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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

【“ご当地もの”を書くときの参考に】
映画『あまろっく』脚本家 西井史子さん

ご当地ものを書く時の参考に/『あまろっく』脚本家 西井史子さん

第19回大阪アジアン映画祭で観客賞を、第57回ヒューストン国際映画祭 コメディ部門で銀賞を受賞された映画『あまろっく』。

脚本を担当されたのは出身ライター 西井史子さん。

=映画『あまろっく』あらすじ==
兵庫県尼崎市にある尼崎閘門(あまがさきこうもん)。愛称・尼ロック。船舶が通航できる巨大な閘門で、尼崎市の「0メートル地帯」に海水が流れ込むのを防いでいる。そんな“尼ロック”がある街で生まれ育った近松優子(江口のりこ)。大学卒業後は東京の大手企業で働いていたが、理不尽なリストラで失業し、再び尼崎に戻ってくる。「人生に起こることは何でも楽しまな!」が口グセの能天気な父・竜太郎(笑福亭鶴瓶)とともにニートのような暮らしを送って8年。39歳になった優子に、65歳の竜太郎は突然 再婚を宣言。再婚相手として20歳の早希(中条あやみ)を連れてくる――。

西井さんによると、シナハンに行かれた際、温かい人柄を間近で感じ「尼崎を舞台にしたらパワフルであったかい物語が作れる」と思われたのだそうです。今回ご紹介する西井史子さんのコメントをご覧いただくと、尼崎だからこそ描けた物語なんだ、ということがよくお分かりになると思います。“ご当地もの”の脚本や小説を書きたい方、是非参考にしてください。

※『月刊シナリオ教室』(2024年8月号)に西井さんのインタビューを掲載しますのでお楽しみに。

「尼崎を舞台にしたら、パワフルであったかい物語が作れるなと」

――本作を書くことになったキッカケ

〇西井さん:以前『家族善哉』(TBS)というドラマでご一緒した中村和宏監督が、阪神電鉄の社長さんの「兵庫県・尼崎の良さをもっとPR出来る映像作品がほしい」という要望を聞いて、MBS企画50周年のコンペに絡めて、企画を出さないかとお声掛けいただきました。

ただ、せっかくなら映画企画で出そう。尼崎を舞台に、40歳位の女性と20歳位の女性の組み合わせで、というお題があり、それ以外はほとんど好きにやらせていただきました。

――尼崎を水害から守る「尼崎閘門」。この題材はどうやって見つけたのですか?

〇西井さん:尼崎を活かして、エンタメ性も高まる要素が何か入れられないか探していて、最初は浄瑠璃やお寺を考えていました。でもネットで調べてみると、尼崎は「東洋のベニス」という記事があり、イメージと違う部分がたくさん出てきた。その中に尼崎閘門があったんです。

この閘門を、家族を守ろうとする父や、それを引き継いだ娘の関係と絡めたらいろいろつながりそう。これはいける!コンペにも通って映画にもなるな、と思いました。

――現地のシナハンには行かれましたか?

〇西井さん:行きました。寺町や尼崎城、想像以上に魅力がありました。また、サイトにあった東洋のベニスといった場所も確かにあったのですが、そこに住む人たちが魅力的でしたね。

移動中にバスに乗ろうとバス停で待っていたら、携帯を持った女性が「いつから?いつからやって聞いとんねん!」って怒鳴っているんです。きっと旦那さんが浮気していて、「いつから浮気してるの!」と問い詰めているんだ、と思って。でも聞いているうちに、お子さんが熱を出して「いつから熱が出たの?今からお母さん帰るからね」と言っていたのだとわかった(笑)。こういう人たちがいる尼崎を舞台にしたら、パワフルであったかい物語が作れるなと。

――父・竜太郎のキャラクターもあったかい。

〇西井さん:竜太郎は、実は私の伯母がモデルなんですよ。私が離婚して最悪な気持ちで実家に戻ったとき、伯母が「ケーキ買うてあるで、ケーキ好きやろ。ケーキ食べたらましになる」と出迎えてくれて(笑)。「こんな時に……」と思いながらも、食べてみたらちょっと元気になれたんです。

「人生に起こることは何でも楽しまな!」というのは伯母の言葉です。

本当に明るい人なんですが、実は脊椎カリエスで10歳から29歳までギプスに固定されて入院していたんです。ギプスをはめたまま毎日病院の天井見て、ここから出たらこういう風に生きようとずっと考えていた。だから言葉に説得力があるんです。

伯母は私の理想。伯母の人柄や言葉が、竜太郎のキャラクター設定に活かされています。

「シナリオの直しは作品自体が生き物みたいに育ってより良くなる」

――本作だけでなく、執筆で特に大事にしていること

〇西井さん:シナリオ・センターで習った通り、いかに主人公をいじめて、対立・葛藤させるかということです。ドラマはとにかく主人公が困っているのが面白い。

ですから、構成で大バコを書きますが、起承転結の「承」をいっぱい作って、ひたすら主人公をいじめる。どんなエピソードで痛めつけるかを大事にしています。

特任准教授として大学でシナリオの授業を担当しているのですが、生徒たちに一番アドバイスすることもやはり、主人公を徹底的に追いつめて、たくさん葛藤させて、単なる説明だけの描写にしない、ということです。

結構、カフェで延々とお喋りしているだけのシーンを書いたりする人が多いんですね。その長い10ページで、主人公は最初と最後で何に気づき、変化・成長したか。していないならいらないね、となります。

Aという気持ちで始まり、危機に陥って葛藤するからBという気持ちに変化する。ここは絶対必要。シナリオ・センターで教えてもらったことが基本なので、ここが書けたらシリアスでもコメディでも何でも書けます。

――大学の生徒さんには、他にどういったことをお伝えしているのですか?

〇西井さん:例えば、シナリオの推敲についてなら、コツはやはり人に見てもらうことです。自分が良いと思っても反対意見があったら検討する。自分がいまいちと思っても、みんなが面白いと言ったら残す。また、ブレストするとそのとき良い意見がもらえなくても、自分の考えや気持ちに気づけます。

シナリオは客観的な目を磨くことが大切。今はパソコンでコピペして原稿を簡単に直せるから、コンクールなら直しに1ヶ月は時間を取ってしっかり見直した方がいいですね。

私はもともと、シナリオの直しが好きなんですよ。なぜかというと、自分ではもうこれ以上書けませんっていうところまで書いて、そこから、人に意見を聞いて直しを入れると、自分の頭になかったアイデアが出てきて、作品が一気に広がるし、自分の視点も広がる。直しが入ったり、現場の意見やアドリブが増えたりすると、作品自体が生き物みたいに育ってより良くなる。この“育っていく感じ”がものすごい快感なんです。

――最後に、脚本家を目指す“後輩”にメッセージをお願い致します。

〇西井さん:うまくなるには作品をたくさん見ること。私は、週に2本映画を観ると決めて、映画館でいつも感想をメモしていました。そうすると自分の好みが分かるし、自分が好きなものは脚本も上手に書けてうまくいくことが多い。あとは、とにかくコンクールにいっぱい出しまくって、“場”に出ましょう!

※シナリオ・センター出身の脚本家・監督・小説家の方々にいただいた
こちらのコメントも併せてご覧ください。
脚本や小説を書くとは/シナリオの技術を活かして 

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