「もしも、“総合”の時間の集大成として、
本格的な映画を作りたい!と子どもたちが言ったら……」
そんなときに参考にしていただけるように、
主に小学校の先生方に向けて
横浜市立 美しが丘小学校(6年生)で実施した
出前授業「キッズシナリオ」の模様をお届けします。
=今回の概要==============
・サービス名:本格的な映画を作ろう!
・目的:6年生の総合の集大成として映画を作る
・対象:横浜市立 美しが丘小学校 さま(6年生)
・時間:約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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みんなが思う良い映画の条件とは
美しが丘小学校 6年生の皆さんは今まで、総合の授業などを通してさまざまな映像を作ってきました。
その集大成として“本格的な映画”に取り組みたい!とのこと。
運動会が終わってから劇映画制作に着手し、2025年1~2月の公開を目指していて、
どんな映画にするか、どんなジャンルにするかワクワク ドキドキ!
ですが、「実際にやるとなったら何から始めていいかわからない……」と、
ちょっと不安な気持ちもあるみたい。
そこで、今回のキッズシナリオは「映画のつくり方」。
キッズシナリオ担当・田中を通して、映画づくりのプロも礎としている“シナリオの技術”をお伝えしました。
ちなみに、田中は2023年全国公開 映画『ひみつのなっちゃん。』の脚本・監督を担当。ちょうど“本格的な映画”をつくったばかりです!
閑静な住宅街の階段を登ると高台にあるのが本校です。
教室に入り、みんなの表情を見るとその目は、それはそれはキラッキラ。もれなく横の担任の先生も同じようなまなざしで私を見つめてくださいます。溢れんばかりの映画をつくることへの希望が滲み出ています。
でも、みんなの頭に思い浮かぶ“本格的な映画”は、それぞれ違うみたい。
――みんなにとって本格的な映画ってなに?
「良い映画!」
――じゃあ良い映画ってどんな映画だと思う?
「見ててドキドキするような映画!」
――いいね!アクションが好きかな?
主人公と同じ気分になれる映画って良い映画だよね。
「出てる役者さんが上手くて、笑ったり、泣いちゃったりする映画!」
――いいよね。
登場人物に心動かされる映画って良い映画だもんね。
「きれいな映像!」
――確かに、景色が良いシーンとかも心奪われるから、良い映画につながるよね。
「音声がしっかり聞こえること!」
――おー!
違和感なくセリフや音が聞こえることも良い映画を作るには必要だよね。
なんとなくみんな、それぞれ自分がやりたいパートのことを
言ってくれているのかなー、なんて思いながら聞いていました!
こんな感じで、みんなが思う良い映画の条件を答えてくれました。
確かにどれも正解です!
本格的な良い映画のつくり方
映画づくりをしていると、
・誰がどのパートの何をやるか
・どんなジャンルにするか
・撮影できそうか
・どう撮ろうか
などなど、具体的なことが次々と頭に浮かんできて、
「どこから手を付けていいかわからない……」となりがちです。
美しが丘小学校 6年生の皆さんも、
「自分たちでもたくさん調べてはみたけれど……」という段階でした。
そんな皆さんに、まず注目してもらったのが、企画とシナリオ。
プロの現場でも映画の全てはこの2つから始まります。
スタッフ・キャストは映画ができるまで、
企画に込められ、シナリオに描かれた“想い”を
心に持ち続けます。
そのぐらい、良い映画を作るために大切なのが、
企画とシナリオなのです。
まずは、4つのポイントとおすすめの手順をお伝えしました。
企画とシナリオをつくる:その①テーマ
最初に良い映画を作るためには、
自分たちが映画でどんなことを伝えたいのかを
押さえておくことが重要です。
それを確認するのに有効なのが、『テーマ』。
テーマとは、この映画を通して伝えたいこと。
みんなで「何を伝えたいのか?」を1つに絞り、
具体的な「一言」にしてみます。
伝えたいことが「友情」なら、
「友情が何なのか」を具体的にしていきます。
例えば、
「友情の大切さ」とか「友情の儚さ」とか
「友情のばかばかしさ」などなど。
こうやって伝えたいことを1つ、みんなで押さえていくと、
脚本、監督、俳優、カメラマンなど、各パートに分かれたとしても、
同じ目的に向かって進めることができます。
そうすれば観客にも、この映画を観終わった後、
作り手の想いが伝わる映画になります。
つまり、良い映画になるわけです。
企画とシナリオをつくる:その②アンチテーゼ
テーマが決まったら、次はアンチテーゼを考えます。
アンチテーゼとはわかりやすく言えば“逆”のこと。
例えば最後に『友情の大切さ』が伝わる映画を作るとします。
そんな映画の冒頭は、テーマの逆から入る。
「友情なんてしょーもな」と思っている主人公にしたりする。
そうすると「しょーもな」と考えていた主人公が、
友だちのために全力疾走する最後にするとどうでしょう。
「友情の大切さ」が心に響きませんか。
しかも「友情って大切だ!」「友情サイコー!」とか
テーマそのままをセリフで説明しながら走らせなくても、
その姿だけで伝わる。
つまり本格的な映画になっていくのです。
ただ、ここで一つの不安が。
確かに、何かが伝わる良い映画には、なりそう……。
でも、面白い映画になるの?
