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脚本家・武田雄樹さんに聞く
脚本力をつけたい方 必読の勉強法も

脚本家・武田雄樹さんに聞く/脚本力をつけたい方必読の勉強法も

今年2024年にNHK特集ドラマ『高速を降りたら』で脚本家デビューされた武田雄樹さん(元通信作家集団)。

武田さんは国際基督教大学卒業後、会社員を経て2019年から本格的に脚本を学び始め、2021年『塔の三姉妹』で第46回創作テレビドラマ大賞の佳作一席を受賞

2022年にドラマデザイン社シナリオインキュベーション生に選抜され、各局の企画立案やプロット作成を通して企画力やプロット技術を磨き、そして今年デビュー。7月11日(木)には、初の連ドラ脚本となる『クラスメイトの女子、全員好きでした』(読売テレビ・日本テレビ系)が放送されます。

今回はデビュー作となった『高速を降りたら』について、また、脚本家志望者にとって大変参考になる勉強法およびコンクールへの向き合い方についてお聞きしました。

『月刊シナリオ教室 2024年7月号』に武田さんのインタビューが掲載。併せてご覧ください。

「綺麗事じゃないリアルを書きたかった」

=『高速を降りたら』あらすじ==
地方の病院。父のベッドを囲んでいる三姉妹の娘たち。深夜に突然、父の容体が急変。三姉妹はそれぞれの夫を呼び出すことに。交通手段がない午前0時。一台の車に、長女の夫、次女の夫、三女の夫の男3人。深夜、高速で義父の病院を目指す。オギノ・トミタ・コマキの3人は“義理の兄弟”という絶妙な距離感のなかで、自分の「男らしさ」でマウントを取り合う。しかし、彼らにはそれぞれ、知られたくない秘密があって――。

――『高速を降りたら』を書くことになったキッカケ

〇武田さん:きっかけは、友達の結婚式に参列した際に、同じく参列者として出席していたNHKのディレクターさんを紹介されたことです。同い年で、新婦の友人という共通点があったため「一緒に何かできたらいいですね!」という話になり、その数ヶ月後に「今度、局内コンペに出す企画を一緒に考えませんか」という話を頂いた……という流れです。

そして、そのコンペで採択されたのが『高速を降りたら』です。もしあの友達が結婚していなかったら、と考えると、本当に運が良かったなということに尽きます……。ただ、いざ運が巡ってきたタイミングに備えて、常に全力で行ける状態にしておくのは大事だなと、改めて思いました。

――本作のテーマについて

〇武田さん:「男性性」に関するエッセイやコラムを書いている清田隆之さんという方がいて、その清田さんの書くものが好きでよく読んでいたので、自然と「有害な男性性」というテーマに対する関心があったんです。自分の中でも実感が持てるテーマで勝負したいと思い、このテーマに設定しました。

そして作品では、「男性性」を様々な角度から描きたいと思い、そのために登場人物たちにどんな背景を書き込むかをディレクターさんと考えていきました。

まず、長女の夫・オギノを中年男性のパワハラ被害者にしました。パワハラをする側ではなく、される側です。それは、男が泣くのは見っともないという呪縛にアプローチできると考えたからです。それに、中高年になればなるほど、より泣きごとは言えなくなる。ましてやパワハラに悩んでいるなんて情けなくて絶対言えない。「己の弱さを開示できない」という男性の生きづらさが、彼を通して描けるのではないかなと考えました。

次女の夫・トミタはスーパー勤務で、妻が役員で自分より稼いでいることを気にしています。それは、経済的に家族を支えるのは男だという呪縛に対して。そして、三女の夫・コマキは元アメフト部で、体育会系の男社会にずっと馴染めずにいます。それは、ホモソーシャルという男性同士のコミュニケーションのあり方に対して。いずれもアクセスできると思い、こういった設定になりました。

そして「男性を生きづらくしているのは男性自身である」という考え方をベースに物語を作っていったので、パワハラをするのもされるのも男、夫婦の収入格差を気にしているのも男自身、ホモソーシャル空間を作るのも男、馴染もうとするのも男、という風に描いています。「有害な男性性の加害者は男自身」という構図は崩さないようにしたいと思っていました。

また、綺麗事じゃないリアルを書きたかったため、「男らしさなんてどうでもいいじゃない!」と言ってしまうのではなく「どうでもいいとは思いつつも、男らしくありたいと思ってしまっている自分もいるよね……」という所を落とし所にしました。男らしさから降りたいけれど、そう簡単に降りることができたら苦労はない……。だからこそ、物語の中の男たち3人は男性性に縛られながらも必死に生きている。そういった姿に自分を重ねて共感してもらえればいいなと思いました。

分析と写経

――脚本家志望の方にオススメの勉強法

〇武田さん:例えば構成については、色んな映画を観てそれを分析する「映画分析ノック」をずっと続けていました。これは、脚本家・尾崎将也さんの『3年でプロになる脚本術』(河出書房新社)という本に書かれていた勉強法で、その本の教えに忠実にコツコツやっていました(今も時間ができた時は続けています)。

この「映画分析ノック」をしていたことで、少しずつ構成の感覚が掴めるようになってきた実感があります。映画1本を分析するのに5日間くらいかかる大変な作業ではありますが、構成や展開の良い勉強になるのでオススメです。

そして、分析したものは「note」で公開しています。せっかく時間のかかることをやるのなら、それをそのままポートフォリオにしてプロデューサーの方々に見ていただける状態にしたいな…と考えたからです。「note」に膨大な量の映画分析の投稿があると「努力してる感」が出るというか(苦笑)。でも本当に、せっかくやるなら努力は目に見える形でするのがお得かもしれません。

また“写経”も上達の最短ルートだと思うのでオススメです。僕の場合は、「フジテレビヤングシナリオ大賞」や「創作テレビドラマ大賞」をはじめ、主要なコンクールの10年分の受賞作を手に入れて、好きな作品を写経しながら勉強していました。

“写経”といっても紙に手書きするのではなく、PCに打ち込んでいく形式です。僕は大体1日10ページぐらいを、テンポやセリフを気にしながらゆっくりPCで打ち、全て書き終わってから構成を分析していました。セリフのテンポ感やト書きの書き方、読むだけでは気付かなかった「作者はこれが書きたかったんだ」という意図や工夫が分かるようになり、とても成長を実感できる勉強法でした。

1作品を写経するだけでも物凄い情報量が得られるので、それを2年半くらい地道に続けたことによってベースの力が身についたように思います。

――脚本コンクールで受賞したい方に向けたオススメの勉強法

〇武田さん:先ほど言った“写経”に加えて、審査員の選評や最終に残った作品のあらすじを熟読することもオススメです。「こういう企画性やセリフが面白いんだ!」という、コンクールにおける評価軸や価値基準が把握できるようになるので、公募対策としてはオススメです。

コンクールに通ることが全てではないですが、自分が描きたいものを観客(審査員)に届くような形にするにはどうすればいいか……。「求められていること」と「自分のやりたいこと」の交点を探る、ということにはとても意味があると思います。

そしてコンクールに挑戦し続けることはとても気力が要ることだと思いますが、描き続けてさえいればチャンスはすぐそばに転がっていると思うので、どうか描くことをやめないでください。僕もたくさんの作品が描けるように頑張ります。

※シナリオ・センター出身の脚本家・監督・小説家の方々にいただいた
こちらのコメントも併せてご覧ください。
脚本や小説を書くとは/シナリオの技術を活かして 

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