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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

知の巨人

窓から見えるもの

承認をひらく

シナリオ・センター代表の小林です。映画「90歳、なにがめでたい」が90歳の草笛光子さんが、小説家で100歳を迎える佐藤愛子さんを演じて話題です。
佐藤愛子さんはじめ、この時代の方は結構怒ります。
理不尽な境遇に置かれ続けてきただけにおかしなことにとても敏感であり、黙って人権を踏みにじられてきた経験をたくさんされてきたからだと思います。

経済学者の暉峻淑子さんが「承認をひらく」(岩波書店)を上梓されました。
暉峻さんは96歳、バブルの時に浮かれた時代に「豊かさを間違えた」と警告された『豊かさとは何か』(岩波書店)はベストセラーになり、私自身も自分の浅薄さに気づかされたことを覚えています。
バブル時代、私たちがやってきたことは、溢れまくるモノとカネにまみれてうつつを抜かし、自信過剰に株や投機に手を出し、お金を教育や、福祉、社会保障という大切な土台作りにかけず、すっ飛ばしたのです。
で、今があるのです。財力も、知力も、文化もすべてに貧しい国に成り下がった日本が。
私は、本当に若者たちに詫びたい気持ちでいっぱいになります。

暉峻さんは、朝日新聞のインタビューでこうおしゃっています。(6/21抜粋)
「経済価値優先に目を奪われ、人権や個人尊重という大切な価値を置き去りにしたままなのです」
「最近強く感じるのは、私たちは自分を大切にしているのかということです。
自分を大切にするとは人権を真剣に考えることなんです」
「自分の人権を考えるということは、相手の人権を考えることでもある。
本当に豊かな社会、本物の民主主義の社会とは、誰もが自己肯定感を持って生きられる社会といってもいい。
権力を持つ者は、一人ひとりの『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(憲法25条)を保証し、『自己責任だから』といって排除してはならない。
私はこれを『相互承認』と呼んでいますが、ここを出発点にすべきです。
民主主義のレベルを知る尺度として、相互承認が行われているか否かを問うという独自の視点が必要です」

新著「承認をひらく 新・人権宣言」の執筆を決断させたのは、森友学園問題で公文書の改ざんを命じられた財務省職員赤木俊夫さんの自死だったそうです。
真面目に職務を果たそうとした公務員が、国有地の不当な取引を巡り、国家の「恣意(しい)的な承認」を押しつけられ犠牲になったことに「我慢の糸が切れた」と。
「承認とはその事柄が真実、公正であり、妥当性があると認めること。それなのに権力者が私益のために乱用している」と怒ります。

ご著書では森友学園のほか、風致地区を守るための高さ制限が緩和され計画が承認された東京・明治神宮外苑の再開発、裁判で違法性を認める判決が出ている厚生労働省による2013年の生活保護基準切り下げなどを挙げて解説されています。
都民は都知事選の前に読んでみて欲しいです。私たちが望むべき道がどこにあるかを知るためにも。

90歳なにがめでたい

小説家佐藤愛子さんは「90歳なにがめでたい」だけでなく、数々のエッセイで自分に、生活に、社会に怒り、小説の中では怒りの素である真実を見つめていらっしゃいます。
100歳になってもぶれない精神を見習いたいと思います。
老害とは程遠いお二方の生き方は、私の憧れです。
常に声をあげようと、そのためには色々見聞きしようと申し上げていますが、やはり先輩たちはすご!深い!見習いましょう!

「10年近く『安倍一強』が続く中で起きた民主主義の毀損は、今も回復されていません。
多くの人が、社会参加し、そこに連帯が生まれれば、恣意的な権力の行使を止めることができると信じています。
これを『連帯する相互承認社会』と私は呼んでいます」と暉峻さん。

経済学者として社会と対話し、小説家としてエンタテイメントで書く、手法は違ってもおふたりのおそるべき慧眼を学んでいけたらと、私自身の錆びついた頭を振り絞ってついていきたいと思います。
ものごとにはすべて、色々な考え方、見方があります。自分の視点をきちんと創る努力を重ながら、色々な人と対話していきましょう。
怒りは対話のもとだともおっしゃっています。怒りんぼの私はお墨付きをいただいた気分です。(笑)

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