大丈夫。
実はテーマとアンチテーゼを押さえると、一石二鳥。
良い映画にもなるし、面白い映画にもできるようになってるんです。
企画とシナリオをつくる:その③人物を困らせる
なぜアンチテーゼから始めるのか。
アンチテーゼから始めると、
自然と主人公を困らせることができるからです。
例えば、
「友情なんてしょーもな」と考えている主人公に、
「あそぼーよ」と誘う友達。
それに対して主人公は
「遊ぼうか断ろうかどうしようか」と困る。
その友達が実はいじめられていることを知り、
また「助けようか放っておこうかどうしようか」と困る。
こんなふうに、主人公が困れば困るほど、
観ている人は、「どうなっていくんだろう」
「主人公はどうするんだろう」と釘付けになります。
※「困らせる」についてはシナリオ・センター 浅田直亮講師のブログと著書を是非ご覧ください。
▼書籍『ちょいプラ!シナリオ創作術:人気ドラマが教えてくれる「面白い!」のツボ』
▼書籍『シナリオ錬金術 2「面白い!」を生み出す即効テクニック』
企画とシナリオをつくる:その④人物のキャラクター
主人公がどんな人なのか、
「キャラクター」を深堀りするともっと面白くなります。
例えば、「友情なんてしょーもな」と思っている主人公。
見た目はクールだけど、
根っこはとっても優しい主人公だったら?
実はプリンが大好物だったら?
苦手なものが虫だったら?
「友情なんてしょーもな」と思っているけど、
友達が「君が好きだと思ったから、これ」と
プリンを持ってきたら、
この主人公は果たしてどうするだろうか……。
こんなふうに、主人公のキャラクターを考えておくと、
次の展開が気になる、面白い良い映画になっていきます。
最後に……
実は、“本格的な映画”を作りたい、
という皆さんに対して、
チカラが入っちゃった田中。
できるだけわかりやすくお伝えしたつもりだったけど、
それぞれ腕組みをしてうーん……。といった様子。
難しかったかなぁ……と心配だったので、
思い切って聞いてみました。
――あのぉ……どうやって始めれればいいか、わかった?
「はぁーい!!」
――さらに映画、作りたくなった?
「はぁーーーーーい!!」
――よかった!完成を楽しみにしています!
またなにかわからないことがあったら、
声をかけてくださいねー!
皆さん、もう既に映画の内容のことを考えていたようです。
さすが!
と思いながら内心、ホッとした田中でした。
* * *
今回ご紹介した皆さんのように、映画を作りたいと思っている子どもたちや、その他、PR動画を作りたい子どもたちもいるかと思います。もし「子どもたちが目指す良い動画を実現するためにどう導いたらいいだろう……」とお悩みでしたら、今回の模様をぜひ参考にしてください。
また、出前授業はオンラインでもできますので、東京・神奈川だけでなく全国どこでも実施可能です!
お気軽にお問い合わせいただければと思います。
ご参考までに広島県呉市立広南中学校3年生の皆さんに向けて実施した模様も是非ご覧ください。
※おすすめ書籍※
新井一樹 企画・構成・著 改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/執筆 川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
※おすすめブログ※
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