように思います。
私は全くの素人で、全然業界も違いますし、この場にいるのがなぜかというくらい不思議な感じなんですけども、たまたま大阪の紀伊國屋書店 梅田本店で、この本が通路のところにたぶん50~60冊くらい積まれていたと思うんですけど、それが目に留まって。そのとき、中身は見てなくて、タイトルと見た目だけで買いました。
もともと表現するのが好きだったし、小説にも興味があって、自分の人生を小説に書けたらいいなという想いもありまして。この本でシナリオ・センターの存在を知って、資料を請求しました。普段、研修の講師をしておりまして、学びに対しては貪欲なほうなので、もうちょっと踏み込んで勉強してみたいと思い、シナリオ作家養成講座を受講しました。
ですので、課題がなくても、この本は“十分な入り口”になっているんじゃないかと思いました。
〇小川さん:貴重なご意見をありがとうございました、今後の参考にさせていただきます!
〇新井:今回皆さんのお話をお聞きして、ビジネス書コーナーでなぜ手に取っていただけたのか、また、どのような思いでこの本に興味を持っていただけたのか、ということも分かったのですごく嬉しかったです。ありがとうございました!
「表現技術はビジネスにも日常のコミュニケーションにも活用できます」
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今回の座談会では、この他にも貴重なお話を沢山していただきました。例えば、こういったやりとりも↓
〇新井:ビジネス以外でも、こんなことにこの本を使ってます、というのは何かありますか?
〇Gさん:日常会話でも使えるなって思います。
〇Hさん:そうですよね、相手に自分の想いをどう伝えるか考えるときに役に立ちますよね。相手に受け取ってもらいやすい言葉を選べるようになるんじゃないかなと。SNSを利用するときも、例えば何かコンテンツのことを呟くときに、そのファンの方々にも刺さるような言葉を見つけやすくなるんじゃないかなと思います。
――こんなふうに、創作以外にも『シナリオ・センター式 物語のつくり方』をご活用いただいているようで、新井自身も沢山の発見がありました。
新井は本書の最終章にも「表現技術は様々な創作に活かせます。さらに言えば、ビジネスにも日常のコミュニケーションにも、表現技術は活用できます。プロになるかどうかに関わらず、物語づくりは、あなたの人生を豊かにしてくれます」と綴っております。
まだお読みいただいていない方はぜひ手に取っていただき、創作に、日常生活に、ビジネスにご活用いただければと思います。
※刊行記念対談の模様など、こちらの記事も併せて是非↓
▼「創作初心者でも書けるようになるのかな?」とお悩みでしたらシナリオの技術!
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。
詳しくは講座のページへ