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数々の話題作を手掛ける脚本家・山浦雅大さんに聞く
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『忍びの家 House of Ninjas』

『忍びの家』など数々の話題作を手掛ける脚本家 山浦雅大さんに聞く

今年3月に開催された第47回日本アカデミー賞で優秀脚本賞を受賞された出身ライターの山浦雅大さん。

山浦さんは立教大学在学中にシナリオ・センターに通い、2002年『オカンは宇宙を支配する』で「第14回フジテレビヤングシナリオ大賞」の大賞を受賞。2003年『世にも奇妙な物語』の「追いかけたい」でデビュー。ドラマ『今日からヒットマン』『HOTE-NEXT DOOR』や、映画『亜人』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』他、多くの話題作・ヒット作の脚本を手掛けていらっしゃいます。

今回は、第47回日本アカデミー賞優秀脚本賞 受賞作『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』と、俳優・賀来賢人さん原案・主演で話題となり国内外で大ヒット中のNetflix配信作『忍びの家 House of Ninjas』についてお話をお聞きしました。

※『月刊シナリオ教室』(2024年6月号)にインタビューが掲載されていますので併せてご覧ください。

「最初は自暴自棄だった女の子が、最後は成長したことが明確になるような描き方を」

=『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』あらすじ=
親にも学校にも不満を抱える高校生の百合(福原遥)は、進路をめぐって母親とケンカになり、家を飛び出して近所の防空壕跡で一夜を過ごす。翌朝、百合が目を覚ますと、そこは1945年6月の日本だった。通りがかりの青年・彰(水上恒司)に助けられ、軍の指定食堂に連れて行かれた百合は、そこで女将のツルや勤労学生の千代、彰と同じ隊の石丸、板倉、寺岡、加藤らと出会う。彰の誠実さや優しさにひかれていく百合だったが、彼は特攻隊員で、間もなく命懸けで出撃する運命にあった――

▼松竹チャンネル/SHOCHIKUch 本予告90秒

――まずは、日本アカデミー賞優秀脚本賞受賞おめでとうございます。

〇山浦さん:受賞を聞いた時は嬉しいと同時に、本気で授賞式に何を着ていったらいいんだ?と悩みました(笑)。

余談ですが、「こういうご縁がまたあったらいいな」という想いで、初めてタキシードをあつらえました。小物も一式要るので、高い買い物になりましたが(笑)。

授賞式当日は、僕は『ゴジラ-1.0』が大好きなのですが、ちょうど前のテーブルに山崎貴監督が座っていて、感動しました。ところが緊張で声が掛けられなくて……(笑)。でも嬉しかったし、刺激的な経験でしたね。

――『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』について

〇山浦さん:今回は成田洋一監督との共同脚本。僕は2022年の秋頃から参加しました。メインキャストが決まっていて、2023年春から撮影スタートというのも決まっていたので、執筆期間が非常にタイトでした。

原作の主人公・百合は14歳ですが、映画では高校3年生にしています。

また、原作はまだ14歳という幼さもあり、思ったことをすぐ口にするタイプですが、福原遥さん演じる高校3年という年齢を考えて、葛藤を増やしました。

進路に悩んだ百合がタイムスリップして、そこで出会った水上恒司さん演じる特攻隊員の彰に恋をして、その意志を繋いでいく。この辺りも、主人公が変化・成長するのがエンタメとして気持ちいいので、最初は自暴自棄だった女の子が、最後は成長したことが明確になるような描き方をしました。

――原作がある場合、どういう流れで脚本にしていくのですか?

〇山浦さん:原作通りにやることもありますが、まずはいっぱい原作を読んで要素を抜き出して、ひたすら散歩しながら妄想するんです。そして、思いついたアイデアをメモに次々書いて並べていく。それをパソコン上でやります。うんうんと唸って、なんとなく2時間埋まりそうな気がしたらプロットを書き始める感じです。

「普遍的な家族の再生物語にしたところに面白さがあったのでは」

=『忍びの家 House of Ninjas』あらすじ=
伝説の忍者・服部半蔵の血を引く“忍びの一族”俵家。家族全員が優秀な忍者だったが、“6年前の事件”で長男・岳を失ってしまう。一家は悲しみに暮れ、忍者であることを捨て「普通」の家族として生きていくと決めた。「普通の暮らし」をはじめて6年。俵家の表向きの事業である酒蔵は経営難に陥り、一家の心は依然バラバラのまま。次男の晴(賀来賢人)は、夜間にアルバイトをしつつ帰りの牛丼屋で会う可憐(吉岡里帆)との逢瀬が唯一の楽しみだった。可憐を食事に誘う決心をした晴だったが、忍者を管理する組織BNM(忍者管理局)から可憐の身辺を調査するように命じられる――

▼Netflix Japan 予告編

――『忍びの家 House of Ninjas』について

〇山浦さん:日本だけでなく海外の目で見た忍者を描けば面白いのではないか、ということで始まりました。僕が参加した時点で、デイヴ・ボイルさんという、日本にとても詳しい監督さんが決まっていました。日本語も堪能な方で。

彼が全体の統括と1話の脚本を書いて、残りを複数のライターで書いていきました。ハリウッド式のチームライティングで、基本的に全部話し合った上で書いています。

――打ち合わせはどんな感じだったのでしょうか?

〇山浦さん:Netflix内でもチームによってやり方は違うと思いますが、今回の場合は、朝10時から夕方4時までの会議を、週3回以上みっちり。それを1年近くやっていましたね。

初めに、「こうすると魅力的なドラマが作れます」といった、1時間半ぐらいのビデオを見るんです。映画のハウ・ツーみたいなもので、最初はそれを踏まえて、キャラクターを考え、キャラクター表を作りました。

いくつかポイントを決めて「何をきっかけにこうなったのか」「今どう思っているのか」「今の目に見える目的は何か」「逆に目に見えない目的は何か」とか……そういうことを細かく決めてきました。

チームで時間をかけて話し合い、世界観を詰めていきました。ただ日本と違って打ち合わせにもギャランティが出るんですね。日本はなかなかここまで時間を使えないので、とても貴重な経験ができました。

――「現代に忍者がいる」という世界観の設定について

〇山浦さん:そこを詰めていくのも大変でした。例えば、主人公たちは手裏剣を使うのか? 現代では手裏剣を使っても目立つだけで、銃を使えばいいんじゃないか?

だけどそれだと忍者らしさが出ない。じゃあ、銃が出ない世界観を成立させるためにはどうすればいいか……とか、もう、ひたすら延々話し合うんです。どんどん頭が沸騰してくる(笑)。

劇中で伝書鳩が出てくるんですが、あれはいいなと思いました。一見アナログだけど、速いしハッキングされないという利点があるので、忍者が使うべき理屈が通っています。

――日本のみならず、海外からも高く評価されていますね。

〇山浦さん:おかげさまで非英語圏のランキング1位を2週間ぐらい続けて取り、好評でした。

「ストレートな忍者ドラマ」というより「忍者物+ホームドラマ」として、普遍的な家族の再生物語にしたところに面白さがあったと思います。

だから、試写会で僕がデイヴ監督に「もっとこの家族を見たいと思いました」と言ったら、すごく喜んでいました。監督は、それが1番やりたかったんだと思います。

最後に“後輩”に向けてメッセージを

〇山浦さん:メッセージ。実は3つあります。

1つ目は、コンクールって応募していると先が見えず、イヤになることがあると思います。でも例えば、5年間ずっとダメダメだったけど、6年目の1本で大賞を取ってスルスルっと業界デビューして売れっ子になる。そういうことが起こる世界です。だから月並みですけど、諦めずに応募し続ける、書き続けるのがいいと思います。

2つ目は、その逆になりますが、脚本家になりたい自分にこだわりすぎないのも大事かと。頑張っても行き詰まるときが必ず来るので、1回芝居をやるとか会社員をやるとか、違うことやってみるのもいいと思います。そこから脚本に戻らないのもありだし、戻っても、その時の経験が必ず役立ちます。

そして3つ目は、脚本家にこだわって幸せな人生を送るのもいいし、こだわらないことで幸せな人生にしてもいい。トータルで幸せな人生を送ってほしいです。何よりご自身の人生を大事にしてください!

※シナリオ・センター出身の脚本家・監督・小説家の方々にいただいた
こちらのコメントも併せてご覧ください。
脚本や小説を書くとは/シナリオの技術を活かして

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